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教会の問題

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キリスト教会はとても居心地のよいところです。でも、満点を期待してはいけないでしょう。たくさんの問題を抱えています。とくに内側にいると見えないものを、なんとか見ようとするひねた者が…
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#キリスト教

『信じる者は破壊せよ』(キャスリーン・ニクシー;松宮克昌訳・みすず書房)

『信じる者は破壊せよ』(キャスリーン・ニクシー;松宮克昌訳・みすず書房)

これはキリスト教全体に関わるような批判の書である。キリスト教が、ギリシアやローマの文化をいかに破壊したかを示す。
 
もちろん、ローマ帝国の許で、キリスト教は不遇な扱いを受け続けてきた。だが、ローマ帝国自体の弱体化もあり、その他多くの事情が重なって、ついに帝国公認の宗教となる。つまり、権力者がこの宗教をメインに扱うようになったのだ。
 
権力を有するようになったキリスト教会が破壊をした――のかどう

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リスボン地震に思う

リスボン地震に思う

万聖節。ご存じない方も、その謂われなどについては、ウェブサイトに良い説明が多々あるのでご覧くだされば幸いである。西洋のお盆のようなイメージで想像して戴いてもよいだろう。キリスト教が聖書から考えたお祭りであるようには思えないが、その前夜がいわゆるハロウィーンであり、日本でも近年有名になった。
 
1755年11月1日の朝、当時世界最高の都市の一つであったポルトガルの首都リスボンは、この万聖節で、賑わ

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耳ざわりのよい言葉

耳ざわりのよい言葉

耳ざわりのよい言葉について考えてみる。
 
などと言うと、クレームの嵐が襲ってきそうである。「流れに棹さす」とか「気の置けない」とか、正反対の意味に勘違いして使われる言葉が、毎年言葉の調査で報道されるが、「耳ざわり」もその部類であるかもしれない。推測するに「耳触り」だと思い込んでの誤用であり、「耳障り」という意味を思いつかない人たちの使い方ではないか、という気がするが、的を外しているかもしれない。

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聞くに堪えない

聞くに堪えない

隠退(引退)牧師たる加藤常昭氏へのインタビューが、NHKラジオR2で2週にわたって放送された。私の場合は録音させてもらったが、6月半ばまで、ウェブサイトで聞くことができるので、関心をもたれた方は、直接アクセスできる。加藤氏は哲学を学んだ方でもあり、その話は、明快で、筋が通っている。評価はいろいろあるかもしれないが、今日の日本の教会の説教に多大な影響を与えた人の声を、一度受け止めるとよろしいかと思う

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仏教の魅力

仏教の魅力

「お説教」という言葉がどこからどのように発生したのか知らない。「お」は多分、意味を低く下げるときの一種の揶揄として(「坊ちゃま」より「お坊ちゃま」のほうが悪いニュアンスになる)付けられたのではないかと推測するが、別に「説経」とも書くところをみると、仏教の伝統の中での用語ではないかと思われる。意味は、仏の教えを説くということのはずである。
 
近ごろ、僧侶が震災のときに人々を苦労して助け、慕われた場

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『世界 説教・説教学事典』

『世界 説教・説教学事典』

(W.H.ウィリモンとR.リシャー編・加藤常昭と深田未来生日本語版監修・加藤常昭責任監訳・日本基督教団出版局・¥15500+税・1999年2月発行)
 
もちろん中古で購入。しかしこれのどこが、中古本の評価で「良い」程度なのであろうか。良すぎるのである。中身は新品同然である。よく見ると、函の一部が少しだけめくれている。だがそれが何であろう。価格は、元の数分の一であった。
 
以前の教会の棚にあるの

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知らない言葉

知らない言葉

小中学生から若さを吸い取るようにして生きている者である。知らないことを教えるのが仕事なので、知識の面で知らないことを悪く言うつもりはない。だが、ただ知らないというだけではなく、関心がないようなふうであってよいのか、と疑問に思う方面のことは、少し挙げてみようかと思う。それは、かつての子どもたちは生活の中で知っていたと思われるからである。生活の、あるいは人生の、何が変わろうとしているのか。
 
まず、

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結婚が決まったというニュース

結婚が決まったというニュース

秋篠宮家長女の結婚発表は、決して小さなニュースではない。だが、いつも饒舌なキリスト教の有力者たちから、これについての話題が出てこないように見受けられる。ふだんであれば、こうした大きな話題には、一言居士としてきっと口を出す人々も、沈黙しているように見える。何故なのか。
 
天皇家について反対的な意見をもっている教派やグループも多々あることを知っている。ここは口を出すべきではないのか。そう言えば普段か

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医療崩壊の責任は私にもある

医療崩壊の責任は私にもある

新型コロナウイルスは世界を大きく変えた。その中で、日本政府はどういうことをしてきたか。対応は、ベストではなかったかもしれない。あのマスクのように、なんだったのだと思うようなものもある。だが、トータルに見て、善処しているのではないか。補助金も各方面に出している。ワクチン接種については、安全性を確認する期間をもって、国民に提供している。もちろん、ワクチンで解決する問題ではないのだが、最低限なすべきこと

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大切なひとのために

大切なひとのために

LGBTQという表現でよいのかどうか分からないが、国会議員のひとりが、生物学的な視点を持ちだして、一方的に非難する見解を公表したことが、物議を醸した。もとよりひとが思想をもつことについて考えるなと圧することはできないが、議員という立場で人権を愚弄することは、法的な問題にはなって然るべきだろう。しかし、この人が悲しい人間だという見解を私は持たざるをえないし、何よりもそれは誤った見解・感情であるという

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『人口減少時代の宗教の危機と対応』(勝本正實/いのちのことば社)

『人口減少時代の宗教の危機と対応』(勝本正實/いのちのことば社)

教会関係者の誰もが心に懐きながら、口に出すことをためらうことを、言ってくれたものだと感心する。私もどちらかというと、この側面を正面から論じるべきだと考えている。そう、教会の未来は暗い。閉塞感という言葉で打ち出した本もあったが、それどころの話ではない。閉塞ならばまだ存続する。だが消滅するとなると、話が大きく変わってくる。

ユニークな著者である。キリスト教の牧師相当の方であるが、仏教を深く学んでいる

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「ホサナ」と叫べない

「ホサナ」と叫べない

4週後に受難日と復活祭を迎える福岡のキリスト教会は、非常事態宣言解除の中で、集まることができる見通しを、いまのところ期待している。
 
復活節の一週間前の主日は、棕櫚(しゅろ)の主日と呼ばれる。新共同訳聖書では「なつめやしの枝」と訳しており、ヨハネによる福音書の記事に基づく。ただ、他の福音書でも、自分の服を地面に敷いたというような描写がなされており、民衆の歓迎の度合いが窺える。
 
イスラエル各地

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