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羽をもがれた妖精は復讐を謡う-小噺
目を覚ますと、腕の中にはずっと欲しかったものがいた。
それは規則正しく寝息を立てていて、意識はまだ夢の中のようだ。
「ナギ…」
俺は優しく頭を撫でる。しかし眠りが浅かったのか、瞼が僅かに動きそしてゆっくりと開かれた。
「ルカ…」
寝惚け眼で俺を見る。体勢を変えたいのか、俺の腕の中にいるのにモゾモゾと動いた。
俺は少し意地悪したくて、ナギを抱き締める。
「……」
まだ頭が覚醒していないのか、ナギは
羽をもがれた妖精は復讐を謡う:小噺
霰の屋敷から戻ってきて、俺とナギはそれぞれ覚えている範囲で、互いに解いた問題を出し合った。
「俺がそっちに行ってたら、一問目で駄目だったな…」
「これでも仕込まれているからね」
ナギは得意げに片目を閉じ、口の端を上げた。その様子に俺は少し膨れる。
分かってる、ナギとの差はまだまだ広いのだと。
「ちなみにこの問題、別の証明方法は知ってる?」
と、ナギが一つの問題を示した。俺はうっと詰まる。
『1=
羽をもがれた妖精は復讐を謡う:小噺
夜風に芒が揺れる。俺は縁側に座り、体は外に向けつつもチラリと隣の人物を見やった。
「すっかり秋だなぁ」
と言いながら、団子ーーーではなく、月餅に手を伸ばすナギ。
「月見と言えば、団子じゃないのか?」
「今、風見が用意してくれてるよ」
そうではなく、と俺はジト目を向けた。ナギは「ルカもいる?」と、首を傾げながらまだ口を付けていない月餅を差し出す。
俺が月餅を受け取ると、ナギは「十五夜の月見って言うの
羽をもがれた妖精は復讐を謡う;小噺
ルカは着の身着のままアルカナに来た為、暫くの間は本部内にある仮眠室で寝泊りしていた。
手持ちの金しか持っていなかった事もあり、給金を前借りして必要最低限の生活必需品は購入していた。
そして漸く、前借り分の返済と部屋を借りるまでに至ったのである。
興味本位で内見についてきたナギが「大丈夫?」と心配そうに尋ねた。
「部屋の中はリノベーションされたばかりで綺麗だけど、不便じゃないか?」
確かに、何件か
羽をもがれた妖精は復讐を謡う-過去編
師匠は赤ワインが注がれたグラフを回した。テーブルには燻製にされたチーズが置かれている。
「安物だけど、安心して飲める方が断然いい」
そう言って、美味しそうにワインを口に含んだ。その様子に、私は荒天に着いた日の事を思い出す。
あの日、師匠は「名産品でも飲むか」と、部屋でボトルを開けた。そして開封早々に顔を顰め、少し口に含むとーーー吐き出したのだ。そして悪態を吐きながら、折角買ったワインをその場で
羽をもがれた妖精は復讐を謡う:過去編
翌日、私は師匠と別行動をしていた。断っておくが、これは脱走ではなく師匠の命令である。
「あら、迷子かしら」
と、葡萄棚を眺めていた私は声をかけられる。
私は気付かれない様ーーーおそらくバレているだろうがーーー服の裾を握りながら、声が震えない様に言った。
「わ、ワインが造られている様子って、見学できますか?」
私が人見知りが激しいと知っているにも関わらず、師匠が作った筋書き通りに声をだす。怒りを覚
羽をもがれた妖精は復讐を謡う:過去編
森の中を私は駆けていた。背後から猛スピードで追いかけてくる存在に、私は恐怖する。追い立てられ、恐怖心を煽られる。
「!!」
森を抜けると、平原に出た。やった、もう少しでゴールだ、と安堵する。
それがいけなかった。
「最後まで、気を抜くなと教えた筈だが」
背後から聞こえたその声に、恐る恐る振り返ってしまった私は悲鳴をあげた。そしてゴッッと痛々しい音がした瞬間、私は頭を押さえて悶絶する。涙目になって
羽をもがれた妖精は復讐を謡う;小噺
それは四人でパフェを食べに行った時に話した内容だった。
「アルカナでの幼少期ってどんな事してたんだ?」と言うルカの問いに、ナギが「普通に勉強したり遊んでいたかな」と答えた。
「教育カリキュラムの中に、たまに同年代が集まっての課題授業みたいのがあるんだよ」
その際、各支部にいる同世代達が本部に集まるのだ。そしてグループワークみたいな事をやらされた。
「その時に風見、日向と会ったんだよなぁ」
「だい