時の旅人

気の赴くままに詩を書いたり、それを歌にのせたりしています。 芸術にはその本分に、まどか…

時の旅人

気の赴くままに詩を書いたり、それを歌にのせたりしています。 芸術にはその本分に、まどかなものを建設する治癒力があります。 そういう性質の詩も並べていけたら。

記事一覧

詩|夏の風

心が、いつまで僕として生きているのか、わからない きっと命よりも先に、薄らいでいく 僕であるうちに 見えて動けるうちに その力で 厳かな幸いの元を 生み出して増やし…

時の旅人
1か月前
3

日常

お互いに情の体当たり ぶつかり合うように けれど柔らかく 至近距離 直接に繋がる中で 足りないところを 微かな不安のように 感じ取っては埋め 楽しいところをもっと増やそ…

時の旅人
2か月前
2

詩|座

体が荒れていると その声で心も荒れる この場所にある静寂を 此の身に映し取ってみよ 近くにあるべき美がある  日差しがつくる影の模様が 白砂に描くのは 永久のもつ静…

時の旅人
2か月前
5

詩|夏の呼吸

夏には夏の呼吸があって それがなんとも心地良くて エアコンの風がなくてよかったなと思う この熱のある風が 鼻腔や、瞳や、ほほを撫でて 胸に尖っていたものがあれば、…

時の旅人
2か月前
8

詩|再会

すべてが陽のもの 菌を弾く皮膚のように すべての悪い趣向の運命を 招かずにいられる 身体の中に 綺麗な水と 綺麗な食べ物と 綺麗な思いで 招かれたものが 澄んだものが…

時の旅人
2か月前
1

モネの絵

モネは音を描いている 空気の遠近のなかにあるものを 僕らは感じていて それも描いている 潮騒の中の遠近も感じていて それも描いている 空気に光の礫が煌めいて その眩…

時の旅人
2か月前
3

詩|夜、寒の戻りの春

夜の川、街の明かり 岸辺の草花と、水の匂い 外の静寂に佇めば 内の静寂もかさを増す     大きな一塊りの 泰然として動かないもの 小さな静寂であっても 集まって形…

時の旅人
2か月前
2

詩|茶室

雑多な人や物の 気配から程よく隔絶をされ ただそこにいることが 密になる時間 明る過ぎず 暗過ぎず 正しいものへ 思いを巡らせることができる 水の音も 障子紙にうつっ…

時の旅人
2か月前
4

詩|猫の口

ほら、夜空にチェシャ猫が笑うよう 黄色くひかる口で ニンマリわらってる 楽しいね この世界は 苦労してる人々もいる たくさんの苦しみ けれど空には ニンマリ、黄色い口…

時の旅人
2か月前
6

詩|伸縮する命

命は平面ではない 命は縦横無尽だ  空間に満ちる いのちを平面に集めるな 広い視野 音でも光でも触覚でも 広い角度が見えること それすなわち 広い角度が見える心を 生…

時の旅人
2か月前
3

詩|ある対話

大きなひとと会った 身長は180センチくらい 体重は100キロは超えそうだ でもどこか、角ばって不安定な存在感 繕ってなにかを守っている これで何度目かの、同じような人…

時の旅人
2か月前
7

詩|川と太鼓

木々の情緒 冬枯れの木でさえも それを心に写し取るとき 僕を前より、少しだけ優しくする 川の上空を、隊列を乱しながら鳥が舞う 川向こうから太鼓の音がする 冷たい風が…

時の旅人
2か月前
5

詩|語られるもの

ただ通り過ぎようとした橋の上で 濃密な水の香りがした 天然の一片でありたいという思いが じわじわと生まれた 水の滴が作り出す無数の音も 水辺の鼻にまとわりつく匂い…

時の旅人
2か月前
9

詩|無風

ヤジロベーみたいに 全体が微妙な調和の上に 小さな点の上に乗っている 静かに目を瞑って 小さな息をしている 力で留まるわけでなく けれど上手に調和している 数多くの…

時の旅人
2か月前
6

詩|残香

秋の入り口 暮れ始める頃  夏の最後の陽気が作り出す 植物たちの濃い香りに包まれる 一瞬の偶然 美味しい空気のなかに 子供の昔から知っている 1番健康な情が、遊び始…

時の旅人
2か月前
12

詩|木陰

木陰にひととき 佇んでいると 思いが整い 精緻に、流れ始める 美味しいものに 腹が安らげば 想いが整い 流れ出す。 肌や肺に触れる空気が 直接に、あるいは 血と筋肉の調…

時の旅人
2か月前
10
詩|夏の風

詩|夏の風

心が、いつまで僕として生きているのか、わからない
きっと命よりも先に、薄らいでいく
僕であるうちに
見えて動けるうちに
その力で 厳かな幸いの元を
生み出して増やしていく
いつか、終わりが来る前に

所詮、一人で生きるもの
その果も、依るべも、己の中に

描きたいのは
当たり前の、そよぐ風のような優しさ

厳かな、それでいて飾らない強さ
誰かの後日の澄んだ心の種

岩に風が吹いて 
半ば染み入り 

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日常

日常

お互いに情の体当たり
ぶつかり合うように
けれど柔らかく
至近距離
直接に繋がる中で
足りないところを
微かな不安のように
感じ取っては埋め
楽しいところをもっと増やそうと、
あれこれ
(言葉よりも大きな理性で)
考えている

揺れ動き不安定に形を変える
言葉の前のなにかのかたまりが
互い良いほうへ赴くように
なにかを酌み交わし
笑い合う

詩|座

詩|座

体が荒れていると
その声で心も荒れる

この場所にある静寂を
此の身に映し取ってみよ

近くにあるべき美がある 
日差しがつくる影の模様が
白砂に描くのは
永久のもつ静寂の影 

真を寸分違わぬ
さわやかで
厳かな
優しいものの影

ただ調える力に満ちた
力あるものの姿

降り注ぐ日差しの筋の中に
この空気の分子のきらめきの中に

遥かなときの音が響き、
目の前の空気の中に今が増える。
こんなにも

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詩|夏の呼吸

詩|夏の呼吸

夏には夏の呼吸があって
それがなんとも心地良くて

エアコンの風がなくてよかったなと思う

この熱のある風が
鼻腔や、瞳や、ほほを撫でて

胸に尖っていたものがあれば、平らにし
肩肘はらぬ力を置いてゆく

それは、とても嬉しい力

すべての一瞬の中に
緑や花の、異なる香りが混ざり合い

そのたび、心に新鮮な命が宿る
そうして、また、快活なまなこが開く

夏の風が、あたりを流れて
木影は揺れながら、

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詩|再会

詩|再会

すべてが陽のもの
菌を弾く皮膚のように
すべての悪い趣向の運命を
招かずにいられる

身体の中に

綺麗な水と
綺麗な食べ物と
綺麗な思いで

招かれたものが
澄んだものが
遊んでいる

そのままでいてほしい
たとえこの先に
交わる人々のなかに

澄んでいない思いと
澄んでいない身体と
それによる歪な定めを
持つ人がいても

きみは
その,綺麗なものをもっていろ
カタチもなく
誰も誉めず
金にもな

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モネの絵

モネの絵

モネは音を描いている

空気の遠近のなかにあるものを
僕らは感じていて
それも描いている

潮騒の中の遠近も感じていて
それも描いている

空気に光の礫が煌めいて
その眩しさも描いている

それが当たり前すぎたころは気づかなかったが
その贈りものを知った今は
彼の見て描いたものが見える

光も熱も音も印象にうつる

その印象をかけば写真ではないが
写真よりも写実である

そんな作品だと
絵を見上げ

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詩|夜、寒の戻りの春

詩|夜、寒の戻りの春

夜の川、街の明かり
岸辺の草花と、水の匂い

外の静寂に佇めば
内の静寂もかさを増す    

大きな一塊りの
泰然として動かないもの

小さな静寂であっても
集まって形になるものは
既に動じず安心できるこころの
模写なのだ

静かな夜の川がゆく
何を得ているともわからず
とくに詩も生まれない

諦めて引きかえす帰りみち
バスが轟音を運んで
静寂を破る

同時に、描かれつつあった
広くて大きな領域

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詩|茶室

詩|茶室

雑多な人や物の
気配から程よく隔絶をされ
ただそこにいることが
密になる時間

明る過ぎず
暗過ぎず

正しいものへ
思いを巡らせることができる

水の音も
障子紙にうつって、揺れる葉の影も
尖ったものを除いて

身体の中の、正しい明るさを
明る過ぎず
じめっともせず
ただ休息の中に強いような

趣味のいい力を
本当の善に近い力を

既にそこにあることで
招き込むように
人を染める

影の間をうめ

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詩|猫の口

詩|猫の口

ほら、夜空にチェシャ猫が笑うよう
黄色くひかる口で
ニンマリわらってる

楽しいね この世界は
苦労してる人々もいる
たくさんの苦しみ
けれど空には
ニンマリ、黄色い口

一歩、下がって見てみたら
意外に、清々しいんじゃない?

あんなふうに
世界を笑えるんじゃない?

正しさなんか
義務なんか

せまくるしいね
世界はもっと広くて
いろもゆたかで

そんな見落とした数々を

楽しんでご覧よ
あの

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詩|伸縮する命

詩|伸縮する命

命は平面ではない
命は縦横無尽だ 
空間に満ちる
いのちを平面に集めるな

広い視野
音でも光でも触覚でも
広い角度が見えること

それすなわち
広い角度が見える心を
生きていること

ある母親が
3歳くらいの子供に
携帯を見せている
電車のなかで

詩|ある対話

詩|ある対話

大きなひとと会った
身長は180センチくらい
体重は100キロは超えそうだ

でもどこか、角ばって不安定な存在感
繕ってなにかを守っている

これで何度目かの、同じような人種との出会い

あなたは、日本のことが知りたいのだろう?

ある満たされた、西洋にない、
孤独と隔絶した、ある理性をしりたいのだろう

西から来たあなたに、どう伝えればよいか、
考えているところだ

あなたは、どんな人だろう。

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詩|川と太鼓

詩|川と太鼓

木々の情緒
冬枯れの木でさえも

それを心に写し取るとき
僕を前より、少しだけ優しくする

川の上空を、隊列を乱しながら鳥が舞う
川向こうから太鼓の音がする
冷たい風が川面に踊り

この曇天すらも
僕の精神を健やかに変える

人の心は自然と対峙する中で
あるべき美しい形を
見いだせる

心の在処を知っていますか
出来上がったものではなくて
生まれてくる因果を知っていますか

なんでもない石の手触り

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詩|語られるもの

詩|語られるもの

ただ通り過ぎようとした橋の上で
濃密な水の香りがした

天然の一片でありたいという思いが
じわじわと生まれた

水の滴が作り出す無数の音も
水辺の鼻にまとわりつく匂いも
ぼくの薄劣な平坦さを嗤っている

けれども川の中の詩人の声が
つぶさに聞こえるほどには
そのお喋りは近くもなく

駅へ向かう橋の上をただ通り過ぎた

聞こうとするときに
話してくれるとは限らない

ただ唐突に その声に
ふと気がつ

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詩|無風

詩|無風

ヤジロベーみたいに
全体が微妙な調和の上に
小さな点の上に乗っている

静かに目を瞑って
小さな息をしている

力で留まるわけでなく
けれど上手に調和している

数多くのキセキが集まって   
ここに結晶したのだろう

愛をくれた人の形   
命の新しい純な勢い

そして何をも破らぬ
ハリのある静寂の力

少しずつ深く眠りに落ちて
風も吹かぬような静けさを纏い
君は眠りの世界へ赴いていく

全ての

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詩|残香

詩|残香

秋の入り口
暮れ始める頃 

夏の最後の陽気が作り出す
植物たちの濃い香りに包まれる

一瞬の偶然

美味しい空気のなかに
子供の昔から知っている
1番健康な情が、遊び始める

言葉で表そうと
向きあった瞬間に

味の大半が
居場所を失くす
だから言葉は選ばない

丸ごと味わえば、言葉も溢れる

選ばれた言葉ではなく
全体の上に貼られた
ラベルのように

記号の本質は
いつでも、その後ろの
表も内

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詩|木陰

詩|木陰

木陰にひととき
佇んでいると
思いが整い
精緻に、流れ始める

美味しいものに
腹が安らげば
想いが整い
流れ出す。

肌や肺に触れる空気が
直接に、あるいは
血と筋肉の調子を変えて
空気の味として知らされる。

互い思いを交わすうち
賦活をされて整って
人知れぬ水面下に
総身が変わる

体を動かせば
円滑油のように
命を照らす甘露が
内腑から思いを染め

風の音や
日や星や
水や土のような
もっ

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