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【試し読み】ユリア・エブナー『ゴーイング・メインストリーム 過激主義が主流になる日』第2章「サブカルチャーの創生─インセルの潜入調査」
初めに逸脱したサブカルチャーがあった。
心臓が早鐘を打つ。ラップトップを閉じて慌ててクローゼットの奥に押し込んだ。靴下の後ろに隠したから、たぶんあと数時間は見なくてすむ。ツイッター〔現X〕で匿名の誰かがたったいま送ってよこした、わたしと墓地の写った不吉な写真のことなど忘れてしまおう。とくに珍しくもないことだから。反フェミニズムの台頭について公に話をしたあとに続々と届く脅迫メッセージの、いちばん
夜空に憲法をみつけよう
「憲法と法律の違いってわかる?」
「憲法は最高法規のなんたらだっけ。法律より偉い何か?」
「まあそうなんだけど、じゃあ『最高』とか『偉い』ってどういう意味だと思う?」
「うーん…例えば、憲法のルールと法律のルールがぶつかったときには憲法が勝つ、とか?」
「お、なかなかいい観点だね。だけどちょっと惜しい。そもそもその二つは同じ土俵にいるわけではないんだ。『法律というルールをどうやって決めるか』を決め
エネルギーの民主化運動(2011)
エネルギーの民主化運動
Saven Satow
Jul. 03, 2011
「個人的な怒りの力で無関心を社会参加へ変えよう」。
ステファン・エッセル(Séphan Hessel)『怒りなさい!(Indignez-Vous!)』
第1章 脱原発時代の到来
今や脱原発はエネルギーにおける民主化運動である。原発事業は政官財学報の利権のペンタゴンによって成長している。3・11以降、一般も広くからくり
ホロコーストとアパルトヘイト(3)(2024)
5 ロールズの正戦論
ジュネーブ条約が示す通り、戦争にもルールがある。自衛権行使も同様である。その論拠を提供しているのが正戦争論である。従前の国際法が取り扱っていなくても、国際世論の高まりとともに、この議論の発展によってその行為が禁止されることもあり得る。近代は自由で平等、自立した個人が集まって社会を形成し、国家はそれが正義に基づいて機能するために設立される。戦争はその国家が行う。正戦論は個人の
【翻訳】アリー・アブーヤシーン「ラマ/ガザよりシェイクスピアへ」『ガザモノローグ2023』
ラマ
戦車が家を砲撃したら、すぐに自宅を離れないといけない。なぜなら、戦車は無差別に砲撃するから。悪意をもって破壊し、警告なしに人を殺すから。戦車は頭のいかれた怪物だ。見境なく建物を切り裂いていく......。
アブー・アハメドは大事な書類の入ったカバンと服を運びながら、頭の中でそう考えた。そのカバンは、ガザのどの家にも用意されている。中に入っているのは、IDカード、パスポート、出生証明書、