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長編ミステリー「サパテアードの掟」 第一章
この世からいなくなった人と交わした約束を、あなたは守り通すことができますか……..
プロローグ
マドリード
マドリードの空はコバルト・ブルーに澄み渡っていた。
あと二週間もすればクリスマスだというのに、太陽が顔を出しているおかげでポカポカと暖かくて気持ちがいい。
マヨール広場を散歩している日本人の女は、カシミアのセーターにジーンズのパンツという軽装だった。彼女はスペ
長編小説 「天神橋ラサイカレー」 下巻
13
ランチタイムは客を待たせたが、春江と帆蘭でなんとか店を回すことができた。
仕込みは前日に、玉ねぎのペーストまでを大友がつくってくれていた。
暇な時間を繋いで、帆蘭は圧力鍋で肉のスープをつくり終えた。
明日の仕込みの最後に使う、「秘伝のエキス」はシビルしかつくれない。
突然、動揺が帆蘭の全身を襲った。嘘だろう!
慌てて冷蔵庫を開けた。手前の牛肉、豚肉、チキンを取り出
ユーモア推理小説 [ 追いつめられて ]
借金苦で生きていけなくなった老人から、自殺をほのめかす遺書のような手紙が届いた。
受け取ったスナックのママ亮子は、老人との関わりで金を貸してあり、さらに負債まで背負わされていた。
途方に暮れた亮子は、かつての恋人だった私を頼ってきた。断れない経緯があって、仕方なく請け負った私だが、心の底にはヨリを戻したいという下心も潜ませていた。
手紙の内容通り、老人は死んだ。しかし死者の諸々の言動
長編小説「天神橋ラサイカレー」 上巻
1
ホームレスが人情商店街と呼んだ天神橋筋は、日本一長い商店街としても有名で、大阪天満宮の門前町として栄えてきた。
全長2.6キロメートルある商店街には、飲食店、衣料品店、雑貨店、スーパーなどが軒を並べていて、その中ほどを北へ外れた場所にラサイカレーがある。店舗は十坪ほどで、カウンターテーブル12席だけの小さなカレー専門店だ。
小説【天神橋ラサイカレー】あらすじ
【天神橋ラサイカレー】 梗概
人情商店街と呼ばれる大阪天神橋筋にあるラサイカレーは、スリランカ人の店長が生み出した秘伝のエキスが日本人の味覚に受けて連日繁盛していた。
店長のシビルは元スリランカの軍隊で働いていたと胸を張っていたが、その任務が用務員だと知れると、途端にスタッフからの人望が薄くなり、またいい加減な性格も敬遠されていた。
店長をサポートして仕込みを担っているのは茶喇屋帆