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自己紹介 -私のエコビレッジ遍歴-

はじめまして。
谷口由布子(たにぐちゆうこ)と申します。
エコビレッジに興味を持って、このnoteを読んでくださってありがとうございます。

私がどのようにしてエコビレッジと出会い、探究するに至ったのかについて紹介します。

以前、取材いただいた以下の記事もわかりやすくまとまっているのですが、せっかくなのでここではもっと自分の心境の変化にも触れながら書いてみようと思います。


(大学以前はいったん省略します。後日追記するかも…)

東大入学からエコビレッジに出会うまで

2019年、晴れて東京大学に入学した私ですが、将来やりたいことや進路は何も決まっていませんでした。
だからこそ、「色々な人に会って話を聞きたい」「今だからできることを存分にやりたい」「東大という環境を最大限に活用したい」というモチベーションが強かった大学1年の私は、
とにかくフットワーク軽く、色々な場所に足を運んでたくさんの人に会おうと活動していました。
学生団体やサークルの活動にコミットしたり、勉強やバイトもしながら毎日フル回転。忙しくも充実した日々を送っていました。

2年次には副代表として奔走した学生団体の一大イベント

一方で、もっとゆっくりと自分と向き合う「積極的モラトリアム」期間を、大学生活のどこかでは取りたいなとも感じていて、将来的な休学についてもぼんやりと意識していました。

そして好奇心の強い私は、高校の頃から「海外留学に行きたい」となんとなく思っていました。特に明確な理由や学びたいことがあったわけではないけど、「新しい世界を見て視野を広げたい」というふわっとした憧れがありました。

ところが2020年、大学2年生になる春にコロナ禍が始まって、海外留学が当面難しくなりました。春休みに行くはずだったオーストラリアへの短期留学プログラムは出発3日前に中止になり、その後もゼミやサークルの合宿から何から、すべてのイベントが中止を余儀なくされた日々。
気づいたら、大学2年の夏休みを前に何も予定がなくなってしまいました。

そこで思い出したのが、大学1年のときにゼミの夏合宿で気がついた、「都会で生まれ育った自分は、地方のことを何も知らないんだ」という現実。
今までは日本の外ばかりに目が向いていたけど、日本国内のことをもっと知らないといけない、とその時思わされました。

海外に行けないのなら、日本の田舎に行ってみよう。
普段の都会生活ではできないようなことをしたい。特に、土に触れてみたい。
日常生活では、普段のコミュニティでは絶対に出会わないような人に会いたい。

そんな思いで、農家さんの住み込みボランティアを探していたところ、activoという募集サイトでたまたま目に留まったのが、熊本県にある「三角エコビレッジサイハテ」通称「サイハテ村」のボランティアスタッフ募集でした。

(体験記:後日公開)

残念ながらサイハテ村は現在は終了し、サイトもクローズしているのですが、発起人でありアーティストの工藤シンクさんが腕をふるった(たぶん)当時のサイハテ村のホームページは、美しい景色が広がる”1万坪のお山の上”で暮らす人々を切り取った映像がとても魅力的で、「なにこれめちゃくちゃ楽しそう!」という直感だけで、ボランティア(インカム)スタッフに応募してサイハテ村に行こうと決めました。

「サイハテ村」での2週間

お山の上から海をバックに、インカムメンバーのみんなと

8月、真夏の太陽が照り付ける灼熱の熊本で、同年代のスタッフのみんなと共に汗を流した日々。人生が変わった2週間でした。

動物のお世話、草刈り、畑仕事、鶏絞め、アースバッグ建築、ゲストハウススタッフ、、人生初めての経験もたくさんさせてもらいました。とにかく濃くて豊かな時間が流れていました。

「幸せってこういうことだな」と感じた瞬間がたくさんありました。

たとえば、美しい景色に囲まれてゆったりと時間が流れることの贅沢さ。
たとえば、みんなで盛り上がれて一緒に楽しめる音楽。
たとえば、おすそわけをし合って気持ちや喜びをシェアすること。

そして、住民、スタッフ、ゲストさんなど、個性豊かな人々との一期一会の出会い。
色々な人と話して、自分の五感で感じて考えて、今後の自分の生き方についてたくさんのヒントをもらいました。

こうして初めて「エコビレッジ」を体験し、中でも「コミュニティでの暮らし」の魅力にすっかりハマってしまった私は、色々と調べて情報収集するうちに、「もっと色々な現場を回ってみたい!」と思うようになりました。

すると、「積極的モラトリアム」が図らずもコロナ禍で取れてしまったことで、いったん落ち着いていた休学への関心が再び復活。具体的に休学することを検討し始めました。

「エコビレッジは、社会課題を解決できる」

その後も、折を見て他のエコビレッジを訪問していましたが、
2021年、大学3年の夏休みに、神奈川県の「廃材エコヴィレッジゆるゆる」を訪問します。

藤野の廃工場を買い取り、廃材だけでリノベーション

ゆるゆるがある藤野という集落は、平均年齢が80歳オーバーのいわゆる“限界集落”。
しかし、そこでエコビレッジが始まり、若者が移り住んできて地域が徐々に活性化していっている様子などを見て、
エコビレッジは、地域活性化・教育・福祉などの社会的機能を持ち、社会課題解決の選択肢の一つとして意義がある活動なのではないかと考えるようになりました。

一極集中が止まらない都会で、低賃金で長時間労働を余儀なくされ生きづらさを抱える若者の課題も、
過疎化・高齢化が止まらず衰退していく地方が抱える課題も、
エコビレッジが生まれることで若者が地域に入っていけば、解決するのではないか。

都会に集まりすぎたヒト・モノ・カネが元に戻り、人々がつながりを取り戻し、もともと日本で行われていた地域の暮らしが復活するのが理想なんじゃないか。

そんな思いをめぐらせ、「エコビレッジという選択肢を広めて、社会課題を解決する」という今の私のライフテーマが生まれた瞬間でした。

そして人とのつながりがもたらす心の豊かさこそが、平和へとつながる道だと信じています


そしてそれは、あくまで個人的に興味があるというレベルだったエコビレッジへの関心が、社会的意義のある研究対象としての問題関心に昇華したタイミングでもありました。

その頃大学では、教育学部の中でも教育社会学を学ぶ学科に進学しており、なんでも研究対象にできる社会学という学問の幅広さについてちょうど学んでいたところで、「エコビレッジを卒論の研究対象にしちゃえばいいじゃん!」と気づいたのでした。

デンマークとの出会い

ただ、日本ではまだエコビレッジの数は少なく、運営も手探りなところが多い。一方で、色々と調べるうちに、デンマークがエコビレッジの発祥の地であり、運動がさかんであることを知ります。

とにかく現場を見に行くのが大好きな私は、「先進地デンマークでは、エコビレッジがどうやって運営されているのか見に行きたい!」と思うようになりました。

同じころ、色々なご縁が繋がって出会った方から、デンマークの「フォルケホイスコーレ」について教えていただきました。

「人生の学校」とも言われる北欧独自の教育機関フォルケホイスコーレは、試験も成績もなく、学びたいことを自由に学びながら、自らについて見つめ直せる場。デンマークでは、高校を卒業した後にギャップイヤーをとって通う人も多いです。

その中には、エコビレッジで広く取り入れられている、自然と共生する持続可能なデザイン手法である「パーマカルチャー」について学べる学校がありました。

全寮制で、共に暮らしながら共に学ぶという「コミュニティでの暮らし」を実践し、また対話を重視しているという特徴も、エコビレッジに通じるものがあり、「これこそ私が行くべき場所だ!」と感じました。

こうして、デンマークのフォルケホイスコーレに留学して、サステナビリティやパーマカルチャーについて勉強しつつ、現地のエコビレッジを訪問して研究の参考にするという、休学のプランが一気に固まったのです。

休学してフォルケホイスコーレ留学へ

2022年、大学3年生を終えたタイミングで、1年間の休学をスタート。
まずは、国内のエコビレッジを2つ訪問した後、ロンドンへ語学留学に行きました。

夏の2大イベント

そして2022年7月、GEN Europeが主催する年に1度のエコビレッジのお祭り「European Ecovillage Gathering 2022」がちょうどデンマークで開かれることに運命を感じ、参加しました。

世界中のエコビレッジの住民や興味のある人300人以上が集まった

世界にはこんなにもたくさんエコビレッジがあって、色々な困難に直面してもがきながらも、コミュニティでの暮らしを実践しているんだなぁとシンプルに感動しました。
様々なセッションで、エコビレッジの第一人者や住民の生の声を聞けたこと、まさに研究中のマスターの学生たちと知り合えたのも良かったです。

ウクライナから逃れてきた人たちのセッションも

そしてこの時、「Green Road」というプロジェクトについて知ります。これは、ロシアによるウクライナ侵攻開始後、郊外やヨーロッパの他国にあるエコビレッジが、爆撃を受けた都市から逃れてきた避難民を受け入れたというプロジェクトで、戦争が長期化する中で、現在も生活を続けている人たちもいます。

ここで改めて、自給自足的な生活を営み、有事にも助け合える人々のつながりを持つエコビレッジは、戦争や災害などの生が脅かされる非常事態においても”持続可能”な社会モデルであるということを認識。VUCAの時代と言われ、いつ何が起こるかわからない今後の社会でますます必要とされていくだろうと感じて、その拡大に向けた決意を新たにしたのでした。


その後、同じくデンマークで開かれた、エコビレッジをはじめとしたインテンショナル・コミュニティの研究者たちの学会”ICSA Conference 2022”に参加。

日本ではインテンショナル・コミュニティの研究はほとんど蓄積がない中で、世界ではこんなにもたくさん、しかも様々な社会学的な切り口から研究されていると知れたことは、まだ研究を始めてもいなかった自分にとって大きな励みとなりました。

この学会のオプションツアーで、デンマークのエコビレッジ9ヶ所を実際に訪れることができたのも貴重な経験でした。

(体験記:後日公開)

7月末には、スコットランドの北の果てにある、世界的なエコビレッジFindhornのExperience Weekに参加しました。
2023年に財団が破綻してしまったFindhorn。現地を訪問してプログラムに参加できたのは、今となっては特に貴重な体験だったかもしれません。

(体験記:後日公開)

いざ、フォルケライフ

8月、フォルケホイスコーレでの4か月の学校生活が始まりました。
私は、ドイツとの国境付近の小さな町にあるLøgumkloster Højskoleに通っていました。

メイン科目にパーマカルチャーを選択し、理論的な座学から、学校のガーデンでの実践まで、色々な授業を受けました。コペンハーゲンのコミュニティガーデンについて知れたり、近所のフォレストガーデンに見学に行ったり、授業内で私が訪れてきたエコビレッジについて紹介したりと、自分の関心に合った良い学びの機会でした。

パーマカルチャーの3つの原理
ガーデンでじゃがいも掘り

けれども、こうした実用的な学びよりも自分にとって大きかったのは、「コミュニティでの暮らし」を初めて長期で体験できたことでした。
4ヶ月間、朝から晩まで生活を共にする中で、仲間や先生たちとのつながりはまるで大きな家族のようになり、かけがえのない尊い時間を過ごすことができました。
一方で、価値観の異なる他人同士で共同生活を送っていくことの難しさも実感し、葛藤もありました。

みんなで撮った卒業写真

そして、デンマーク社会全体の環境意識の高さに刺激され、気候変動や環境問題についての危機感が高まったのも、自分にとっては重要な変化でした。

卒論を書き上げるまで

こうして様々な出会いと経験を得て帰国した私は、2023年春に大学に復学し、いよいよ卒論執筆に向けて動き始めました。

サイハテ村を訪れた時から感じていたのが、「エコビレッジの運営って全然持続可能じゃない」ということ。
その理由は、経済的な安定を得る難しさや、価値観の違いによる人間関係のトラブルなど、多岐にわたりかつ複雑に絡み合っていることもわかっていました。

どうすればエコビレッジは持続的に運営できるだろう?」という問題関心は早くから持っていて、それを少しでも解明する研究がしたいと考えていました。

一方、せっかくたくさんの事例を訪問してきたのだから、日本におけるエコビレッジ運動をマクロ的に捉えたいという思いもあり、さんざん方向性に迷走した結果、
北海道にある「余市エコビレッジ」を事例にした持続的な運営についての分析と、運動全体の概観の2本立てで論文を書くことにしました。

お世話になった余市エコビレッジでワインぶどうの収穫

夏休みは、研究の調査という名目で、これまで行けていなかった数々の事例を訪問し、新たなつながりをたくさん広げることができました。
その後、10月の1か月間は余市エコビレッジに滞在しながらフィールドワークやインタビューを行いながら調査を進めました。

こうして自分なりに精一杯書き上げた卒論は、現場の皆さんからも先生方からも良いご評価をいただくことができ、とても嬉しかったです。
内容を少しずつ切り出してnoteにも投稿していくつもりなので、興味があったら読んでみてください。

これから

こうして無事に大学を卒業できることになった私は、4月から一般企業に就職します。

「エコビレッジという選択肢を広めて、社会課題を解決する」というライフテーマを掲げる私ですが、
そのために、メインストリームの社会とエコビレッジのような新しい社会の架け橋になりたいと考えています。

そこで、まずは今のメインストリーム社会がどのように回っているのか、その内部に入ってたくさん勉強し、ビジネスや経営の知識やスキルを身につけたいと考えています。

一方で、エコビレッジに関わる活動も続けていくつもりですし、ゆくゆくは日本全体で「コミュニティでの暮らし」を盛り上げるような仕組みを作っていけたらと考えています。

noteやSNSでも引き続き発信していくつもりなので、ぜひフォローしていただけると嬉しいです!

長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました!

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