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Etude (30)「様々な思想家の表現形態」

Etude (30)「様々な思想家の表現形態」

[執筆日 : 令和3年4月29日]

「フランス哲学は常に次のような原理によって規整されてきた、すなわちいかに深淵な、またはいかに精妙な哲学的観念も一般の人々の言葉によって表現され得るし、また表現されなければならないものだ」          アンリー・ベルクソン

 林達夫さんは、「思想の運命】の中の「思想の文学的形態」で、閑却(なおざりに)されていることとして、思想の文学的形態について書いてお

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Etude (29)「人生とはそれぞれの役を演じることなのか」

Etude (29)「人生とはそれぞれの役を演じることなのか」

[執筆日 : 令和3年4月29日] 

1.政治を考える上で重要な論点とは
 岩波書店「岩波 社会思想辞典」の「政治」の項を担当された川崎修(立教大学法学部教授、ハンナ・アーレントの研究家)さんが政治について、以下のように記述しております。
「政治の概要を最大公約数的に概括するならば、その中心にあるのは、意見や利害が異なる複数の人間の間で秩序を形成・維持・変容する営み、言い換えれば、人々の間の差異

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Etude (28)「西田幾多郎-無私の思想」

Etude (28)「西田幾多郎-無私の思想」

[執筆日 : 令和3年4月6日] 

「一たび禁断の果を食った人間には、かかる苦悩のあるにも已むを得ぬことであろう」
                      西田幾多郎 「善の研究」 

 鈴木大拙の禅の次は、西田幾多郎の善かという訳でもないのですが、役所を定年退職した後は、幾つかの妄想を抱いていて、その一つが、大学で哲学を学ぼうということがありました。ただ、実社会で長く働き、そして諸外国を眺

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Etude (27)「人間とは心である」

Etude (27)「人間とは心である」

[執筆日 : 令和3年4月6日] .

 鈴木大拙の「禅の思想」は、登山家にとっても難所的北アルプスの巨峰であり、登山家でもない杢兵衛は、ここらで下山するのが賢明であるという結論に達しました。そうはいっても、多少の痕跡は残さないといけませんので、「解題」を書かれている小川隆さんが述べたことを要約しますと、「(大拙が)自らが「会心作」と述べた「禅の思想」は1943年、73歳の著で、その5年前には、英

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Etude (26)「高みを目指してー禅は善か」

Etude (26)「高みを目指してー禅は善か」

[執筆日: 令和3年4月6日]

「ある学者は、宗教とは楕円形に似ていると言った。なんとなれば、楕円形はその中に2つの中心点をもっているが、宗教にもいつも2つの中心があるからである。キリスト教風にいえば、神と人間とがそれである。仏教の術語をもっていえば、法と機とがそれである。その2つの中心のうち、いずれかに重きをおいて考えるかは、人それぞれの考え方であって、それがその人の宗教観を定める。」
増谷文

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Etude (25)「コロナ禍での平安のためにー美は人を救う」

Etude (25)「コロナ禍での平安のためにー美は人を救う」

[執筆日: 令和3年4月3日]

「幸福の存在を信じないということは、誰もが遅かれ早かれ身につける懐疑主義の一形態である。幸福に関して不平を言う者は沢山いるが、われわれがこの重要な概念を放棄するのは大方は諦めからであり、そうすることによって安堵するのである。(中略)一度も幸福だった経験のない人たちーあるいは、かつて幸福だったけれど、その幸福をもうすっかり忘れてしまって、そのことを当たり前と思ってい

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Etude (24)「科学は、テレビ塔の天辺から落ちる紙の行方を知ることはできない」

Etude (24)「科学は、テレビ塔の天辺から落ちる紙の行方を知ることはできない」

[執筆日: 令和3年4月2日]

 アフリカで活躍する同期から、同期で3月定年退職した人、或いは、4月から続けて勤務する人の話しや、公務員の65歳定年延長法案の話しなどを聞いて、日本人は、西欧人とは違う労働観、人生観を持っているんだなあと。西欧人には、働くことへの罪悪感のようなものがあるようで、イスラム教徒もしかり。日本人は、働くことを美徳として、死ぬまで働くこと、つまり、社会的承認を得ないと生き

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Etude (23)「三つ子の魂百までとは」

Etude (23)「三つ子の魂百までとは」

[執筆日: 令和3年4月1日]

 今日は、4月1日、新しい年度(会計)の始まりでございます。隠居老人には、新年度もないとも言えるし、あるとも言えるのは、行きつけの茶店のコーヒーの値段が一挙に70円も値上がっていて、なんだこれは、コロナ禍のインフレはひどいなあと。聞くところによれば、持ち帰りの代金も上がるようですし、週刊誌情報では年金額が下がるともいうし、踏んだり蹴ったりの新年度のような感じです。

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Etude (22)「さあ、あなたの暮らしぶりを話して」

Etude (22)「さあ、あなたの暮らしぶりを話して」

[執筆日: 令和3年3月31日]

 「どんな女性にとっても、最良の夫というものは、考古学者に決まっています。妻が年をとればとるほど、夫が興味を持ってくれるでしょうから」

 コロナ禍にあって、旅の事を書くのは、絵に書いた餅を眺めさせるようなものでありますし、目に毒という気もいたしますが、旅行をするためには、最低3つの要素が必要な気がします。第一は、好奇心、所謂、今生きている場所より素敵な場所があ

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Etude (21)「リヨンからの便りー時間とは記憶」

Etude (21)「リヨンからの便りー時間とは記憶」

[執筆日: 令和3年3月30日]

 昨日、アフリカからフランスに転勤した、元同僚から近況を知らせるメールが届いておりました。勤務地は、遠藤周作がかつて留学していたリヨンの町。リヨンは、1996年でしたか、リヨン・サミットが開催された地で、私は東京から外国人プレス対応のため、一足先に、H外務報道官とともパリに先乗りし、パリの外国特派員との会食(ギイ・サヴォワというミシュラン三星レストラン等で)など

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Etude (20)「利他を考える」

Etude (20)「利他を考える」

[執筆日 : 令和3年3月29日]

 昨日は、久しぶりに恵比寿の職場の元同僚から、4月から、観光・ガイドの授業で、西洋の講座を週一回受け持つ仕事が見つかったと、嬉しそうに連絡がありました。しかし、ヨーロッパに住んだこともない彼がヨーロッパの歴史、文化・観光的な事を語ることが果たして出来るか、大丈夫かと思いながら、そういう仕事なら私もできそうなので、特別講義で講師で招待してくださいと、期待せずのお

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Etude (19)「真の孤独を知るために」

Etude (19)「真の孤独を知るために」

[執筆日 : 令和3年3月28日]

「教育の最高目的は、天才を養成する事である。世界の歴史に意義あらしむる人間を作ることである。それから第二の目的は、かかる人生の支配者に服従し、かつ尊敬する事を天職とする、健全なる民衆を育てる事である。(中略)教育の真の目的は、「人間」を作ることである。決して、学者や、技師や、事務家や、商人や、農夫や、官吏などを作ることではない。」

「人には誰しも能不能のある

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Etude (18)「時間の力」

Etude (18)「時間の力」

[執筆日 : 令和3年3月27日]

 老子という人は、生没年不詳で、実際存在した人であるのかよく分からないのですが、「道徳経」(これを「老子」という)を著し、「論語」では孔子に礼の道を悟る賢人としても登場します。「道徳経」は、「無為にして為さざるなし」という道家の思想綱領がほど尽くされている書として、後代に対する影響が大きい書であると、ブリタニカ国際百科辞典に説明があります。
 しかしながら、老

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Etude (17)「他人を理解することよりも、自分を理解することが遥かに難しい」

Etude (17)「他人を理解することよりも、自分を理解することが遥かに難しい」

[執筆日 : 令和3年3月25日]

「他人を理解するには、豊かな想像力がいるのに、今の日本には、そんな教育はない」
       イーデス・ハンソン(1988年8月31日朝日新聞「天声人語」)


 呉兢の「貞観政要」の続きと申しますか、最後でございます。先に、人物鑑定法なることを書きましたが、側近№1の魏徴が太宗から乱世の後の泰平の時代に、賢人の人材登用をはかる上で、自己推薦制を採用しよう

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