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毎日読書メモ

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毎日読書メモ(541)なかなかまとめきれなかった感想文、走り書きで

毎日読書メモ(541)なかなかまとめきれなかった感想文、走り書きで

本を読むスピードと、感想文を書くスピードが合ってなくて、読み終わってかなり時間がたったのに感想をまとめられないでいた本がたまってしまったので、短くても控えとして簡単な感想を書いておこうかな、と。

吉川トリコ『余命一年、男をかう』(講談社文庫)

昨年、山本文緒『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』を読んだときに、文中に出てきた読書記録で気になって、割とすぐ読んだのに、うまくまとめられな

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春のみみずく朗読会、雑誌掲載(「新潮」2024年6月号)(毎日読書メモ(536))

春のみみずく朗読会、雑誌掲載(「新潮」2024年6月号)(毎日読書メモ(536))

2024年3月1日、早稲田大学大隈記念講堂で開催された、「早稲田大学国際文学館主催 村上春樹ライブラリー募金イベント Authors Alive!~作家に会おう~特別編 『村上春樹×川上未映子 春のみみずく朗読会』に行ってきた、その時の記録が雑誌に掲載された。

「新潮」2024年6月号、創刊120周年記念号でもあり、川端康成文学賞発表業でもあり、そこに「春のみみずく朗読会」特集をつけ、当日読まれ

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三浦しをん『墨のゆらめき』(毎日読書メモ(531))

三浦しをん『墨のゆらめき』(毎日読書メモ(531))

三浦しをん『墨のゆらめき』(新潮社)を読んだ。すっかり職業小説の達人となった三浦しをん、今回の職業はホテルマンと書道家である。
筆耕、という言葉を知ったのは、社会人になって数年目、陶磁器の展示会を開催するにあたって、展示品の品名を和紙の札に筆耕士さんに書いてもらうよう依頼したときだった。その時に、結婚式の招待状や席札などを書いているのも筆耕士さんであることを知った。更にリアルに筆耕士の仕事を感じた

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村上春樹×川上未映子 春のみみずく朗読会

村上春樹×川上未映子 春のみみずく朗読会

2024年3月1日、早稲田大学大隈記念講堂で開催された、「早稲田大学国際文学館主催 村上春樹ライブラリー募金イベント Authors Alive!~作家に会おう~特別編 『村上春樹×川上未映子 春のみみずく朗読会』に行ってきた。

イベントの開催について友達が教えてくれて、速攻申し込み。というか、詳細を知らないままサイトにアクセスしたら、早稲田大学国際文学館 村上春樹ライブラリーへ寄付して、その返

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待望の続編!!! 宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』(毎日読書メモ(520))

待望の続編!!! 宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』(毎日読書メモ(520))

宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』(新潮社)、2024年1月24日刊行、と聞き、書店に走って買って帰る。ぶれない成瀬に見合った、期待を裏切らない読後感。おかえり成瀬、ありがとう成瀬。

年明けてからなんだか忙しくて、昨年の読書の振り返りとかしていないのだが、昨年読んでああよかったなあ幸せだなぁ、という本を選ぶなら、津村記久子『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版)、乗代雄介『それは誠』(新潮社)、そして宮

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山本文緒『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』(毎日読書メモ(513))

山本文緒『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』(毎日読書メモ(513))

2021年10月18日、山本文緒さん逝去の報を知り、半泣きで山本さんの思い出を語る(ここ)。死の直前に刊行された『ばにらさま』、それよりも、著作のタイミングとしては絶筆に近い『自転しながら公転する』を読み、都度、わたしは山本文緒を喪ったんだな、という悲しさに浸ってきたが、今度こそ極めつけ、『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』(新潮社)は、2021年4月にすい臓がんのステージ4bの診断を

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吉本ばなな『ミトンとふびん』(毎日読書メモ(503))

吉本ばなな『ミトンとふびん』(毎日読書メモ(503))

吉本ばなな『ミトンとふびん』(新潮社)を読んだ。久しぶりの吉本ばなな。
同世代の人が、粗削りな文章なのに、なんでこんなに人の心を打つ小説を書けるのだろう、と、驚いていた若い頃、デビューしたての吉本ばななの本を新刊が出るたびに買い、何回も読んだ。『キッチン』、『うたかた/サンクチュアリ』、『哀しい予感』、『TUGUMI』、『白河夜船』、どれも単行本を初版で買い、引っ越しの時も持ち歩き、今でも我が家の

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滝口悠生『水平線』(毎日読書メモ(485))

滝口悠生『水平線』(毎日読書メモ(485))

滝口悠生、前に読んだ『長い一日』(講談社)がよかったので(感想ここ)近刊の『水平線』(新潮社)を読んでみた。雑誌「新潮」に2019年から2022年にかけて連載されていたものを改稿した単行本。主要な登場人物、横多平と三森来未という兄妹と、その先祖たちを中心とした物語で、テーマは硫黄島である。
硫黄島。わたしは映画「硫黄島からの手紙」とかは見ていないので、わたしにとっての硫黄島は、梯久美子『散るぞ悲し

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素敵な滋賀県小説:宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(毎日読書メモ(483))

素敵な滋賀県小説:宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(毎日読書メモ(483))

するつもりのない残業をしてしまって、ちょっとヨレた気分の帰り道、本屋に入ったら宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)に呼ばれて持ち帰り。一緒に「本の雑誌」の目黒考二追悼号も買って帰り、半泣きで読んで、目黒さん生きていたらこの小説も絶賛したのではないかしらん、と思いつつ『成瀬は天下を取りにいく』を一気読み。

第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞トリプル受賞(この文

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佐藤厚志『荒地の家族』(毎日読書メモ(479))

佐藤厚志『荒地の家族』(毎日読書メモ(479))

芥川賞を受賞した、佐藤厚志『荒地の家族』(新潮社)を読んだ。前作『象の皮膚』(感想ここ)に続き、「新潮」に掲載された小説の単行本化。

仙台在住の佐藤にとって、東日本大震災は向き合っていくべき大事なテーマであるようだが、アプローチは、ちょっと遠巻きにして、少しずつにじり寄っていくような印象。今作の主人公坂井祐治は、宮城県亘理町で植木屋を営んでいる。阿武隈川の河口の、海沿いの街。ここも震災の被害の大

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加藤シゲアキ『オルタネート』(毎日読書メモ(471))

加藤シゲアキ『オルタネート』(毎日読書メモ(471))

一昨年の本屋大賞6位だった加藤シゲアキ『オルタネート』(新潮社)、ようやく読んだ。高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が一世を風靡している社会、高校に籍がある学生だけが登録できて、自分の嗜好を詳しく登録すればするだけ、自分と相性のよさそうな相手を、オルタネートの中の人(AI)がお勧めしてくれる。知らない人でも、フロウを送って(友達申請?)、受けてもらえれば友達になれる。
東京にある、小学校

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庄野潤三『逸見小学校』(毎日読書メモ(418))

庄野潤三『逸見小学校』(毎日読書メモ(418))

逸見は神奈川県横須賀市の地名。京浜急行に逸見という駅があります。

大好きな庄野潤三さんが2009年に亡くなって、この本が出たのが2011年だった。新作が読めなくなった寂しさを感じていた時期に、発掘された旧作もまた愛しい。

もう新作は出ないから、発掘された原稿も本になる。戦時中の若者の姿を描いた物語は、意外と雄弁に時代の現実を物語っている。老年の夫婦の物語よりも、リアル、きれいごとでなく、従軍す

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保坂和志『カンバセイション・ピース』(毎日読書メモ(397))

保坂和志『カンバセイション・ピース』(毎日読書メモ(397))

昔の日記から読書に関する記録を拾っている。保坂和志『カンバセイション・ピース』(新潮社、現在は河出文庫)の簡単な感想。芥川賞をとった『この人の閾』(新潮文庫)とかも結構好きだったな。『カンバセイション・ピース』と、江國香織『間宮兄弟』(小学館文庫)を続けて読んで、おお、横浜ベイスターズ小説!、と思った記憶があるのも懐かしい。権藤監督だってさ…。

通勤中の電車で保坂和志『カンバセイション・ピース』

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祝・窪美澄さん直木賞受賞!(毎日読書メモ(370)

祝・窪美澄さん直木賞受賞!(毎日読書メモ(370)

窪美澄さん、直木賞受賞おめでとうございます。
デビュー作「ミクマリ」を含む『ふがいない僕は空を見た』(新潮社、現在は新潮文庫)が出たのが2010年で、この作品で2011年に第24回 山本周五郎賞を受賞していることを思うと、2022年の直木賞は遅すぎだろ、と思う。一方で、じゃあ窪さんの代表作って何? まさか『ふがいない僕は空を見た』なの???、と思うと複雑な気持ち。この作品は第8回本屋大賞の第2位に

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