茶喇屋帆蘭

小説を書いたり、作詞をしたり、パステル画を描いたり、ダイビングを楽しんだり、旅行に行っ…

茶喇屋帆蘭

小説を書いたり、作詞をしたり、パステル画を描いたり、ダイビングを楽しんだり、旅行に行ったり.....。 なんでもやってみるのが信条。 喜劇役者を志して上京し、いつの間にかヘアデザイナーとしてパリのステージに。 人生、どんでん返しがあるから素晴らしい! と人生を楽しんでいます。

最近の記事

ショートストーリィー「月の砂漠」

約束の時刻に7分遅れて到着した喫茶店では、 ポインセチアが並んだ窓際の席で彼女が待っていた。 真っ赤な葉を背景にして、ほとんど化粧をしない彼女の白い肌は、とても清楚に美しく映えている。 「ごめん、遅くなって」 「そんに息を弾ませて、大丈夫? 走ってこなくてもよかったのよ」 彼女の前のカップにはミルクティーがたっぷり残っていた。そんなところが彼女の優しさだった。 「その煙草は?」 彼女が煙草を手にしているのが不思議だった。 少なくともぼくが知っている1年6ヶ月間は、彼女の髪

    • ショートショート 「カレンダーの印」

      朝日がまばゆい部屋で、 ぼくは今年一年のスケジュールを考えた。 まずは連休を探して、旅行先を記してゆく。 それが終わると、大切な人の誕生日に印をつけるのだが、 サインペンが止まった。 どうしよう・・・・・・。 一昨年は印をしていたけれど、何もなく過ぎていった。 昨年は一応、印だけは付けていた。 そろそろ空白にしてしまうべきだった。 同じように、捨ててしまわなければならないものがあった。 ①聴かせたいCD3枚 ②読ませたい小説2冊 ③観てほしい映画1本 ④連れて

      • ショートショート 「クレオパトラの夢」

        たとえば・・・・・・、 その夜にぼくがカクテルを考案するとなると、 ジンをベースにして、バニラエッセンスとライムを混ぜて、 氷の小さなブロック3個を入れてシェイクする。 つまりジンの苦みに、バニラエッセンスの甘さとライムのすっぱさが漂う、オリジナル・カクテルだ。 ネーミングは、「メランコリー」 ぼくが別れた彼女を想い出すとき、 いつも彼女は嬉しそうな笑顔を浮かべている。 出会ったころは、本当に楽しい時間ばかりだった。 それから少しずつケンカをするようになり、 最後に

        • 長編ミステリー「サパテアードの掟」 第一章

          この世からいなくなった人と交わした約束を、あなたは守り通すことができますか……..      プロローグ       マドリード  マドリードの空はコバルト・ブルーに澄み渡っていた。  あと二週間もすればクリスマスだというのに、太陽が顔を出しているおかげでポカポカと暖かくて気持ちがいい。  マヨール広場を散歩している日本人の女は、カシミアのセーターにジーンズのパンツという軽装だった。彼女はスペインの風土にすっかり慣れきっている様子で、時計台のある建物の壁に描かれている、マ

        ショートストーリィー「月の砂漠」

          恋愛小説[夢のあとさき] 短編 ハートカクテル

            1  一定のリズムで進む壁時計の秒針が、期待と不安を混ぜた興奮を運んでくる。 強くなってゆく胸の鼓動を静めるように、ぼくは大きく深呼吸をした。  待っている時刻に、短針が一番早く到着し、続いて長針、せわしなく動いている秒針は一番遅れて、あと90秒でゴールインする。 正確にいえば、すべての針が同時にゴールインするわけだけど、いつも着順があるように思えた。部屋にはサリナ・ジョーンズの歌声が静かに流れている。 『ラバー・カムバック・

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          長編小説 「天神橋ラサイカレー」 下巻

                13  ランチタイムは客を待たせたが、春江と帆蘭でなんとか店を回すことができた。  仕込みは前日に、玉ねぎのペーストまでを大友がつくってくれていた。  暇な時間を繋いで、帆蘭は圧力鍋で肉のスープをつくり終えた。  明日の仕込みの最後に使う、「秘伝のエキス」はシビルしかつくれない。  突然、動揺が帆蘭の全身を襲った。嘘だろう!  慌てて冷蔵庫を開けた。手前の牛肉、豚肉、チキンを取り出して、エビを脇に寄せ、奥まで覗いた。  あった、野菜やチーズなどの食材の奥に、ボ

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          長編小説 「天神橋ラサイカレー」 下巻

          ユーモア推理小説 [ 追いつめられて ]

           借金苦で生きていけなくなった老人から、自殺をほのめかす遺書のような手紙が届いた。 受け取ったスナックのママ亮子は、老人との関わりで金を貸してあり、さらに負債まで背負わされていた。  途方に暮れた亮子は、かつての恋人だった私を頼ってきた。断れない経緯があって、仕方なく請け負った私だが、心の底にはヨリを戻したいという下心も潜ませていた。  手紙の内容通り、老人は死んだ。しかし死者の諸々の言動をよみがえらせたとき、私は疑問を抱いた。  真実と詐欺。 追い詰められた人びとの

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          ユーモア推理小説 [ 追いつめられて ]

          長編小説「天神橋ラサイカレー」 上巻

          1  ホームレスが人情商店街と呼んだ天神橋筋は、日本一長い商店街としても有名で、大阪天満宮の門前町として栄えてきた。  全長2.6キロメートルある商店街には、飲食店、衣料品店、雑貨店、スーパーなどが軒を並べていて、その中ほどを北へ外れた場所にラサイカレーがある。店舗は十坪ほどで、カウンターテーブル12席だけの小さなカレー専門店だ。  ランチタイムには待つ客の列ができる忙しさだが、午後2時を過ぎたあたりから徐々

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          長編小説「天神橋ラサイカレー」 上巻

          小説【天神橋ラサイカレー】あらすじ

          【天神橋ラサイカレー】 梗概  人情商店街と呼ばれる大阪天神橋筋にあるラサイカレーは、スリランカ人の店長が生み出した秘伝のエキスが日本人の味覚に受けて連日繁盛していた。  店長のシビルは元スリランカの軍隊で働いていたと胸を張っていたが、その任務が用務員だと知れると、途端にスタッフからの人望が薄くなり、またいい加減な性格も敬遠されていた。   店長をサポートして仕込みを担っているのは茶喇屋帆蘭二十四歳。海外を歩くのが趣味で、そのDNAを辿ると、先祖は琉球貿易が盛んなころ

          小説【天神橋ラサイカレー】あらすじ