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短歌・詩・俳句

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短歌・詩・猫を中心とした川柳などを掲載しています。
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記事一覧

第223話:命を生きる

第223話:命を生きる

ある時、教え子が何年振りかで訪ねて来た。
卒業して数年。
真面目で、純朴で、
めったにいない、いいやつだった。

それが、スキンヘッドをしてやって来たので
どうしたんだ、お前、その頭? 
と、ふざけて言うと、
彼は少し目線を下げ、

 実は、しばらく前に
 足の甲にちょっとでっぱりができていて
 あまり気にしていなかったんですが
 病院で診てもらったら
 骨肉腫だということが分かって
 今、抗がん

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第215話:定年退職

第215話:定年退職

2021年3月、これは単なる個人的な日記です。

今日、学校では離任式があり、基本的には本日をもって定年退職ということになりました。永年勤続ということで表彰状ももらいました。記念品はボールペン一本でした(笑)。

38年働いたか・・みたいに改めて思ってみましたが、振り返れば、あっという間の出来事であったような気もします。

学校は4月から翌年3月までの年度単位の動きをしているので、勤務した最後の1

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猫五七五10選

猫五七五10選


ひなたぼっこの ねこの背中と ねこの耳

湯たんぽと 猫とまるまる 星の夜

まるまって猫の背中が語る秋

にゃんとなく 覗きたくなり 猫の夢

猫とゆく夕焼け小焼けの散歩道

猫を抱き 猫と夕日を見ていたり

猫と風 ゆんわり連れて散歩する

猫が待ってくれているから帰る家

猫という平和を膝ににごり酒

猫とゐて けふ こともなく をはりけり

物言う猫

物言う猫

短縮勤務になり家に早く帰るようになったので夕方の猫の散歩が日常化するようになりました。

それで、猫は当然、毎日のように散歩を要求します。
写真は、車から降りて家の中に荷物を置くと、猫がもう玄関に「散歩しに行こう」とスタンバイしている図。
散歩とか、ご飯とか、撫でろとか、外出たいとか、要求はすごい目力で明確になさる猫です。

なんだかなあと思いながら、それでも待っていてくれる者がいることはいいこと

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母を知らぬ十七の夏 拾い猫

母を知らぬ十七の夏 拾い猫

日記です。

初夏。辺りの風景も家の庭も、初夏は緑と白の世界です。

ブルーベリーもびっしり実をつけています。

暇つぶしに?家の庭の隅を使って、家庭菜園を始めてみました。

猫と散歩をしていると川の中をカルガモの親子が歩いていました。

今日は多分、我が家の猫の誕生日です。
捨てられていたのを拾ってきたので正確な誕生日は分かりません。
あの日から、もう17年。
相当なオバアチャンなのに、めちゃく

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反戦の歌

反戦の歌

白菜はラファ砲撃を告ぐる日の記事に包まれ厨にありき

 戦争を歌うのは難しい。

白き雲穏やかにゆく空は青く ミャンマーで人が死んでゐる

 反戦を人に伝えるのも難しい。

高校生に反戦をどう語るかも実は難しい。

ロシアがウクライナに侵攻した時、「この時代にそんなことが起こるのか」という衝撃と同時に、みんな「自分に何もできない無力感」に駆られていた。

「祖国のために銃を取る」というウクライナの

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初桜

初桜

前回と似たような自分本位な記事で申し訳ありません。

3月は卒業式、離任式でいろんな方から花束をいただきました。

花束をいただいて 春のはぐれ雲

昨日は部活の生徒たちが送別会をしてくれ、今日は強風の中、最後の練習をしてきました。たくさんの餞の言葉をいただき、時を共に過ごすということの大切さを改めて感じました。
この子らと巡り会えたことを感謝したいと思います。

初桜 別れの言葉あたたかく

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春を待つ心

春を待つ心

多くの方には無縁と思いますが、今日は国公立大学の前期試験の日。生徒たちは北海道から九州まで出かけて受験。ここは雨ですが、雪は大丈夫かなあと思いながら過ごしています。
ただ、一昨日、前期試験対策の講習と個別指導を終え、在校生も学年末試験のテスト週間なので部活動もなく、昨日と今日は完全休養日。悪戦苦闘している生徒には申し訳ないと思いながら、のんびり過ごしています。

昨日はいい天気でしたね。

富士山

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第3話:空を飛ぶ机

第3話:空を飛ぶ机

隣の家に
亮君という二歳の男の子がいて
時々遊びにやってきた

網戸のむこうでおでこをつけ
こんなことを言う

センセエー 雲がきれい

子供らしい饒舌
センセエー いいな 雲
雲みたいに 空 飛びたいな

亮君 じゃあ 大きくなったらパイロットになる?
うん
そしたら うんと勉強しなきゃ

センセエー
勉強すると 空 飛べるようになるの
センセエはうんと勉強して
もう 空 飛んだの?

噛み合う

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自己嫌悪

自己嫌悪

どうでもいいことを
ふと思いついたりするもので、
この間
通勤の帰り道、
ほとんど信号にかからずに
スイスイと帰れたことがあった。

それで、ふと
通勤の道には
幾つ信号があるだろうと
考えてみたのだった。

片道25キロの自動車通勤。
混んでいなければ40分くらいだろうか。
混んでいれば1時間ちょっとかかる時もある。
途中、信号のないバイパス道路を走るので
そんなに信号が多いわけでもない。

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もやもや考える

もやもや考える

バイク飛ばす国道は雨すぶ濡れの顔が体が闇にめり込む

定年前まで980ccのバイクであちこち走った。何年か前からは日本一周一筆書きを目指し、距離を稼ぐために朝から夜まで海岸線をひたすら走った。いつも片方は海、片方は山、どんなに有名な観光地があっても基本は立ち寄らないみたいな走り方で。
冒頭の短歌はその頃の歌。暗い夜の雨の中、海岸沿いの道を飛ばす。その時の、まるで闇の中に身体が減り込んでいくような感

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母

母が熱中症で病院に運ばれたと
兄から連絡があった。
それほど大したことでなく済んだが、
血圧が高く糖尿の持病もあるから
検査も兼ねて二週間ほど入院するという。
明日は自分が行けないので
病院にオムツを届けて欲しいと頼まれた。

翌日、病室を見舞うと
母はベッドに横たわり、
虚ろな眼差しで遠くを見ていた。
腰のあたりにコルセットのようなものが巻かれ、
その両端のヒモがベッドに固定されていた。
徘徊を

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迷子

迷子


誰も僕を知らない街でただ僕は迷子になっていたかったのだ

死にたいと思ったことはただの一度もないが、
どこかに行ってしまいたいと思ったことなら数えられないくらいある。