空を飛ぶ土竜

高校の教師をしています。人生を真剣に怠けることを日々に夢見ながら、定年退職後も現役を続…

空を飛ぶ土竜

高校の教師をしています。人生を真剣に怠けることを日々に夢見ながら、定年退職後も現役を続けています。このnoteは、生徒に話す雑談メモ風に、自分が考えたこと、伝えたいことを気ままに書いています。よろしければお付き合いください。

マガジン

  • 土竜のひとりごと:カミさんに遺す僕の軌跡

    これまでに書き溜めたもの、このnoteの「土竜のひとりごと」に書いたものを整理してここに集めてみたいと思います。

  • 土竜のひとりごと

    エッセイです。日々考えること、共有したい笑い話、生徒へのメッセージなどを書き綴っています。

  • 短歌・詩・俳句

    短歌・詩・猫を中心とした川柳などを掲載しています。

  • わが家の拾い猫「レイ」

  • 日本語雑話

最近の記事

さよならを空高く

今回の異動で転勤することになり、勤務も再任用のフルからハーフに切り替えるため、基本的にはテニスの指導から足を洗うことになりました。中学以来、考えてみれば50年間もテニスに関わってきたなあと思ってみたりします。 まったくの個人的な感傷にすぎない記事で申し訳ありませんが、昨年4月、現在の3年生がインターハイ予選を迎える時に送ったラインのメッセージに、少し言葉と写真を足して、とりあえずこの学校での「自分の締め括り」を書かせていただきたいと思います。 試合当日の朝のメッセージなの

    • 恩師?にインタビュー

      教育学部に進学した教え子が「母校の恩師にインタビューして来い」というレポート課題を出されてやって来た。 先生の一日の過ごし方を教えてください。 あのね、僕はだいたい6時45分に起きて、7時に出勤するの。最近は早く目が覚めてしまうことが多いけど、起きていきなり朝ごはん、すぐ着替え。その間、15分。すごいでしょ。車に乗って50分くらい、混んでいると1時間以上かかる時もあるかなあ。 学校に着くとバタバタ新聞のコラムを切り取って印刷して各クラスに配布。8:15から打ち合わせ。続

      • 山桜

        山桜 ゆらり ゆらりと ゆらりと孤独

        • 「とみに」ってなに?

          先日、部活動の引率でテニスの試合に行った時、女子生徒と他の選手の試合を見ながら、「あの選手は派手さはないが、プレーにそつがない。見習わないといけないね」と言ったら、生徒にきょとんとされた。「そつがない」という言葉が未知との遭遇であったらしい。 同じ日、試合を終えたペアがアドバイスを聞きに来たので、あるミスを指摘し「君たちは最近そのミスがとみに多くなった」と言ったところ、二人はアドバイスの内容などそっちのけで「とみにって何?」と首をかしげあっている。 「君らは日本人か?」と問

        さよならを空高く

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        • 土竜のひとりごと:カミさんに遺す僕の軌跡
          13本
        • 土竜のひとりごと
          240本
        • 短歌・詩・俳句
          166本
        • わが家の拾い猫「レイ」
          22本
        • 日本語雑話
          27本
        • 高校国語の教材室
          2本

        記事

          春を待つ心

          多くの方には無縁と思いますが、今日は国公立大学の前期試験の日。生徒たちは北海道から九州まで出かけて受験。ここは雨ですが、雪は大丈夫かなあと思いながら過ごしています。 ただ、一昨日、前期試験対策の講習と個別指導を終え、在校生も学年末試験のテスト週間なので部活動もなく、昨日と今日は完全休養日。悪戦苦闘している生徒には申し訳ないと思いながら、のんびり過ごしています。 昨日はいい天気でしたね。 富士山もすっかり雪化粧。 猫にせがまれて、午前と午後に一回ずつ散歩。 あちこちにフキ

          葡萄に足音を聞かせる

          今年度途中から、学校でAIによる採点システムが試験的に導入された。どうでもいいが、その名を百問繚乱と言う。多忙を極める教員たちはこれに飛びついた。あっという間に採点は済み、合計点はもちろん、順位や偏差値、設問別の正答率もあっけないほほ瞬間的に出してくれる。来年度から本格導入されるらしい。 採点は勿論だが教員になった頃はPCなどなかったから、大抵のことは「手」で行われていた。成績をつけるときも手計算、教科から出された伝票でクラスの成績一覧表をまとめるのも手写し、通知票も僕の下

          葡萄に足音を聞かせる

          カレーうどん

          老人の病気の話など聞きたくないとは思うのだが、ご勘弁いただきたい。 夏の暑さが過酷なせいであろうか、10月の空気が冷んやり頃から疲れが出はじめ、口内環境が悪化、次いで歯が根元から痛み出して物がうまく噛めなくなり、そのせいで次第に胃が傷み出した。 なんと、これは一年前と全く同じ経過で、前回は年が明けてすぐに胃カメラを飲み、多分その時にコロナに感染してしまった。 そこで今回は病院を避け、胃に負担をかけないよう、夜は「うどん」ばかりを食べていた。1ヶ月もそんな生活をしていたら今度

          カレーうどん

          第3話:空を飛ぶ机

          隣の家に 亮君という二歳の男の子がいて 時々遊びにやってきた 網戸のむこうでおでこをつけ こんなことを言う センセエー 雲がきれい 子供らしい饒舌 センセエー いいな 雲 雲みたいに 空 飛びたいな 亮君 じゃあ 大きくなったらパイロットになる? うん そしたら うんと勉強しなきゃ センセエー 勉強すると 空 飛べるようになるの センセエはうんと勉強して もう 空 飛んだの? 噛み合うことのない会話である テストの監督に行くと たいがい黒板には 「机は空に」 と

          第3話:空を飛ぶ机

          明けましておめでとうございます

          今日は共通テストの初日でした。 朝は試験会場前で生徒の見送りをしてきました。毎年、手近にあるもので励ましのメッセージを作っています。 「がんばるみかん」とか。 「がんばるバナナ」とか。 今年は、台所にあったジャガイモで「がんばるおじゃが」を。 この「くだらなさ」が、結構、生徒のリラックスを誘うと、自分では考えているのですが・・。 午後からは「どんど焼き」。 この地域では「さいと焼き」と呼んでいます。 風がやや強く、後ろの富士山も雲に隠れてしまいました。昔は夕方に火

          明けましておめでとうございます

          自己嫌悪

          どうでもいいことを ふと思いついたりするもので、 この間 通勤の帰り道、 ほとんど信号にかからずに スイスイと帰れたことがあった。 それで、ふと 通勤の道には 幾つ信号があるだろうと 考えてみたのだった。 片道25キロの自動車通勤。 混んでいなければ40分くらいだろうか。 混んでいれば1時間ちょっとかかる時もある。 途中、信号のないバイパス道路を走るので そんなに信号が多いわけでもない。 そこで職場からの帰り道に 信号の数を数え始めてみた。 ところが 6個まで数えて つ

          ご無沙汰しております

          秋になりました。いきなり冬みたいですが。 夏中、例年のように、ガレージや隣の空き家や道とかその辺りで、寝っ転がったり遊び回ったりしていて、ご飯の時以外は家に帰ってこない半野良状態の猫が、寒くなった途端に家に帰ってくるようになりました。 僕が座椅子に座っていると、「どけ」と目で訴えてそれを占領し、 そのあとはカミさんの布団に寝転がって、これを占領して寝ています。 ゲンキンなものですが、それでも、やっと普通の飼い猫のようになってちょっと可愛らしいような気もしているこの頃です

          ご無沙汰しております

          じわっと何かになる

          4月の異動で学校から図書館司書の仕事をしてくれていた職員が転勤してしまったため、その仕事が今までの仕事にプラスして舞い込んできた。昔から図書館への憧れはあって、就職後に通信教育で司書の資格を取ったりもしたのだが、授業や部活の合間を縫って時間をやりくりせねばならず、当初はかなりバタバタした。 昔の手作業とはと違い、ネットやシステムを使えばいいのだが、62歳のボケ始めた頭は新しいことを覚えるキャパに欠ける。幾つかのWEBページの情報をもとに選書、e -slipというサイトを使っ

          じわっと何かになる

          もやもや考える

          バイク飛ばす国道は雨すぶ濡れの顔が体が闇にめり込む 定年前まで980ccのバイクであちこち走った。何年か前からは日本一周一筆書きを目指し、距離を稼ぐために朝から夜まで海岸線をひたすら走った。いつも片方は海、片方は山、どんなに有名な観光地があっても基本は立ち寄らないみたいな走り方で。 冒頭の短歌はその頃の歌。暗い夜の雨の中、海岸沿いの道を飛ばす。その時の、まるで闇の中に身体が減り込んでいくような感覚を書いてみた。 最近、身体とか身体感覚とか、そんなことを歌ってみようと思い始

          もやもや考える

          母が熱中症で病院に運ばれたと 兄から連絡があった。 それほど大したことでなく済んだが、 血圧が高く糖尿の持病もあるから 検査も兼ねて二週間ほど入院するという。 明日は自分が行けないので 病院にオムツを届けて欲しいと頼まれた。 翌日、病室を見舞うと 母はベッドに横たわり、 虚ろな眼差しで遠くを見ていた。 腰のあたりにコルセットのようなものが巻かれ、 その両端のヒモがベッドに固定されていた。 徘徊を防ぐためだろう。 僕を認めると、 すっと手を伸ばして 僕の手を握ってきた。 た

          陰翳礼讃:目を閉じてみたい

          『陰翳礼讃』は名著である。夏目漱石の「現代日本の開化」もそうだが、明治以降、急速に西洋文物が流入する状況にあって、日本人がその模倣にあくせくし、独自の文化文明を失いつつあることに警鐘を鳴らしている。 漆器(蒔絵)、日本の建築、女性美などさまざまな領域に関して具体的に筆が及ぶ中で、その中心にあるのは「陰翳の喪失」である。翳り、薄明かりの中に生活があってそこに意味や美、奥行きを見出してきた日本的なあり方が、明るさ、明白さの中で消えていくのを惜しんでいる。 と結ばれているが、「試

          陰翳礼讃:目を閉じてみたい

          油断一秒怪我一生

          「油断一秒怪我一生」なのか「注意一秒怪我一生」なのかは、よく知らない。 まだ若い頃の話である。 ある日曜日、カミさんと息子と三人で千本浜に出かけた。特別なにをするわけではないが、のんびりとした時間をグデグデ過ごす。元気をもてあます息子のガス抜きのためには、ちょっとした外出も必要で、いくつかの外出パターンも出来上がっていたが、その中のひとつに沼津の千本浜の海岸でしばらくボーッとし、その後図書館で2時間ほど過ごし、回転寿司で夕食、ブックオフを冷やかして帰るというコースがあった

          油断一秒怪我一生