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東洋経済ONLINE「岐路に立つ日本の財政」

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財政問題では気鋭の専門家である、慶應義塾大学経済学部教授の土居丈朗氏による、東洋経済ONLINEでの連載(隔週月曜朝)。 http://j.mp/TYKOLTD
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記事一覧

2022年度予算案はどうなるか。岸田政権の財政運営を占う3つの焦点とは。

2022年度予算案はどうなるか。岸田政権の財政運営を占う3つの焦点とは。

2022年度予算政府案を、12月24日に閣議決定を目指している岸田文雄内閣。

2022年度当初予算案での焦点は何か。それは3つある。

まずは予算規模である。当初予算での一般会計の歳出総額が過去最大だった2021年度の106.6兆円を上回る規模になるか否かよりも、その中身である。

2021年度当初予算では、時限的な予算が含まれての過去最大だったが、それを除くと、2020年度当初予算よりも高々7

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2021年度はコロナ禍でも税収が過去最高に。それでも、プライマリーバランス黒字化目標を凍結するか

2021年度はコロナ禍でも税収が過去最高に。それでも、プライマリーバランス黒字化目標を凍結するか

11月26日に、2021年度補正予算案を閣議決定した。11月19日に取りまとめた「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を踏まえ、 一般会計の歳出が35兆9895億円となり、2020年度第2次補正予算の31.9兆円を上回って補正予算として過去最大規模となる。

これと合わせて、2021年度補正予算案では、2021年度の税収は過去最高となること判明した。コロナ禍で、緊急事態宣言も断続的に堕されてい

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自民党新総裁は、経済対策で活路が開けるか

自民党新総裁は、経済対策で活路が開けるか

自民党総裁選挙で注目を集めそうな追加の経済対策。9月29日の投開票までにどのような政策論議が行われるか。

2020年度から約30兆円もの予算が繰り越されて残っている中、さらに予算を積み増して何をするのかが、焦点となるだろう。

ただ、経済対策を策定するとしても、中身を詰めるためには、最低でも2週間の作業や手続きに時間がかかる。関係省庁間での調整、与党内での審議、そして閣議決定。

そして、10月

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豪雨災害への備えには、巨額の補正予算が必要か?

豪雨災害への備えには、巨額の補正予算が必要か?

このところ、記録的な豪雨が各地を襲っている。被災された方々にはお見舞い申し上げたい。

豪雨災害の復旧には、公共事業費は必要だが、今年の豪雨災害に対して、巨額の補正予算が必要だろうか。

この数年を見ると、コロナ前から、毎年度巨額の公共事業費の補正予算が盛り込まれている。しかし、年度内に使い残すことが常態化している。

先日発表された2020年度の決算によると、2020年度いは4.7兆円もの公共事

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財政健全化目標は、2025年度に達成可能か?:東京五輪後の日本の経済財政

財政健全化目標は、2025年度に達成可能か?:東京五輪後の日本の経済財政

東京オリンピック開会式の前々日、7月21日に、経済財政諮問会議において、内閣府から「中長期の経済財政に関する試算」(以下、中長期試算)が報告され、2030年までの経済財政の見通しが示された。

五輪後の日本の経済財政はどうなるか。

中長期試算の1つのポイントは、政府が閣議決定している財政健全化目標が2025年度に達成できる見通しか否かである。

今年1月に公表された中長期試算では、経済成長率が高

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国の第3次補正予算、注目すべき「6つの焦点」 国債発行額は過去最高、困窮者に絞った支援を

国の第3次補正予算、注目すべき「6つの焦点」 国債発行額は過去最高、困窮者に絞った支援を

内容よりも規模に関する観測が飛び交う2020年度第3次補正予算。成立しても、2021年3月末までに執行することが求められるため、3か月ほどの期間で支出する新たな予算として、どんなものが盛り込めるだろうか。

現状の景況に鑑み、補正予算編成と合わせて追加経済対策の策定も、菅義偉首相は指示している。

既に第2次補正予算までに11兆5000億円もの予備費が計上されている。このうち4兆円強はその使途を決

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不妊治療が予算編成で議論の俎上に 保険適用の長短とは

不妊治療が予算編成で議論の俎上に 保険適用の長短とは

菅義偉内閣が発足し、不妊治療の保険適用の拡大が急浮上した。その是非について、さらにはどのように保険適用するかについて、議論が活発になってきた。

なぜいま議論が活発になっているのか。それは、今年末までに予定されている2021年度予算編成があるからである。

保険適用の拡大をするにしても、今ある公費助成の拡充をするにしても、国会で議決される予算がなければ実施できない。

もちろん、年内の議論ですべて

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行政のデジタル化は、菅内閣で進展するか

行政のデジタル化は、菅内閣で進展するか

発足したばかりの菅義偉内閣で、早速、デジタル庁の創設に向けて動き始めた。そこには、中央省庁での行政のデジタル化が遅れている現状がある。

中央省庁での行政のデジタル化がなぜ進まなかったのか。歴代内閣で、様々な取組みを進めてきたものの、様々な障害に突き当たっていた。

その中で、最も苦労している2つは、地方自治体と国会との連携である。

地方自治体に対しては、地方分権の趣旨に鑑みれば、中央省庁が強制

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「GoToトラベルキャンペーン」の背後にちらつく選挙の影 感染拡大なら選挙や住民投票どころではない

「GoToトラベルキャンペーン」の背後にちらつく選挙の影 感染拡大なら選挙や住民投票どころではない

7月22日から東京を除外して始められる予定の「GoToトラベルキャンペーン」について、キャンペーンを進める側と、全国的な実施に反対する側とで、賛否が対立している。「GoToキャンペン」全体で1.7兆円の予算のうち、「GoToトラベルキャンペーン」には1.4兆円が計上されている。

ただ、賛否の違いはあれども、キャンペーンの背景には、選挙の影がちらついている点では同じようだ。

キャンペーンの予算を

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東京都知事は都債増発でも何でもできる。しかし・・・

東京都知事は都債増発でも何でもできる。しかし・・・

7月5日に投開票される東京都知事選では、都政のあり方をめぐり論戦が繰り広げられている。その中で、東京都の借金である都債も1つの焦点となっている。

東京都は、2020年度に入って1兆円を超える予算を増額して、コロナ対策のために支出できるようにした。ただ、その財源を工面するために、東京都が積み立てていた財政調整基金を取り崩して捻出し、その残高は約9350億円から493億円まで大幅に減少した。

今後

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ドイツはなぜ消費減税できるのか

ドイツはなぜ消費減税できるのか

6月3日、ドイツのメルケル政権、日本の消費税に相当する付加価値税を2020年7月1日からで12月31日まで税率を引き下げること発表した。これは、2020年と2021年に実施する新たな景気対策(総額1300億ユーロ(約16兆円))の一環である。

この消費減税は、標準税率を19%から16%に引き下げ、軽減税率を7%から5%に引き下げるものである。

2005年に発足したメルケル政権は、2007年に、

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コロナ後の年金はどうなる?

コロナ後の年金はどうなる?

緊急事態解除宣言も出て、ひとまず外出自粛や休業要請が緩和されそうなわが国で、今後の年金はどうなるか。

今般のコロナショックで、年金財政にはどのような影響があるか。今のところ、既に年金受給者になった人には、予定通り年金給付が出されていて何事もないように見える。

しかし、コロナ後にデフレが続くと、年金給付にも支障が出てくる。

逆に、コロナ後にインフレになると、わが国の公的年金は、年金保険料を払う

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新型コロナの「経済対策」は何が効果的か

新型コロナの「経済対策」は何が効果的か

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、経済活動が大幅に縮小している。その対応として、金融政策だけでなく、財政政策で何ができるかが問われている。

感染拡大防止こそ、最も効果的な経済対策であることは言うまでもない。

経済対策として、これまでにないほどの金額を積むべきだという声もあるが、従来の景気対策を同じことをして効果があるだろうか。今は、感染拡大防止に努めなければならない時期だけに、感染拡大を

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新型肺炎の「相談・受診の目安」で安心できないワケ

新型肺炎の「相談・受診の目安」で安心できないワケ

厚生労働省が、新型コロナウイルスの感染症が疑われる場合の相談・受診の目安を示した。37.5℃以上の熱が4日以上続けば、帰国者・接触者相談センターに相談するなどといったものである。

しかし、37.5℃以上の熱が4日以上続くまで相談できないのかとか、かといって持病を持つ人や妊婦はその限りではないと補足してみたりと、結局「相談・受診の目安」が示されたからといって、安心できない人は多い。

なぜ、こうし

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