時の旅人

気の赴くままに詩を書いたり、それを歌にのせたりしています。 芸術にはその本分に、まどか…

時の旅人

気の赴くままに詩を書いたり、それを歌にのせたりしています。 芸術にはその本分に、まどかなものを建設する治癒力があります。 そういう性質の詩も並べていけたら。

最近の記事

詩|太陽の皮膚

太陽の熱は 体に入り 太陽の熱として それと分かる形で 体をめぐる なにか 物質的にも思想的にも 違うものを呼び込む質が 巡り始める そんな基本的なことを忘れたまま 太陽の気配を纏いもせずに 文明を謳歌する人々は ますますスクリーンのまえに蹲り 太陽のギフトを遠ざけて病む

    • 詩|雷光

      本の向こう 窓に打つ雨が この狭い世界の 質量を増やす             不意に雷が光って 遊ぶような心で 単調さを破る 護られた静寂を 切り裂きながら この緑に囲まれた 静かな空間を乱さずに 一瞬を流れる遊びを増やす 自然の一挙手一投足は ただそれ自体に味があり ただそれだけで意味を持つ 例えば誰かが もし深遠な哲学を この雷鳴と雨の中に探すなら どんな文字よりも沢山の 本当の静寂と幸いを ただそのままに見るだろう 誰かがもしも芸術を この雨の中に探すなら

      • 詩|龍神の雨

        1 降りゆく雨の中 ぽつり ぴったん 2 岩肌 伝わって 苔の上に      3 静かに 流れて 雫 おち      4 霧に 紛れて 吐息       5 今も 時にすがた重ね  身をひたし 現れては   6 古ゆく 世界を 纏い 7 その心 の 糧とする   8 降りしく 雨の中 息をして  9 立ち込む 霧の中 瞳もち  10飛沫をあげながら 途切れずに  流れながら 現れる         11 今 水の中に 思い 清く満ちて  12 また 13

        • 詩|漫画

          世界の重さに疲れたら 世界の軽さも心地よい 浮かんだ灰汁を取り去って 美味しさだけを残したように 漫画の世界に入りこみ 隅の方まで見回してみても ほんとの世界よりも軽い 線の間はただ白くて、 新しい発見はなにもない。 世界の重さが軽いから そっと一人で息抜きできる 世界の重さが軽いから 本当の癒しになることもない 下を通る人に、 葉の裏側から見上げれば 透き通った緑色を見せてくれる 夏の紅葉 吹き出しも何も ついていないけど ずっと静かに あいだの隅々に 豊か

        詩|太陽の皮膚

          詩|秋空

          なぞなぞを出そう これなーんだ? 親がするように みなを抱き みなが依るべとする 大きなかいな ずっと前から 変わらずに   隣にあって 寄り添うように 不断の情を 乳飲子たちへ 求めのままに 注ぐように 穏やかな 幸いを 注ぐもの  目を向ければ いつも、必ず 見守っているもの 凸凹しがちな 人格なんか 遠く離れて 世界の片隅で 誰のことをも区別せず 美しい色に染めて 気高さの輪郭を 描いてる 柔らかに 大きく 心の形を  胸の中へ贈る それが い

          詩|秋空

          詩|味と人

          味の深みには 人の深みの宿りがある 五味、辛味、渋味 風味、器の模様、場の気配 作り手の心情、ともに食べる人の心 掴んだときの触感や、かぶりついた動作 すべてを含んで食が生まれる だから、皿を軽んぜず、 素材を軽んぜず 誰かの気持ちに至るまで 腹を膨らませないなにかも一緒に 豊かな厚みをいただく そうすると、味が一つ変わる モノクロの栄養素から、人間の食事になる。 草木の造形の深みに、 心のなにかが揺り起こされて、その上に遊んでいくように 味の広がりや、深みの上に、

          詩|味と人

          詩|信

          時々、耳にするんだ 僕に打ち明けるように 誰かが同じことを言う    人を信じられないと           望んだものは 外にはないさ 言葉なら、いつまでも外さ たくさん遊んできた 子どもの     瞳のなかにみる信頼を              やりたいことに打ち込んだ              その人の目の奥の安心を たくさん渡した、その愛の数         反射して、見えたひかりの数          はじまりは、いつも、ここ 信じたいのなら      

          詩|雨滴

          暗い夜空の中で 雨滴が互いに 呼び合うように 冷たく かつ清冽に 響き合っているのを知っている 大地の中に 温かいものが 果てなく続いているのを知っている この水気の多い風のなかに 人の気持ちの隅々まで埋める 無数の種があることを知っている 文字の知識が届かない 世界があるのを知っている 外遊びする子どもらを 生滅と守護の司とする場所が 世界の小さな隙間のような 眼前のものの間に 鮮明になる  

          詩|雨滴

          詩|鳥居

          ひろい広場の奥に ひとつの鳥居がある 静寂の風景のなかに 澄んだこころの種がある 幾千の葉の絨毯と 梢の騒めく無数の音が 幾千のこころを刻みつける 本当が目の前に現れる その本当のすべてを 留めておくことはできないが なんども、繰り返し 味わえば きっとかけらが 残るだろう

          詩|鳥居

          詩|絵描き

          相手の中に 相手を描く 己の中に 己を描く 互いを筆のようにして 互いの中に描かれる 己の筆と 相手の筆と それが重なり絵を描く たくさん描けば 絵が上手くなる 絵が上手くなれば 幸いを知る 絵のあることも 絵を描くことも 陽光の柔らかさと同じように 己に柔らかさを残し ついに流れ出して 誰かを丸くする 丸さは静寂を留め 時に応じて強さに変わり 尽きぬ色彩を増やし それを続けられるなら… 確かな知へ変わる ただ1人 あるいは数人 そうして交わるなら 理想郷

          詩|絵描き

          詩|桜吹雪

          坂を上がれば 大きな桜と花吹雪 茶碗が見せるものが 親しさの美なら  花が見せるものは 清浄さの美  余分なものをつけず けれども色香りに満ちて ひとのうちに 栄養をつけ  正しいことを 言葉のそとから 悟らせる その笑顔で その声で そのまなこで  今日出会うひとに 幸いを贈れ

          詩|桜吹雪

          詩|瞳のあわい

          2つの瞳が話しかける歌 2つの仁愛の間に生まれるもの ぼくの命、僕たちの命が 目には見えない領域を形作る 瞳と言葉から滲み出るように 互いを浸して行き交うもの  (身体の内から放たれる、   目に映りそうな熱を通して) 麻痺するように眠った大人を目覚めさせ 子供たちの心の火を燃え上がらせて、 日々の笑顔の後ろに、守り手となるもの 見る力を、ものの中心にまで導き 問いかけの答えを、耳元に囁くもの 昔でもなく、未来でもない 新鮮な時のあわいにこそ 咲いている花がある

          詩|瞳のあわい

          詩|秋空の月

          夜空に浮かぶ 真っ白な満月 寂静で限りなく平静なもの 空虚なくらいに 雑多な活動を停止した空 けれども空虚とは対極にある 暖かな優しさに満ちている虚空 今宵九月の月は いつもより静かに 塵芥や騒音の鎖から脱して 綺麗で冷たい澄んだ光を届けてくれる 月の周りを流れ去るうす雲が あの空間にある理性の色を より深めていく 秋の始まり 静かな鈴虫の声 そらには何にも揺るがない 泰然とした天のかたち そのあいだを埋める 涼やかな 理性の不純物を廃する力のような 清々しく広々と

          詩|秋空の月

          詩|見えないもの

          ただ黙して 座して向かい 同じであれば良い 布が水の色に染まるように 人も目前にあるものに染まる 言葉は歪に意味を切り取り 真理の幅を殺す 順逆も全て包括して それでも湖面の如く静かに ただ目前の描くものと一つになれば 時の声が実り 知の力が太り 心は最奥に帰す その門を潜り抜けて 再び生活に戻れば 善は美を備え 平常の味を知る

          詩|見えないもの

          詩|橋の上で

          石橋を渡れば 曲がった清流に 日射しが照り輝いて 重なり合う木々は その全てを見せず 粋を心得ている すれ違うひとが なにかいますか?と聞く なにもいないけど見ていますと応える また別のひとが、車で通りがかり 窓をあけて、たくさん生きものがいますか?と聞く。 きっと、いっぱいいるんでしょうねと、返す。 たいていの人は なにかがそこにいないと、橋をのぞかない こんなにも 綺麗なものが散らばっているのに ダイヤモンドの山ならば かならず目をやるだろうに もっと綺麗なものを見

          詩|橋の上で

          詩|子どもたち

          愛することにさえ 理由のいるこの世界で 子どもの君たちは 手を差し伸べることを 許してくれる 関係性を区別して 説明できるものだけを残して だんだん繋ぐ手を減らしていく大人の間で 僕は、また少し柔らかい心を向けていられる ありがとう いつも、楽しげな笑い声を聞かせてくれて 伸び縮みのする、感情の形を見せてくれて 思いの全身で、僕と出会ってくれて お互いに元気が増えるな 宝石よりもずっと複雑で ロケットでたどり着けないほど高くて 体の暖かさのようなものだけが その価値を説明

          詩|子どもたち