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「あなたらしくない」をやってみた

先日、久しぶりに一人焼肉へ行ってきた。

私は一人でわりとどこでも行ける・できるタイプで、飲食店に関してはラーメンもお寿司も焼肉も立ち飲み屋も行ける。(さすがに高級レストランや料亭は誰かと一緒に行きたい)

さて、お友達と電話していたときに、ポツリと「明日一人焼肉行こうかな〜」と呟いた。一人で焼肉に行く=ここまでは「私らしい」である。

でも呟いたときの私は、「焼肉に行く」という選択をとる状況ではなかった。

どういうことかというと、「いつもの私」であれば、何か自分を褒めたいときに焼肉へ行くことが多かった。お寿司や焼肉はいくつになってもご褒美感があるから、「最近頑張ったからこの日に行くぞ!」と前々からスケジュールに印をつけて、当日を心待ちにして行きたいのである。

一人焼肉へ行くとしても、1週間くらい前から「今週頑張ったご褒美として絶対行くぞ。だから仕事頑張るぞ……!」とモチベーションを高めるタイプ。頑張った感がないと、行こうとあまり思わない。

だからこそ、ポツリと「明日一人焼肉行こうかな〜」と言った私に対して、お友達が言う。

「なんか、青紗らしくないねえ」

言われた瞬間は「ん?なんで?」と思ったのだが、話を聞いているうちに納得した。

そうだ、私はご褒美として待ってから行きたい人だったわ。

「たしかに。いつもの私なら重ための仕事が終わったときや、何かうまくいったときに行くことが多いのに。金曜日や休日に行くのにね。何も終わってないし、何も褒めることがないのに行こうとしているぞ……!」

ハッとしたように早口になる。

そんな私に明るい声が届く。

「全然いいじゃん!てゆうか、何もないときでも『行こっかな〜』とふらっと行っていいんだよ。どんどんそういうのやってほしい。楽しいよ」

お友達は毎日を楽しく生きるプロだ。明るくポジティブな性格にとても助けられているし、私の凝り固まった考え方を柔らかくしてくれる。

「……そうだよねえ」

「そうだよ。ご褒美として楽しむのもいいけど、結果を出していなくても、何かに挑戦した日やうまくいかないときにも食べていいんだよ。そんな日こそ、頑張っているんだから」




いつもよりちょっと贅沢なことをしようと思ったとき、「プロジェクトが成功したから」「忙しかった仕事がようやく落ち着いたから」「資格に受かったから」と、“いいこと”にフォーカスを向けがちだ。

だけど、これといって変化がないときでも、贅沢をしていいんだよなと思った。

「毎日働いているから」「合否は分からないけれど、試験を受けたから」「気になるところへ話を聞きに行ったから」「失敗をしてしまったから」「気合を入れたいから」

ただ毎日働いて、勉強をして、家事をして。ドラマチックなことがなくても、私たちは頑張っているのだ。勇気を出していると思うのだ。

そんな日のほうが圧倒的に多いからこそ、いつもご褒美だと思っていることはもっともっとやってみてもいいのかもな。



「らしくないね」と言われた言葉を心の中で呟きながら、私は軽やかに焼肉店の扉を開けた。

大きなことは成し遂げていないし、まだまだやることはたっぷりと残っている。

でもそんなときに食べる焼肉もとても美味しかったし、不思議と「頑張ろう」とやる気が出た。ご褒美として食べるのもいいけれど、行きたいときにふらっと行ける「私」もいいな。

今年は「らしくない」にも積極的にチャレンジしてみよう。

最後まで読んでいただきありがとうございます!短編小説、エッセイを主に書いています。また遊びにきてください♪