Saven Satow

批評家

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読書感想文と批判的思考(2024)

読書感想文と批判的思考 Saven Satow Jul. 03, 2024 “Critical thinking is reasonable reflective thinking that is focused on deciding what to believe or do”. Robert H. Ennis ”Critical Thinking” 1 2種類の作文術  夏休みになると、日本の初等・中等教育では読書感想文の宿題がしばしば出される。これは作文教育におけ

    • フォントに見る現代社会(2008)

      フォントに見る現代社会 Saven Satow Mar. 04, 2008 「1つ1つの活字とは、じつはわれわれ1人1人なのではないだろうか。グーテンベルグが発明した活版印刷のシステムとは、人々が群れ集う市民社会の縮図であり、その暗喩としての役割をも果してきたのではないだろうか」。 杉浦康平『活字礼讃』  この春、多くの新聞で活字が変わります。2008年3月31日から読売新聞と朝日新聞が活字を大きくすると発表し、地方紙も相次いで同様の方針を打ち出しています。2007年12

      • やっかいな問題(2007)

        やっかいな問題 Saven Satow Oct. 30, 2007 “Democracy, in silence, biding its time, ponders its own ideals, not of literature and art only—not of men only, but of women”. Walt Whitman Democratic Vistas  2007年10月12日、ノルウェーのノーベル賞委員会は同年のノーベル平和賞をアル・ゴア前

        • 反V杯デモとブラジルの民主主義(2013)

          反W杯デモとブラジルの民主主義 Saven Satow Jun. 24, 2013 「神は偉大なサッカー選手をより多くブラジルに与えた。他国はそれでは不公平だと不満を漏らした。そこで神は言った。『心配することはない。ブラジルにはブラジルサッカー連盟を与えておいたから』」。 ブラジルのジョーク  2013年6月2日、サンパウロで地下鉄の運賃が値上げされる。学生が呼びかけてこれに抗議するデモが始まる。同月13日、デモ隊と警察が衝突、100人以上が負傷、200人以上が当局に拘束

        読書感想文と批判的思考(2024)

          ある統一地方選挙(2003)

          ある統一地方選挙 Saveu Satow Apr. 30, 2003 「軍勝五分をもって上となし、七分を中とし、十分をもって下となす」。 武田信玄  岩手県に北上市という地方都市があります。同県では盛岡市に次ぐ第二の人口9万人を抱えているのですが、全国的には、その名はあまり知られていないことでしょう。北上市出身の有名人と言えば、最近では、「藤原組長」と呼ばれるプロレスラーの藤原喜明氏くらい,。  その北上市でも、今回統一地方選挙の一環として、市長選挙が行われています。投

          ある統一地方選挙(2003)

          セイフ・ヘイブンを目指すアイスランド(2010)

          セイフ・ヘイブンを目指すアイスランド Saven Satow Aug. 17, 2010 「自由のあるところに祖国あり」。 ベンジャミン・フランクリン  アイスランドが「セイフ・ヘイブン(Safe Haven)」を目指している。同国の議会は、2010年6月、調査報道の環境整備立法のための政策の指針を賛成多数で承認している。指針は、報道の自由、中でも情報源や内部告発の保護に関する各国の法律を参照にしてまとめられた程度で、実際に法案化されるのは1年以上先だが、向かうべきは世界

          セイフ・ヘイブンを目指すアイスランド(2010)

          初音ミクとカストラート(2013)

          初音ミクとカストラート Save1un Satow Ju., 01, 2013 「声は美の花である」。 エレノアのゼノン  2007年に登場して以来、初音ミクは世界に広まり、今では定着しています。近年、電子音楽のパイオニアの一人である富田勲も初音ミクとのコラボを試みています。  初音ミクはヤマハの音声合成システム「VOCALOID2」を採用した音声合成ソフトです。メロディと歌詞を入力し、合成音声によるボーカルパートやバックコーラスを作成することができます。さらに、それを

          初音ミクとカストラート(2013)

          零戦とグラマン(2013)

          零戦とグラマン Saven Satow Jul. 21, 2013 「帰宅の途中などで、機銃掃射されるのが怖かった。案外に当たらぬものだし、爆弾だと当たったらおしまいである。それなのに機銃掃射が怖いのは、自分がねらわれているという恐怖のゆえだろう」。 森毅『自由を生きる』  2013年7月20日より宮崎駿監督によるアニメ映画『風立ちぬ』が公開されます。零戦の開発者として知られる堀越二郎が主人公です。宮崎監督は、7月20日付『朝日新聞』のインタビュー記事「零戦設計者の夢」に

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          名前のないスキャンダル(2010)

          名前のないスキャンダル Saven Satow Jan. 26, 2010 「名は体を表す」。  近代日本において、数多くの政治スキャンダルが表面化している。開拓使官有物払い下げ事件に始まり、日糖事件、シーメンス事件、造船疑獄、ロッキード事件、リクルート事件、佐川急便事件、撚糸工連事件など非常に多様であるが、多くに共通点が一つだけある。名称に企業や産業などが含まれている点である。内容を知らなくても、事件名を聞いただけで、疑惑の対象が推測できる。  しかし、小沢一郎民主党

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          政党のアイデンティティ(2009)

          政党のアイデンティティ Saven Satow Sep. 06, 2009 「どんな鳥も自分の翼で飛び上がるほかない」。 ウィリアム・ブレイク『天国と地獄の結婚』  第45回衆議院議員総選挙で、民主党が308議席を獲得した結果について、各種メディア上で意見・感想・分析が示されている。もし前回の総選挙と7月の都議会議員選挙を経験していなかったら、その衝撃はもっと大きかったに違いない。しかも、ほぼ事前の世論調査通りだったため、有権者にしてもすでに心の準備ができている。  今

          政党のアイデンティティ(2009)

          クロード・レヴィ=ストロース、あるいは最後の大思想家(2009)

          クロード・レヴィ=ストロース、あるいは最後の大思想家 Saven Satow Nov. 05, 2009 “Mr. Lévi-Strauss! Pants or books?” 川田順造『こぼれ話、レヴィ=ストロース先生』  肯定的立場にしろ、そうでないにしろ、その存在を無視できない思想家を「知の巨人]と呼ぶ。2009年11月1日に亡くなったクロード・レヴィ=ストロースはまさにその名にふさわしい。  レヴィ=ストロースは、人類学におけるほぼすべての領域に亘って画期的な理

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          酔いどれ大臣の死(2009)

          酔いどれ大臣の死 Saven Satow Oct. 05, 2009 「ごまかしで成功するよりも堂々と失敗する方がよい」。 ソポクレス『ピロクテーテス』  一人の人間が亡くなった時に、哀悼の意を表することは、社会人として当然の礼儀である。しかし、中川昭一元衆議院議員の訃報に際し、前途ある政治家の早すぎる死であるかのようにマスメディアが報道しているのは見当違いである。  彼の政治生命はあの酔いどれ会見で終わっている。  もしあの会見をティモシー・ガイトナー財務長官が行っ

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          石原慎太郎東京都知事、あるいは声の大きい人(2009)

          石原慎太郎東京都知事、あるいは声の大きい人 Saven Satow Nov. 20, 2009 「政治とは明日枯れる花にも水をやることだ」。 大平正芳  石原慎太郎東京都知事は典型的な「声の大きい人」である。それは大声を上げて相手を威圧し、その場の雰囲気を支配して、交渉を自分に優位に運ぼうとする人を意味する。  声の大きさが、交渉の場で、しばしば戦術として用いられる。声高さは攻撃性を見せ付けて、相手に踏みこませんとしている。それは守りが弱いと言っているのに等しい。隙を見

          石原慎太郎東京都知事、あるいは声の大きい人(2009)

          月間総合誌の退潮(2009)

          月刊総合誌の退潮 Saven Satow May.,13, 2009 「私も、確信をもって未来についてコメントする齢に達した。予測が間違っていたとわかったときは、もうこの世にはいないからね」。 ジョン・K・ガルブレイス  月刊の総合誌の休刊が相次いでいる。これには、確かに、個々の事情を考慮する必要もある。しかし、『論座』に『諸君!』、『月刊現代』、『月刊PLAYBOY日本版』と多岐に亘っている状況を見れば、月刊総合誌自体が退潮していると考えるべきだろう。  けれども、論

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          活性と抑制、あるいは理想のリーダー(2009)

          活性と抑制、あるいは理想のリーダー Saven Satow May,19, 2009 「頭たる者は橋になれ」。 トマス・フラー『英国名士伝』  2009年9月までに必ず総選挙があることもあって、ここのところ、各種メディアが「次の総理には誰がふさわしいか」というアンケートを頻繁に実施している。その結果が発表される度に、永田町は一喜一憂し、政局の一因とさえなりかねない状況である。  グーグルで「理想のリーダー」を検索すると、実際の政財界のトップが各種アンケートに回答した結果

          活性と抑制、あるいは理想のリーダー(2009)

          外国人参政権と法務府民事局長通達(2010)

          外国人参政権と法務府民事局長通達 Saven Satow Feb. 11, 2010 「私の日本国籍は、朝鮮人ではあるが当時日本国籍を有した両親から、出生によって取得したもので、その後もそれを放棄した覚えはまったくない。それを一方的に剥奪され、あらゆる面で外国人だとして差別されることは納得できない」。 宋斗会  今国会、鳩山由紀夫内閣が永住外国人への地方参政権付与法案の提出を進めている。しかし、与党内部からも慎重論が出され、その中に、帰化すればいいという反対論がある。

          外国人参政権と法務府民事局長通達(2010)