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パリ日記

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パリに行く夢が現実になったその日からのこと 今はただひたすらに パリに逢いたい
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#エッセイ

新しい夢のはじまり

新しい夢のはじまり

ことばが頭の中に溢れてゆく。

掬い上げようとして画面に向かうと、さっきまで頭のなかでぐるぐるしていたはずなのに、パンッと弾けて消えてしまう。そんなとき少し、眉が下がる。

パリにいる間、ことばが追いつかなくて夢中でシャッターを切った。そのときの感情が記憶からこぼれ落ちてゆかぬよう、頭の中でことばにした。ことばを文字にしたくてもその時間がないことが、ひどくもどかしかった。

写真をもっと上手に撮れ

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帰ってきてからも、楽しかったよ。

帰ってきてからも、楽しかったよ。

「また乗る電車が何番線かとか、全然出んねや」

昨夜、父とパリでの思い出を語らっていたとき、父が言ったその言葉に、ああ、そうだった、そうだった、頷いた。そこから、じんわりと、でも急速に、パリでのそうした細かい思い出が脳内を駆け巡った。

モン・サン・ミシェルからの帰り道、17:00発のバスが来なくて、バス停にいた人たちに必死に「Excusez-moi?」「Excuse-me?」と声をかけまくったこ

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東京とパリ

東京とパリ

東京でひとり暮らしをすることは、幼い頃から憧れていたことのうちの1つだった。

その気持ちは強く、大学入試のときの志望校模試で「日本でおすすめの場所は?」というお題の英作文が出た際には「東京です。東京は日本の首都であり、日本中から最新のものが集まります。人がたくさんいて、建物は背が高く、歩いているだけで驚かされます。とても魅力的で、楽しい街です。」と、幼稚園児のような回答をして、30点中28点を獲

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この夢の続きは未来の私に託して

この夢の続きは未来の私に託して

パリにいた9月、卒論ラストスパートの12月、なにより大学4回生の2023年、ほんとうにあっという間だったな。昨年の今頃はまだ本選考がはじまっていなくて、例の外資ITの最終面接がなくなるなんて予想だにすらせず、どこに就職するかもわかっておらず、パリ行きもまだ不確定だっただなんて、信じられない。

月並みだけど私の2023年を表す漢字は、正真正銘「旅」だ。

東京、静岡、岡崎、倉敷、軽井沢、白浜、京丹

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記憶が消えてもおぼえてる

記憶が消えてもおぼえてる

パリから帰ってきてからの2ヶ月間、1日たりともパリを思い出さなかった日はない。

その街並みがまぶたの裏に浮かんでくることもあれば、胸がギュッとなるように "その時" の感情が思い出されることもある。

大学生活に追われてとも言えるし、心の故郷に思いを馳せ始めるとキリがないから ”あえて” とも言えるけれど、確実に写真を見返すような時間は少なくなっている。

だけどいつだって、パソコンを開けばオル

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夢が醒めても隣にいてね

夢が醒めても隣にいてね

パリにきて、3週目。

日本から父と彼がやってきた。

***

彼は、2カ国経由便のフライトで滞在中はケルン1日、ブリュッセル1日、パリ4日。

父は、直行便でパリ、ブルージュ、モン・サン・ミシェル、パリ(半日はヴェルサイユ)、パリ。

パリは基本どこに行くにも予約がいるし、どこに行っても荷物チェックがある。TGVやThalysといった高速鉄道の乗車券や航空券は、よほど売れないもの以外は直前にな

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モンマルトルに恋して

モンマルトルに恋して

本格的にパリに興味を持ちはじめた小学生の頃、買ってもらった パリ のガイドブックを2冊 と フランス のガイドブックを1冊 を毎日のように眺めた。

モンマルトル サクレ・クール寺院

どのガイドブックにも必ず載っていて、サクレ・クール寺院は「五大ランドマーク」として紹介されているのに、片面1ページで紹介が終わってしまうことがほとんどで、「モンマルトルはサクレ・クール寺院があるところなんだ」と思っ

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あこがれが思い出に変わっても

あこがれが思い出に変わっても

日本に帰ってきて、朝ごはんが クロワッサン から 食パン に変わった。食パンは焼いて、お土産に買ってきたエシレバターとヌテラ(ヘーゼルナッツとチョコのスプレッド)を塗って食べている。

パリが私に与えた食いしんぼう魂は帰国後も消えてくれなくて、毎晩ひとりでバリバリ食べていた『LU』というメーカーの板チョコが載ったクッキーを、日本でもおやつによく食べている。帰ってきてから2週間で、もうなくなりかけ。

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ガラスの靴は履いたままで

ガラスの靴は履いたままで

大学生のうちにパリに行くのが夢だった。

夢が叶い、その日々が過ぎ去ってしまってからの1週間、私は夢の国を抜け出せずにいた。

9月24日(日)

列車の到着と同時にホームにたどり着いてなんとか乗り込んだ成田エクスプレスで、スーツケースを特大荷物置場に置いて、席を探した。

予約者とブッキングして二度ほど席を移動したけれど、切符の確認にまわってきた車掌さんに事情を説明して席を押さえてもらって、窓際

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シンデレラの、魔法は解けた。

シンデレラの、魔法は解けた。

旅立ちの日の朝は、いつだって忙しい。

シャルル・ド・ゴール空港に向かう朝は早起きして、Champs-Élysées Clemenceauあたりを散歩しようと思っていたのに、荷物詰めが地獄すぎてそんな優雅なことをしている余裕は一切なかった。

その代わり、6:00に起きてまだ寝ているルームメイトの邪魔にならない程度に窓を開けて、パリに日がのぼっていく様を空の色が変わるたびにぼんやりと眺めた。

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夢の続きからみる景色

夢の続きからみる景色

パリに来てから 時間 を気にしなくなった。

日本にいるときは、夜遅くなれば親がうるさいから、どれだけ遅くなっても許してもらえるゼミの飲み会を除いて帰る時間が遅くならないかどうか、いつも怯えていた。

朝は乗る電車の時間に間に合うように起き、朝ごはんを食べ、化粧をし、家を出る。なんとしても乗りたい電車の時間に間に合うよう、間に合わなさそうなときは愛用のチャリをかっ飛ばし、歩くときは全力で走っていた

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憧れで終わらせなくて、よかった。

憧れで終わらせなくて、よかった。

パリに来て、もうすぐ2週間。

毎日、どこに行こう、何をしよう、何を買おう、しか考えていない。ここにきてからの1日は、日本の日常の1週間分くらいの濃さをしている。

話したいこと、伝えたいこと、知ってほしいことが、たくさんある。

だけどまずは、今しか書けないことを。

***

物心ついた頃から私の夢の国はディズニーランドではなく、パリだった。

パリはきっと、とにかくおしゃれで、華やかで、美し

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この世界はあまりにも

この世界はあまりにも

スマートにパリに到着するつもりだったのに、新大阪から東京の新幹線を降りてから、まだ国内だというのに大冒険すぎた。せっかく早く辿り着いたのに、成田エクスプレスが遅れ、乗継前の成田→香港の飛行機が遅れ、「パリに辿り着けなかったらどうしてくれるんだ」と、もう心臓バクバクで緊張しっぱなしで、何もお腹に入らなかった。機内食は成田→香港で1回(夜)、香港→パリで2回(夜・朝)出て、最初あまりにも口に合わなくて

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