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いわゆる読書感想文(一般書)

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#小説

「農業の原型を知って生きる意味を知る~『生きるぼくら』~」

「農業の原型を知って生きる意味を知る~『生きるぼくら』~」

             原田マハ 著 (徳間書店) 2013.01.11読了

ある書評を読んで、とても気になって読んでみた本です。
そしてやはり読んでとてもよかったです!

今の日本で問題になっているあれやこれやを一冊に凝縮したというか、よくぞできたというか、さすがだなって思いました。

いじめにはじまり、離婚、引きこもり、母子家庭、独居老人、介護問題、就農者減少、離村、就活問題、認知症

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「自分の中の闇は何かを変えたいと願っているか~『よるのばけもの』~」

「自分の中の闇は何かを変えたいと願っているか~『よるのばけもの』~」

『よるのばけもの』 住野 よる 著 (双葉社)     2017.1読了                      

またまた他サイトのレビューでも書いている人がいましたが、とにかくこの著者の書くものは全て、確かな説明が不足しているように感じます。
同じことを思っている人が少なからずいたことに、内心ほっとしてもいます。

いずれにしても、それは良くも悪くも、この著者の一番の特徴なのかもしれま

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「あの有名な芥川賞作品だが、さらに声援を送りたい~『火花』~」

「あの有名な芥川賞作品だが、さらに声援を送りたい~『火花』~」

『火花』 又吉 直樹 著 (文藝春秋)       2016.3読了

図書館予約した本がやっと回ってきました。実に、7ヶ月待ちです@@(あくまでも2016年3月時点でのはなしです)

すでにたくさんのレビューが存在しますが、とりあえず私なりに書いてみようと思います。


お笑い芸人を目指す徳永。ある花火大会の余興で、ひとりの漫才師と運命的な出会いをします。
徳永にとっては、

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「この作者の意図がよく読み取れない私の読解力が試されている?~『また、同じ夢を見ていた』~」

「この作者の意図がよく読み取れない私の読解力が試されている?~『また、同じ夢を見ていた』~」

『また、同じ夢を見ていた』 住野 よる 著 (双葉社)          2016.3読了

私が作者の前作『君の膵臓をたべたい』を読んだということで、同僚から「これ、読まないんですか?」と言われ「あ、じゃあ、は

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「あなたはその正義の違和感を見抜けるか?~『闇祓』~」

「あなたはその正義の違和感を見抜けるか?~『闇祓』~」

『闇祓』 辻村 深月 著 (KADOKAWA)       2021.12読了

表紙とタイトルを見て、なにやら不穏な感じを抱いたが、それは正解だったのかも。
人間誰もが持つ正義の、そのもろさと危うさがえぐり出された本作。
私のニガテなミステリー・ホラーではあるが、作者の上手さなのか、ページをめくる手が止まらなかった。


学校、ママ友グループ、会社、部活、SNS…様々な人間関係の中に、ゆっく

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「過去と現在を結ぶ手紙は彼女を救えるか?~『大正浪漫』~」

「過去と現在を結ぶ手紙は彼女を救えるか?~『大正浪漫』~」

『大正浪漫』 NATSUMI  著 ( 双葉社)       2021.11読了

ご存じ、小説の世界を音楽にする人気アーティストユニット・YOASOBIの曲とともに発表された原作小説。
この世界観が映像化もされていて、動画サイトYouTubeでも公開されています。

私は原作の方を先に読んで動画を観たのですが、とても美しい映像で表紙絵の主人公ふたりがそのまま画面に出てきて物語の中に引き込まれ

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「物語の最後が恐怖で縮み上がりそうになる~『出版禁止』~」

「物語の最後が恐怖で縮み上がりそうになる~『出版禁止』~」

『出版禁止』長江俊和 著 (新潮社) 2015.1読了

本書はミステリーホラーです。
あまり好きなジャンルではありませんが、意を決して読んでみました。

あるルポライターが、以前おこった心中事件で生き残った女性にインタビューし、その真相をふたたび取材するという企画で、雑誌に記事として載せることになった。
これまでなかなかイン

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「誰の身にもいずれ来る問題に善と悪をからませる~『ロスト・ケア』~」

「誰の身にもいずれ来る問題に善と悪をからませる~『ロスト・ケア』~」

『ロスト・ケア』 葉真中顕 著 (光文社)  2013.5読了

前記事ががん予防に貢献する物語となって話題になりましたが、今回取り上げる作品は現代の社会問題である、介護問題に焦点を当てています。
介護する人と介護される人、介護を助けてくれる人、その中で生じた問題が転じて犯罪になったときそれを取り締まる人、裁く人、介護を金儲けにする人。

善と悪が入り乱れての複雑な社会構図が人間の尊厳とは何か

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「タイトルに騙されないで純粋に読んだら心をふるわせた~『君の膵臓をたべたい』~」

「タイトルに騙されないで純粋に読んだら心をふるわせた~『君の膵臓をたべたい』~」

『君の膵臓をたべたい』住野よる 著 (双葉社)2015.7読了

今ではすっかり泣ける恋愛小説のド定番として有名になった本作。
最初の印象は、タイトルがちょっとキワモノ過ぎて一旦手が出ませんでした。
しかしタイトルのインパクトとは裏腹に表紙絵はとてもやわらかなので、これはいったい…?と思わせるところがミソ。

周囲(当時の職場)が「まずあなたが読んでみて!おもしろかったら次に読むわ」と、なかば押し

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「中2的青さ・痛みが懐かしい~『別れ際にじゃあのなんて、悲しいこと言うなや』~」

「中2的青さ・痛みが懐かしい~『別れ際にじゃあのなんて、悲しいこと言うなや』~」

『別れ際にじゃあのなんて、悲しいこと言うなや』 黒瀬 陽 著 (早川書房) 2018.9読了

舞台は1996年の広島。アムロやエヴァが青春を席巻していた多感な中2のころ。
クラスのどのグループに入ったらいいか悩んでいた僕。

友達で優等生だけど地味な祐介は、太っていても自分を小室哲哉ばりにTKと名乗る変な奴や、タイ人のクルン、いつも指を鼻に突っ込んで鼻くそをいじっているジョー(サッカーの城彰

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「映像化はないのかな~『幽麗塔』~」

「映像化はないのかな~『幽麗塔』~」

『幽霊塔』 江戸川乱歩 著 宮崎駿 カラー口絵 (岩波書店) 
                      (2015.7読了)

宮崎駿監督が表紙を手掛けていて、つい手に取ってみました。
これが私の、“初”江戸川乱歩となったわけですが、別に古典ミステリーが嫌いなわけではありません。
学生時分には、アガサ・クリスティの「名探偵ポアロ」シリーズも何作か読んでいますし、シャーロック・ホームズも岩波少

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「主人公に入り込めないけどミステリーとして純粋に楽しむ~『危険なビーナス』~」

「主人公に入り込めないけどミステリーとして純粋に楽しむ~『危険なビーナス』~」

『危険なビーナス』 東野 圭吾 著 (講談社)

主人公・伯朗がまだ子供のころ、画家である父が死んだ後、母が再婚した相手は資産家だった。
その家はどこか落ち着かない。
叔父・叔母・いとことも全くなじめそうにない。
そしてその後生まれた弟は成長するにつれて天才的な能力を持つようになる。

また、母は伯朗が大学生の時、不審な死に方で亡くなってしまった。
様々なこれらの要因が重なり資産家である家にも

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「人々の叡智を集結して赤字解消だ!~『ローカル線で行こう!』~」

「人々の叡智を集結して赤字解消だ!~『ローカル線で行こう!』~」

『ローカル線で行こう!』 真保裕一 著 (講談社)

すう~っと胸のすくようなお話でした。
全国どこにでもありそうな、赤字路線をかかえる自治体。
この物語を読めばどこかしら参考にできそうな部分もあり、まだまだがんばれることがあるんじゃないか?と勇気をくれる1冊です。

まあ物語ですから、こんなに上手くいくはずない!と言われればそれまでなんだけど…。
それでもこの本にあるように、地域やその鉄道を

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「数学が苦手な人の背中をそっと押してくれる~『博士の愛した数式』~」

「数学が苦手な人の背中をそっと押してくれる~『博士の愛した数式』~」

『博士の愛した数式』 小川洋子 作  (新潮社)

この読書感想を別ブログに書いたのが2006年ごろ。
当時はヤングアダルト(10代向けの本)やファンタジー本を中心に読んでいました。でも話題の本はやはり抑えておきたいと、この本を手に取ったわけです。


今回珍しく大人の本を読みました。映画化もされるし、以前から気になっていた本ではあったのです。
数学をどのように小説に組み入れるんだろうと。

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