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被災した街の復興プロジェクトを舞台に、現場を取り巻く人たちや工事につながっている人たちの日常や思いを短く綴っていきます。※完全なるフィクションです。実在の人物や組織、場所、技術な…
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2021年2月の記事一覧
ゲンバノミライ(仮) 第17話 開発部の佐竹部長代理
中央エリアの商業施設の事業計画ですら検討途上にも関わらず、新しいプロジェクトが降りかかってきた。丘の中腹にある集落を起点に土地を切り開いて展望公園を整備して、観光客らを呼び込むような集客施設も作りたいという。
この街の復興事業を一手に担うコーポレーティッド・ジョイントベンチャー(CJV)の開発部で部長代理を務める佐竹幸太は、デベロッパーからの出向組だ。都会の工場跡地での大型複合開発や郊外部のショ
ゲンバノミライ(仮) 第13話 二世の柳本首長
「それはガバ部屋で話しましょう」
あの災害後の選挙で首長になった柳本統義の口癖だ。
柳本の父の昌義は前々首長を務めた地元の名士だ。その長男として育った。都会の大きな自治体で職員として経験を積み、国会議員秘書を経た後、父の引退に合わせて地盤を引き継ぎ地方議員になった。
あの災害が起きたのは、議員2期目の途中だった。街の多くの人とともに行政職員にも犠牲が出て、ただでさえ脆弱だった組織は混乱の中で機
ゲンバノミライ(仮) 第8話 迷い人の俊さん
佐伯俊は、海と山に囲まれた小さな平野を中心に、せせこましく昔ながらの暮らしが続くこの街が嫌いだった。先祖の後を引き継ぎ、夜明け前から動き出し、汗水流してあくせく働き、大して高く売れない野菜を作っている父の一郎にも、疑問を抱いていた。親を嫌っていた訳ではない。すごいと思っていた。だが、自分が大人になって同じようになりたいとは、どうしても思えなかった。
この街から出ることばかりを考えていた。学校の図