時の旅人

気の赴くままに詩を書いたり、それを歌にのせたりしています。 芸術にはその本分に、まどか…

時の旅人

気の赴くままに詩を書いたり、それを歌にのせたりしています。 芸術にはその本分に、まどかなものを建設する治癒力があります。 そういう性質の詩も並べていけたら。

記事一覧

子どもの身体

抱きあげてみると 溢れんばかりの勢いで はち切れんばかりに それでも同時に緩やかに たくさんのものが流れている 身体のなかに 綺麗な水が揺蕩う 命を進める泉のような …

時の旅人
5時間前
1

詩|ある思い

己で持っていながら、 己だけでは持っていないもの 天然に満ちるものに養われて 蔓延った心の荒廃に抗え 体にとって食べ物と空気があるように 心にとっても日常に、天然…

時の旅人
2日前
5

詩|太陽の皮膚

太陽の熱は 体に入り 太陽の熱として それと分かる形で 体をめぐる なにか 物質的にも思想的にも 違うものを呼び込む質が 巡り始める そんな基本的なことを忘れたまま 太…

時の旅人
3日前
4

詩|雷光

本の向こう 窓に打つ雨が この狭い世界の 質量を増やす             不意に雷が光って 遊ぶような心で 単調さを破る 護られた静寂を 切り裂きながら この緑…

時の旅人
4日前
3

詩|龍神の雨

1 降りゆく雨の中 ぽつり ぴったん 2 岩肌 伝わって 苔の上に      3 静かに 流れて 雫 おち      4 霧に 紛れて 吐息       5 今も 時にすが…

時の旅人
5日前
2

詩|漫画

世界の重さに疲れたら 世界の軽さも心地よい 浮かんだ灰汁を取り去って 美味しさだけを残したように 漫画の世界に入りこみ 隅の方まで見回してみても ほんとの世界よりも…

時の旅人
6日前
2

詩|秋空

なぞなぞを出そう これなーんだ? 親がするように みなを抱き みなが依るべとする 大きなかいな ずっと前から 変わらずに   隣にあって 寄り添うように 不断の情を 乳…

時の旅人
7日前
6

詩|味と人

味の深みには 人の深みの宿りがある 五味、辛味、渋味 風味、器の模様、場の気配 作り手の心情、ともに食べる人の心 掴んだときの触感や、かぶりついた動作 すべてを含ん…

時の旅人
8日前
2

詩|信

時々、耳にするんだ 僕に打ち明けるように 誰かが同じことを言う    人を信じられないと           望んだものは 外にはないさ 言葉なら、いつまでも外さ …

時の旅人
8日前
5

詩|雨滴

暗い夜空の中で 雨滴が互いに 呼び合うように 冷たく かつ清冽に 響き合っているのを知っている 大地の中に 温かいものが 果てなく続いているのを知っている この水気…

時の旅人
10日前
6

詩|鳥居

ひろい広場の奥に ひとつの鳥居がある 静寂の風景のなかに 澄んだこころの種がある 幾千の葉の絨毯と 梢の騒めく無数の音が 幾千のこころを刻みつける 本当が目の前に現…

時の旅人
11日前
4

詩|絵描き

相手の中に 相手を描く 己の中に 己を描く 互いを筆のようにして 互いの中に描かれる 己の筆と 相手の筆と それが重なり絵を描く たくさん描けば 絵が上手くなる 絵が…

時の旅人
11日前
5

詩|桜吹雪

坂を上がれば 大きな桜と花吹雪 茶碗が見せるものが 親しさの美なら  花が見せるものは 清浄さの美  余分なものをつけず けれども色香りに満ちて ひとのうちに 栄養…

時の旅人
11日前
3

詩|瞳のあわい

2つの瞳が話しかける歌 2つの仁愛の間に生まれるもの ぼくの命、僕たちの命が 目には見えない領域を形作る 瞳と言葉から滲み出るように 互いを浸して行き交うもの  (身…

時の旅人
12日前
4

詩|秋空の月

夜空に浮かぶ 真っ白な満月 寂静で限りなく平静なもの 空虚なくらいに 雑多な活動を停止した空 けれども空虚とは対極にある 暖かな優しさに満ちている虚空 今宵九月の月…

時の旅人
12日前
5

詩|見えないもの

ただ黙して 座して向かい 同じであれば良い 布が水の色に染まるように 人も目前にあるものに染まる 言葉は歪に意味を切り取り 真理の幅を殺す 順逆も全て包括して それで…

時の旅人
12日前
2
子どもの身体

子どもの身体

抱きあげてみると
溢れんばかりの勢いで
はち切れんばかりに
それでも同時に緩やかに
たくさんのものが流れている

身体のなかに
綺麗な水が揺蕩う
命を進める泉のような
暖かく有機的なもの

心と身体の姿から湧き出す 
心身をひたす水がある
それは誰知らぬ間に
自他の道を正しく変えて
留まるように守るもの

小さな身体の内側に
大きな命の幸いを見る

その水そのものには
まだ道徳観念的な是非もないが

もっとみる
詩|ある思い

詩|ある思い

己で持っていながら、
己だけでは持っていないもの

天然に満ちるものに養われて
蔓延った心の荒廃に抗え

体にとって食べ物と空気があるように
心にとっても日常に、天然の美がある事は
それが正しくあり続ける上で必要なのだ

何とれば、真の枯れた心など
味わうに足らぬ干物となるゆえ
道徳の全てを記述できぬように
心のすべては記述できぬ
真の口に語らせぬ限りは

詩|太陽の皮膚

詩|太陽の皮膚

太陽の熱は
体に入り
太陽の熱として
それと分かる形で
体をめぐる

なにか
物質的にも思想的にも
違うものを呼び込む質が
巡り始める

そんな基本的なことを忘れたまま
太陽の気配を纏いもせずに
文明を謳歌する人々は

ますますスクリーンのまえに蹲り
太陽のギフトを遠ざけて病む

詩|雷光

詩|雷光

本の向こう
窓に打つ雨が
この狭い世界の
質量を増やす            

不意に雷が光って
遊ぶような心で
単調さを破る

護られた静寂を
切り裂きながら

この緑に囲まれた
静かな空間を乱さずに
一瞬を流れる遊びを増やす

自然の一挙手一投足は
ただそれ自体に味があり
ただそれだけで意味を持つ

例えば誰かが
もし深遠な哲学を
この雷鳴と雨の中に探すなら
どんな文字よりも沢山の
本当の静

もっとみる
詩|龍神の雨

詩|龍神の雨

1 降りゆく雨の中 ぽつり ぴったん
2 岩肌 伝わって 苔の上に     

3 静かに 流れて 雫 おち     
4 霧に 紛れて 吐息      

5 今も 時にすがた重ね
 身をひたし 現れては  

6 古ゆく 世界を 纏い

7 その心 の 糧とする  

8 降りしく 雨の中 息をして 

9 立ち込む 霧の中 瞳もち 

10飛沫をあげながら 途切れずに
 流れながら 現れる 

もっとみる
詩|漫画

詩|漫画

世界の重さに疲れたら
世界の軽さも心地よい

浮かんだ灰汁を取り去って
美味しさだけを残したように

漫画の世界に入りこみ
隅の方まで見回してみても
ほんとの世界よりも軽い

線の間はただ白くて、
新しい発見はなにもない。

世界の重さが軽いから
そっと一人で息抜きできる

世界の重さが軽いから
本当の癒しになることもない

下を通る人に、
葉の裏側から見上げれば
透き通った緑色を見せてくれる

もっとみる
詩|秋空

詩|秋空

なぞなぞを出そう
これなーんだ?

親がするように
みなを抱き
みなが依るべとする
大きなかいな

ずっと前から
変わらずに  
隣にあって
寄り添うように

不断の情を
乳飲子たちへ

求めのままに
注ぐように

穏やかな
幸いを
注ぐもの 

目を向ければ
いつも、必ず
見守っているもの

凸凹しがちな
人格なんか

遠く離れて
世界の片隅で

誰のことをも区別せず
美しい色に染めて

気高さ

もっとみる
詩|味と人

詩|味と人

味の深みには
人の深みの宿りがある

五味、辛味、渋味
風味、器の模様、場の気配
作り手の心情、ともに食べる人の心
掴んだときの触感や、かぶりついた動作
すべてを含んで食が生まれる

だから、皿を軽んぜず、
素材を軽んぜず
誰かの気持ちに至るまで
腹を膨らませないなにかも一緒に
豊かな厚みをいただく

そうすると、味が一つ変わる
モノクロの栄養素から、人間の食事になる。

草木の造形の深みに、

もっとみる
詩|信

詩|信

時々、耳にするんだ
僕に打ち明けるように
誰かが同じことを言う   
人を信じられないと          

望んだものは
外にはないさ

言葉なら、いつまでも外さ

たくさん遊んできた 子どもの    
瞳のなかにみる信頼を             

やりたいことに打ちこんだ             
その人の目の奥の安心を

たくさん渡した、その愛の数        
反射して、見えたひか

もっとみる
詩|雨滴

詩|雨滴

暗い夜空の中で

雨滴が互いに
呼び合うように

冷たく
かつ清冽に
響き合っているのを知っている

大地の中に
温かいものが
果てなく続いているのを知っている

この水気の多い風のなかに
人の気持ちの隅々まで埋める
無数の種があることを知っている

文字の知識が届かない
世界があるのを知っている

外遊びする子どもらを
生滅と守護の司とする場所が
世界の小さな隙間のような
眼前のものの間に

もっとみる
詩|鳥居

詩|鳥居

ひろい広場の奥に
ひとつの鳥居がある

静寂の風景のなかに
澄んだこころの種がある

幾千の葉の絨毯と
梢の騒めく無数の音が
幾千のこころを刻みつける

本当が目の前に現れる

その本当のすべてを
留めておくことはできないが

なんども、繰り返し 味わえば
きっとかけらが 残るだろう

詩|絵描き

詩|絵描き

相手の中に
相手を描く

己の中に
己を描く

互いを筆のようにして
互いの中に描かれる

己の筆と
相手の筆と
それが重なり絵を描く

たくさん描けば
絵が上手くなる

絵が上手くなれば
幸いを知る

絵のあることも
絵を描くことも

陽光の柔らかさと同じように
己に柔らかさを残し

ついに流れ出して
誰かを丸くする

丸さは静寂を留め
時に応じて強さに変わり
尽きぬ色彩を増やし
それを続けられ

もっとみる
詩|桜吹雪

詩|桜吹雪

坂を上がれば
大きな桜と花吹雪

茶碗が見せるものが
親しさの美なら 

花が見せるものは
清浄さの美 

余分なものをつけず
けれども色香りに満ちて

ひとのうちに
栄養をつけ 
正しいことを
言葉のそとから
悟らせる

その笑顔で
その声で
そのまなこで 

今日出会うひとに
幸いを贈れ

詩|瞳のあわい

詩|瞳のあわい

2つの瞳が話しかける歌
2つの仁愛の間に生まれるもの

ぼくの命、僕たちの命が
目には見えない領域を形作る

瞳と言葉から滲み出るように
互いを浸して行き交うもの
 (身体の内から放たれる、
  目に映りそうな熱を通して)

麻痺するように眠った大人を目覚めさせ
子供たちの心の火を燃え上がらせて、
日々の笑顔の後ろに、守り手となるもの

見る力を、ものの中心にまで導き
問いかけの答えを、耳元に囁く

もっとみる
詩|秋空の月

詩|秋空の月

夜空に浮かぶ
真っ白な満月

寂静で限りなく平静なもの
空虚なくらいに
雑多な活動を停止した空
けれども空虚とは対極にある
暖かな優しさに満ちている虚空

今宵九月の月は
いつもより静かに
塵芥や騒音の鎖から脱して
綺麗で冷たい澄んだ光を届けてくれる

月の周りを流れ去るうす雲が
あの空間にある理性の色を
より深めていく

秋の始まり
静かな鈴虫の声
そらには何にも揺るがない
泰然とした天のかたち

もっとみる
詩|見えないもの

詩|見えないもの

ただ黙して
座して向かい
同じであれば良い

布が水の色に染まるように
人も目前にあるものに染まる

言葉は歪に意味を切り取り
真理の幅を殺す
順逆も全て包括して
それでも湖面の如く静かに
ただ目前の描くものと一つになれば
時の声が実り
知の力が太り
心は最奥に帰す

その門を潜り抜けて
再び生活に戻れば
善は美を備え
平常の味を知る