「農業の原型を知って生きる意味を知る~『生きるぼくら』~」
原田マハ 著 (徳間書店) 2013.01.11読了
ある書評を読んで、とても気になって読んでみた本です。
そしてやはり読んでとてもよかったです!
今の日本で問題になっているあれやこれやを一冊に凝縮したというか、よくぞできたというか、さすがだなって思いました。
いじめにはじまり、離婚、引きこもり、母子家庭、独居老人、介護問題、就農者減少、離村、就活問題、認知症など、これらがぜ~んぶ入ってしまっているんですよ!
それをさらりと読ませ、おまけに思わず感動で涙が出てくるほどのさわやかな読後感まで味わえるんです。
やはりすごいなあって感じます。
学校でいじめにあっていた主人公が引きこもりとなり、離婚した母親が突然いなくなってしまいます。
誰も世話をしてくれる人がいなくなってしまった主人公がたよりにしたのは、年賀状にあった祖母。
その祖母が住む田舎へと向かい、そこで様々な人たちと出会い、農業について教えてもらい、人間力を取り戻していくという物語です。
さすがにいじめについて表現されている部分は、私にはフィクションとはいえきつかったけれど…。
でも実際にそういう目にあっている子どもたちは現実にいるのですよね。
もちろんこの本の内容のように、うまく解決することは少ないと思うけど、
「あ~…こういう風にみんなやれたらなあ…」なんて考えてしまいます。
主人公が思わず足を踏み入れることになった農業。
お米を一から、それもすごく原始的なやり方で育てていくところを細かく描かれており、もちろん知らないこともあり勉強になりました。
田舎に生まれ育ち、今も故郷で暮らし続けていて、田んぼや畑など農業で頑張っている人々を毎日目にしている私ですが、しかしながら自分が農業にかかわったことはありません。
土と生きるということは、地球とともに地道に這いつくばってでも生きていくということ。
すでに効率よくできあがった農法でお米を作るのは簡単なのでしょうが、それを選ばなかった人たち。
しかし人に優しい、地球に優しい方法で耕作していくのは並大抵の苦労ではないでしょう。
雑草や虫や病気や悪天候など、対応する敵は毎年必ず出現し、ひとつひとつ取り除くしかありません。
気が遠くなるような作業を繰り返しする羽目になっても、それでもやり続ける意味があることを周りの人々は主人公に理解させてくれるのです。
そのような苦労をしてできたお米は何物にも代えがたいほどに美味しいものです。
おいしい新米を毎年いただける幸せ。
それをこの本を読むと、つくづく感じてしまいました。
そしてやたらとおにぎりが食べたくなります。
人の手で、愛する人のためにと、愛情込めて結んだ手で作られたおにぎり。
コンビニで買うおにぎりよりも、やっぱり目に見える誰かがにぎってくれたおにぎりのほうが絶対においしんですよ。梅干し入りのおにぎりが、ですね。
これだと他に贅沢なおかずは必要なさそうです。