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心の片隅に置いておきたいnote
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星野源の音楽と共約不可能性

星野源の音楽と共約不可能性

 科学哲学の分野には、「共約不可能性」という概念がある。もともとは、“いかなる整数比によっても表現することのできない量的関係”を表すための数学用語であったが、人文科学ではしばしば、この「共約不可能性(通約不可能性とも)」という用語が、別のパラダイムを背景に持つ他者との分かりあえなさや、他者理解、共感の限界を示す言葉として使われる。

 そして私は、“共約不可能”という事態について考えるとき、ふと、

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人生と旅に求めてることがちょっとわかってきた(雑記)

人生と旅に求めてることがちょっとわかってきた(雑記)

 今月、平日のどこかで沖縄でも行こうかしら。スカイスキャナーをすいすいっとなぞっていると、沖縄行きの飛行機が安くて、惹かれる。行きてえー。あったかいところ、行きてえー。海、見てえー。おいしいもの食べて、ほっこりして、ホテルで爆睡して、朝食バイキングを堪能して、琉球王朝に思いを馳せて、なんか民芸品とか、面白い調味料とかさ、お土産買って帰りたい。

 沖縄には一度だけ行ったことがある。大学四年生の夏休

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ひとり旅、ちいさな挑戦と一期一会を楽しむ。

ひとり旅、ちいさな挑戦と一期一会を楽しむ。

行動力がぐーんっと上昇中です。

二十歳の頃、此処ではない何処かへ行きたくなりひとりで京都へ向かったところ、朝から夜まで誰とも会話しないことに耐えきれませんでした。

駅までの帰り道が分からなかったのですが、Googleに頼ることをせず隣を並んで歩いていた方に道を尋ねました。僕の奥さんも岡山出身でねー!という会話をしたことを覚えています。

その時私は思ったのです。私はひとり旅には向いていない。綺

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金曜日のトマトパスタ

金曜日のトマトパスタ

「1週間の献立を何にするか?」は世の中の多くの主婦を悩ませている議題の1つだろう。特に週末に1週間分の食材を一気に買い出しして、その限られた食材の消費期限や1食分の栄養バランス、さらにお弁当にも使えるメニューを考えなければならないとなってくると、もうこれは難解な冷蔵庫パズルである。
某ドラマでもこの”冷蔵庫パズル“の悩みが取り上げられていて、大いに共感した。「月曜日に使ったエノキの残りが茶色くなっ

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2022年も、いい食卓を一緒に作りましょう

2022年も、いい食卓を一緒に作りましょう

ある人と、少し距離を置いた。仲間内での集まりで、その場にいない共通の友人!の、給料や出世状況について話題にするようになったからだ。

「あいつはイケてる」「あいつは世渡り下手」

そんな言葉が出てくると、私は「しょ~もな」と思いながら料理を黙々と口に運ぶに徹する。仲間内の大半は同調せず、さりげなく話題を変えたり、適当に流したりしているのがせめてもの救いだ。

10年前だったら、私は「しょ~もな」と

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「うめえ」が聞きたくて

「うめえ」が聞きたくて

言語聴覚士、というマイナーにもほどがある仕事に就いて、もう次で4回目の春を迎えようとしている。コミュニケーションと食事のリハビリという側面から誰かと関わるこの生活は大変だけど、うんと好きだ。

そんな中であるとき担当することになったのは、お酒とタバコとギャンブルがお好きで陽気な患者さんだった。目を開けてすぐのとき「わたしのこと、見えてますか?」と尋ねたら「見えてるよ!目の前に美人!サイコーの景色!

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「お茶出し」いらなくない?

今の会社に転職して2ヶ月が過ぎた。その日は社外のお偉いさんが当社に集まる日で、ふと同僚のスケジュールを見ると、そのお偉いさんたちへのお茶出しと入っていた。

その単語を久しぶりに目にして、胸がざわついた。

私が働いていた銀行では、お茶出しは「1番下っ端の女性」の仕事だった。
1年目の私はなんの疑問も持たず、上司が応接にお客様を通すのを見かけたら即座に給湯室に直行し、笑顔でお茶を出すのが下っ端でも

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他部署の足立さん

他部署の足立さん

この気持ちはきっと恋……じゃない。信頼の延長線上だ、あくまで人として好きなだけだ。

そう自分に言い聞かせながら、今日もオフィスでキーボードを打つ。一度しか会ったことのないあの人宛に、WEBページの更新依頼を送る。そして彼女から「スター」をもらえることを、ほんの少しだけ期待している。

WEBページの担当者ぼくはホテルで働いている。「ホテルで働いている」と聞いて、フロントに立つ爽やかお兄さんを想像

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京都の引力

京都の引力

学生時代を過ごした京都に、毎年吸い寄せられるように訪れている。気軽に行けるけれど、帰るときの離れ難さを振り切るのに毎回一苦労。特別な引力があるんだと思う。

4泊5日の滞在を終えた私は、今まさに東京行きの「のぞみ」の座席で京都の引力に必死に抵抗しているのだけれど、学生時代を過ごした思い出の街という補正を抜きにしても、唯一無二にして強力な引力の源泉について考えてみる。

京都に暮らす人たちの清潔さ

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2022.3.24 - 気になる色が増える

2022.3.24 - 気になる色が増える

最近「オレンジ」の色が好きになった。
私の中で小さな変化のように感じる。これまでずっと寒色系の色が好きだったのに、急にその中にオレンジ色が加わってきた。好きな色は?と聞かれたり、なにかで選ばなければならないときはずっと青系、緑系、黒を選んでいたのに。
すごくなんでもないことだけど、人間の感覚というものは不思議だな~と感じてしまった。

いつも一番身につける色は黒だった。そのほかの色は、馴染みがない

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「あなたらしくない」をやってみた

「あなたらしくない」をやってみた

先日、久しぶりに一人焼肉へ行ってきた。

私は一人でわりとどこでも行ける・できるタイプで、飲食店に関してはラーメンもお寿司も焼肉も立ち飲み屋も行ける。(さすがに高級レストランや料亭は誰かと一緒に行きたい)

さて、お友達と電話していたときに、ポツリと「明日一人焼肉行こうかな〜」と呟いた。一人で焼肉に行く=ここまでは「私らしい」である。

でも呟いたときの私は、「焼肉に行く」という選択をとる状況では

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言葉に生かされる一年

言葉に生かされる一年

 物心ついたときから、周りの大人に「あなたは傷つきやすい」と言われてきた。

 たしかに、幼いころのわたしは他人が吐いた言葉に少しでも悪意が混じっていれば、すぐに傷つき嘆いた。おまけに怒りの反射神経がすこぶる悪かったので、たいていはその場で言い返すことができず、家に帰ってから親に泣きつくことが多かった。

「あなたは傷つきやすい」という言葉は、そんなわたしを哀れに思った周りの大人が「気にしなくてい

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空腹と、背徳感と、もうひとつ。

空腹と、背徳感と、もうひとつ。

妹が遊びにくる。
宿泊日数と不釣り合いなバカでかいリュックを背負い、高速バスに二時間揺られてやってくる彼女のプチ旅行はこれが最後になるだろう。私はもうすぐ引越しをする。

遠出はできない。近場で観光地になるような場所は、すでに制覇した。来るのは構わないけど、何するの?

まぁ、いっか。妹だし。
二泊三日の計画はすべて投げ出した。それが冒頭のLINE。

返信がきた。

私には妹が二人いる。大学入学

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思い出の欠片を作ること。

思い出の欠片を作ること。

子どもの頃の楽しかった記憶は大人になっても結構しっかりと残っているもので、だからこそ自分の子どもにも、たくさんの思い出の欠片を残してあげたいと昔から思っていた。

妊娠してからその思いはさらに強くなり、今年は数十年ぶりに実家の母と味噌作りをすることにした。

毎年冬になると味噌を仕込んでいた母。私はその光景も、ホクホクに煮上がった大豆のふくよかな香りもよく覚えている。大豆を小皿にわけてもらって母の

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