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2023年12月の記事一覧

想い歌 《詩》

想い歌 《詩》

「想い歌」

きっと単純な事なんだ

空に雪が降る様に

君の嫌いなところと 
好きなところ数えてみた 

風を待つ花と月を呼ぶ夜と

君の声を待っている僕と
溢れ出した熱

僕の中の君と 君の中の僕と 

触れた指先 

毎年 
冬になると必ず同じ匂いがする

涙は暖かい事を知った

何処かで聴いた想い歌

もう直ぐクリスマスがやって来る

短編小説 | 黒の代償

短編小説 | 黒の代償

 いつもの朝だ。いつもの私だ。大丈夫。
いつものキッチンに立ち、鼻の奥から何度も生まれてくるあくびを、何度でも噛み殺す。
 狭い我が家のキッチンにはガラス扉の食器棚がある。その前で立ち止まり、扉に映った自分の姿に目を凝らす。今日の私に、どこか変わったところの一つでもないだろうかと、ガラスに顔が付きそうなくらいに近づいて自分を凝視していた。ちょうどその時、リビングに夫が入ってきた。
 起きがけにコッ

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過ぎた日を想う

過ぎた日を想う

予想できない結末は
知らないほうがいいから
最初から見ないという卑怯
過ぎてしまった日々の記憶
先の期待と反対の過去の後悔
誰も何も言えない場所に
隠しておきながら
見てないフリをしながら
気になって隠して気になって
そんな大切の仕方を
いつのまにか覚えてた
決して誰にも言えない
忘れたいのに忘れたくない
見たくない気持ちにしておいて
いつも見ている卑怯
不安と後悔を秤にかけて
もう一度という世界

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見えない見たくないもの

見えない見たくないもの

目の前を通り過ぎていく

声にならないことばを

胸のどこに隠しておこう

行き場を失うように

メモリはいっぱいになっていく

簡単には答えの出ない複雑に

絡まった糸はほどけない

それぞれに持ち合う不都合を

覗こうとして窓がぼやける

静かな夜を越えて迎える朝

カーテンをゆっくり開けていく

世の中のせいにして答えを出さない

私のわがままに会いに行く

どうせ言い訳なんて聞いても

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ありがとう  #シロクマ文芸部

ありがとう #シロクマ文芸部

「ありがとうは?あ・り・が・とう」
「……ありがとう、ございます」
母親に強く握られていた手首は、開放されたあとも窮屈な痛みが残っていた。
「ありがとうは基本です。どんな時でもありがとう。ありがとうを言えない人間に価値はありません」
「……はい」

ああ、もうこんな時間。
約束の時間、15分も過ぎてる。
皆、先に行っちゃっただろうな。
また私だけ行けなかった。

「莉央、友達と約束があるんじゃない

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灰色の雲 《詩》

灰色の雲 《詩》

「灰色の雲」

僕等に吹き付ける冬の風は

強い力と価値基準を持っていた

それは僕等の記憶の裏側に隠した

混乱を巧妙に曝け出させる

価値基準を
満たした人の波が押し寄せて来る

僕等は溺れる様に彷徨っていた

曇り空に浮かぶ灰色の雲を
外部からの強い力が引きちぎる

奴等が求める完璧を否定した

僕等は奴等の言う完璧に

何の意味も見出せなかったからだ

勝ち負けに拘って来たのは

負ける事

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長い夜 《詩》

長い夜 《詩》

「長い夜」

秘めた聖なる山は
幾度となく燃え上がり消える

いつか見た長い夜

あの時もそうだった 

僕は星や月を探していた

窓の外を風が通り過ぎて行った

僕はその風の温度も匂いも

感じる事が出来なかった

ただ 触れたいそう思っていた

目に見えているものは 

己が
仮説の上に創りあげた世界である事

一種の概念の上に
成立した架空の物語

恐怖を掻き消す為に

僕は彼女の身体に

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踊りませんか?

踊りませんか?

もし良かったら
この不安と
手をつないで
くれませんか?

もし良かったら
この悲しみを
抱き締めて
くれませんか?

もし良かったら
この迷いに
大丈夫と言って
くれませんか?

もし良かったら
あなたの笑顔を
半分こして
くれませんか?

もし良かったら
あなたの事を
思わせて
くれませんか?

もし良かったら
一緒に明日へと
手を繋いで
くれませんか?

もし良かったら
この先ずっと
一緒に

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Happy birthday。

Happy birthday。

幼なじみの香月は優しい子だった。
そして、頭の良い子だった。

故に変わってしまった。

高校に入ってからの香月の口癖は『生きてる事に意味あるのかな?』になった。

憂うべき時代。
憂うべき環境。
人の罪悪が蔓延る世界を憂い、自分を否定する様になった。

香月誕生日前日。

「なぁ、香月」
『なに?』
「明日誕生日だろ?」
『そうみたいね』
「また他人事みたいにさぁ……」
『誕生日が来る度に思うわ

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花畑

花畑

優しさの種をまき

悲しみの苗を植え

涙の水やりを欠かさず

笑顔の太陽を浴びせる

そうして育った花畑

誰かの癒しになれるかな

悲しみに寄り添えるかな

笑顔を取り戻せるかな

そして、いつの日にか

その誰かがまた

優しさの種をまき

悲しみの苗を植え

また誰かに寄り添う

こうして

リレーするように

伝い合っていくうちに

遠い誰かとつながる感覚が

ひとりじゃないことを

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【詩】狼男の悲歌

【詩】狼男の悲歌

何も隠さなくていい
恥ずかしがらなくていい
ありのままで良いんだよと
みんなが優しく言ってくれたから
勇気を出して
ありのままの自分を見せたら
みんな悲鳴を上げて
一目散に逃げていった

みんなの優しさは
嘘ではなかったんだろうけど
きっと想定を超えたんだね
驚かせてごめんよ
怖がらせてしまってごめんよ
そしてさようなら

満月の夜は
今までのように
遠く離れたところで
独りで吠えることにするよ

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また会いましょう

また会いましょう

いつかの私
また会いましょう
昨夜の涙
また会いましょう
あの時の言葉
また会いましょう
報われない思い
また会いましょう
別れの後悔
また会いましょう
誰かを好きになる心
また会いましょう
会心の笑顔
また会いましょう
どれも私だから
また会いましょう
隠さなくていいから
また会いましょう
どれも間違ってないから
また会いましょう
全てのピースが揃うから
また会いましょう
夢見た私になるから

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【詩】心の鍵

【詩】心の鍵

彼女の心のドアを開けるカギ
大冒険の末に
やっと見つけ
ドアを開け
中に入って
喜んでいたら
カギをかけ忘れたみたいで
ドアから他の男が
ひょっこり顔を出すと
ぐいぐい入ってきて
カギを奪っては
俺の胸ぐらをつかんで
外に締め出し
カギをかけた
彼女のことが心配で
大丈夫かと叫んでも
無反応
ドアに耳を近づけると
中から二人の笑い声が聞こえる