絵空事 -trozo-

堅牢なそれを前にして、男は悔しそうに、或いは嬉しそうに嗤った。
――やはり、私ひとりの力では敵わないか…。

ずきりと痛むのは、慣れきったそれとはまた異なる傷の痛み。
――これではもう、助かるまい。
安堵とともに独り言ちた男の目からは、静かに雫が伝った。

――もう少し、眺めて居たかった。
――けれど、私が居らずとも、この村はきっと…。

死にゆく己ではなく、消え去るであろう誰かを想った。

伝っ

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小噺「法要はネットで」

楽楽寺:八木住職
「今年は、真言宗の開祖空海が弘法大師の称号を授与されて、1100年目、この記念すべき日には、全国からたくさんの人に集まっていただいて、生誕の地とされる、善通寺で法要をする予定が、今日のコロナ禍で、オンライン法要となりました。ライブ配信されての法要ですのでどうか多くの方に見ていただきたい」

〇〇寺:若い新婚の住職のよめ
「あなた、早く起きて、ラインによる法要が始まるわよ。早く起き

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巫動:霊界三河屋業務 其の四「親子二代でのお土産要望」

うちにはよく亡くなられた方が来る。

何かしらの要望があって来るので、この事を私は「霊界三河屋業務」と呼んでいる。

ちなみにこの三河屋に来る皆さまは玄関からは来ない。何故かベランダからやってくる。霊界においての勝手口なのか。

という毎度の前置きだが今回は外での話だ。

私は車での移動が大半である。特に神社仏閣関連は変な時間に変な場所に呼ばれる事が大半なので、必然的に車となる。

それ以前に、私

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魔界の過疎村より心からお礼申し上げます
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小噺「ドライブスルー鮮魚だっせ」

夫:野村公平
「ただ今」

妻:はな
「お帰り」

公平
「みんな、面に止めてる車乗ってくれへんか」


「どうして?ご飯できてるけど」

公平
「なんか、新鮮な秋刀魚が食べたくなってない」

はな
「もう夜の9時よ、やってないわよ」

公平
「ところがな、ドライブスルーの魚屋があって、魚屋というよりホテルやな、コロナで客を正確に見込まれへんから、鮮魚が余る時がある、捨てるのはもったいないから、

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巫話:ヒッチハイカー麻呂。

ある夜、神社へ行った。

その神社へ行くまではなんともなかったのだが、帰りに車を出した瞬間に違和感を感じた。

「ん?パンクしたか?」

そう思って降りて確認したが、タイヤはなんともない。小石が溝に挟まっているかとも思い確認したが、それもなかった。

再び車を走らせるとやはり違和感がある。なんだかハンドルがブレる上に、ずっとカンカンカンカンと音がする。

数回、降りて確認したがやはり何ともない。

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魔界の過疎村より心からお礼申し上げます
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【放クラ・短編小説】俺は後で反省した

サクマのドロップスを貰った。顔合わせをしたデザイナーからだ。最近は缶入りの菓子をノベルティにすることができるらしい。パッケージは贈り主のセンスを広告しつつ、中身は昔ながらの色とりどりだ。
 しかしこういった飴の類を俺は子供の頃から食い切った試しがないし、義務感で一日一粒くらい、三分もしゃぶっては口に飽きてがりがりと噛み砕く日々はやるせない。そこで俺はこの多色ドロップスを、それと似たような放課後の五

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人間の交わりを。
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小噺「出発出向」

某空輸会社:馬場部長
「新田くん」

社員:新田
「はい」

馬場
「我が社はいま、経営がかなり苦しいのは知ってるねグループ全体の5000人減らす計画をしている」

新田
「ご、5000人ですか?」

馬場
「そうだ、そうでないと会社がもたない。ただ、首切りじゃなくて、いろんな会社に、グループ会社以外にも、自動車会社をはじめ、お笑いプロダクションとか、社員の受け入れをたのんでまわってるから」

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情けは人の為ならず躾は親の為ならず

とんねるずの「情けねえ」という曲が好きでカラオケでも良く歌います。湾岸戦争時の日本を揶揄した歌詞らしいのですが、なんだか今のこの国と照らしあわせてみても考えさせられる内容です。

//みんな時代のせいだと言い訳なんかするなよ。人生の傍観者たちを俺は許さないだろう。情けねえ。自由が泣いている。お似合いだぜおまえにゃ、口を閉ざしお休み。鎖つながれた子犬のように。この国を滅ぼすなよ・・//

我が家には

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嬉しいニャー😻
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小噺「血、血、血が足らない」

大木係長
「おい船越くん」

船越
「なんですか?係長」

大木
「飲みに行く前に、ちょっと献血に行かんか?」

船越
「献血?なんでです?」

大木
「実は、昨日献血をしたんやけど、話を聞くと、いまとにかくコロナの影響で、人の集まるイベントが軒並みなくなり、献血する人が大幅に減って血がえらい不足してるらしい。いつわれわれも献血をしてもらう立場になるか、わからんからな、ちょっとやってくれへんか?」

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小噺「今日中に届けます」

龍鶴山大圓寺:僧正
「みんなに集まってもらったのは他でもない、コロナ禍でお葬式は質素になって、われわれ、お寺とはいえ、金がなければ維持はできない。そこでいま、ウーバーイーツを始め、届ける商売が盛んで、いろんな会社が参加しだした。そこで我がほんざんでも末社に至るまで、それぞれ檀家周りで、バイク自転車は乗り慣れているだからわれわれも、仏さんの花、まんじゅう、通夜の食事に至るまで、注文を聞いて届ける会社

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