嗣人

小説家。『夜行堂奇譚』『夜行堂奇譚 弐』好評発売中です。 前半は無料作品ばかりなんで、そちらからどうぞ。※朗読をしたい方は必ず事前に許可を取ってください。

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      神様シリーズをまとめてます。 勿論、無料です。

    • 夜行堂奇譚 無料

      無料の作品をまとめてみました。 I've summarized a piece of free.

    • 和紗と鯤

      カノさんhttps://twitter.com/qanopus?s=21のイラストから着想を得て、名前を吹き込んで貰い、シリーズ化しました。 カノさんフォローお願いします🤲

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    夜行堂奇譚&夜行堂奇譚弍  好評発売中

    12年も年月がかかってしまいましたが、ついに夜行堂奇譚が発売となりました。 一巻は2022年2月に、二巻は2022年の10月に刊行されました。おまけに2冊とも分厚いのなんの。自立するほど厚く、読み応えがあります。 夜行堂奇譚https://www.shc.co.jp/book/16507 夜行堂奇譚弍 最終話まで構想はありますが、果たして完結はいつになるやら。伏線も多く、過去が明らかになっていない人物もいるのでネタには困りません。 少しでも多くの方に読んで貰えるよう、

      • 晩夏呼木(136さん怪談朗読会in太宰府書き下ろし作品)

         昔、山で奇妙な経験をした。  夏の終わり、山の麓から、向かいの山の稜線へ沈んでいく夕陽を目を細めて眺めていた。ひぐらしの鳴く声が、あちこちで重なるように響いてうるさいほどだ。  この時間になると、なんとも寂しい気持ちになる。一日が終わってしまう、家へ帰らなければならない。でも帰りたくない。相反する気持ちが入り混じって、胸が一杯になってしまう。この感情の名前が俺には分からなかった。  さっきまで一緒に遊んでいた友人たちも、午後五時を知らせる時報を聞いて次々と家に帰ってし

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        • 天地神明(136さん怪談朗読会in太宰府書き下ろし作品)

           太宰府天満宮には二つの赤い橋が池の上にかかっており、この橋をカップルで渡ると必ず別れるというなんとも迷信じみた噂が福岡県にはある。  祭られている当人である、わたし菅原道真からすれば根も葉もない噂であると断言できる。誰だ、最初に言い出したのは。そもそも年間850万人以上もの人間が参拝にやってくるのだから、別れてしまうカップルも相当数いるだろう。  私は勉学の神、広義には文化の神として祀られているが、恋愛成就を願う者も多い。  私とて生前、平安の世には恋の和歌を送り合っ

          • 華金

              華金という言葉の意味を俺は最近まで知らず、カタカナで『ハナキン』なのだと勝手に想像していた。「今日はハナキンだ」なんて言葉をテレビで見かける度になんのこっちゃと思っていたが、休日の前の週末を『華の金曜日』と呼ぶらしい。ああ、なるほどと思わず頷いてしまった。  そのことを大野木さんに話したら、眉をひそめて笑われた。帰宅してスーツからスポーツウェアに着替えた大野木さんは、メガネをジム用のそれに掛け替える。

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            夜行亜譚 「対岸」

             仕事のない休日は車を走らせて、あちこちのキャンプ場へ行くのが私の数少ない趣味だ。  故郷は遠く、独身で、人付き合いをさほど好まない性格なのでもっぱら一人でキャンプをしているのだが、これがなかなかに面白い。日常を離れて、山や海で非日常を充分に楽しむ。誰に遠慮することなく、好きな時間に酒を飲み、食事をし、眠りにつく。こんな贅沢が他にあるだろうか。  友人も知人も家族でさえ、私が一人でキャンプをしているなんてことは知らない。職場でもプライベートの話はしないようにしているし、一

            電氏物語(でんじものがたり)

            どの天皇のご治世であったでしょうか。かの御仁が、わたくしの前に現れたのは。  帝の屋敷に居候をする為にやってきた彼は、やんごとなき帝とは生まれも育ちも違う為か、粗暴で怠惰、およそ褒める所のない若者でありました。言うに及ばず、屋敷に仕える物共の多くから、それはもう蛇蝎のように嫌悪されておりましたが、わたくしだけはどうしても彼を嫌うことが出来ずにいました。  この世で起きた万の出来事を写すわたくしに、彼は帝よりも熱い瞳を傾けてくるのです。来る日も来る日も、真っ直ぐにわたくしを

            呪祓月梟

              昨夜からずっと霧のような雨が降っていて、庭木の楓がしっとりと濡れている。素足に吸いつく、いつもより少しひんやりとした感触の床板を踏みしめ、厚みがかったガラス戸を開く。岩の苔が水を吸って青々としている様を、ぼんやりと眺めながら縁側に腰を下ろした。   今日は珍しく父も母も朝から出かけているので、思う存分ひとりの時間を満喫することができる。携帯電話は電源を切り、自室のベッドに放り投げた。せっかくの休日なのだ。私だけの時間を過ごせなければ、意味がない。  今日のお供は大好きな作

            疫病退餐

               私は普段から体調管理には特に神経を尖らせている。  体調を崩して仕事を休んでしまうという事態は、社会人として極力避けるべきである。同僚に迷惑をかけるし、緻密に組まれたスケジュールは崩壊し、その余波は私生活にさえ影響を及ぼしかねない。  故に、私は今まで風邪をひいて欠勤したことは、一度もなかった。  外出の際は除菌用アルコールを携帯し、定期的に消毒を心掛けているし、もちろん帰宅時にはうがい薬で咽喉を殺菌、手洗いも欠かさない。室内の温度や湿度も一年を通して快適に過ごせるよう

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            巡虎黎明

             大晦日に太宰府天満宮へ大願を抱いて合格祈願にやってくる受験生は、全国に星の数ほどいるのだろうが、私ほど神頼みに全てを賭けている者は他にいないだろう。受験の際には一問目から鉛筆を転がすつもりだ。  国立大学の受験に失敗して早三年、自分がいかに凡人であるかを否応なく突き付けられ、友人たちから伝え聞くキャンパスライフを夢想する日々。努力は必ずしも報われる訳ではないということを証明するように、机に向かう時間とは反比例して低空飛行を描く成績。胸を引き裂く模試結果に、もはや予備校に通う

            文交夜紗

             私の元へ一枚の葉書が届いたのは、年が変わって久しい一月末日のことだった。  文面には新年の挨拶と共に、去年の暮から入院していたという旨の内容が毛筆で記されていた。葉書の宛名には妻の名があり、差出人には『木山』とだけある。  身内や親戚、知り合いに木山という苗字の者は思い当たらない。  文面を読む限り、まだ妻が鬼籍に入ったことを知らないようだった。  妻が亡くなったのは昨年の夏のことだ。春に体を患い、床に伏すようになってからは早かった。花が朽ちていくように痩せ細り、夏の盛り

            白焚朴厨

             近衛湖の畔で、魚釣りに興じている時のことだった。  魚釣りは朝まづめと言い、明け方の時間帯がよく釣れる。まだ夜も明けない内に家を出て、朝靄に煙る湖面へと疑似餌を放っては、リールを巻いていく。  趣味というわけではない。ただ金が掛からず、人にも会わず、日の出と共に動き出す人々の生活の中、その空気を感じなくとも良い暇つぶしを、他には知らないというだけ。  早朝の肌に刺すような空気と、静寂。鳥も目を覚ましていないような時間帯に、こうして一人、ただ無心に竿を振り、足元に寄せては返す

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            ショートショートの詰め合わせ

            第一話《地上最強のロボット》  その日、F博士は何十年と時間をかけた研究をとうとう完成させました。それは地上最強のロボットの建造計画でした。  完成したロボットを前に、F博士は跳び跳ねるほど喜びました。 「ああ、ああ、ようやく完成した! このロボットは最強だ! どんな攻撃も跳ね返し、どんな分厚い装甲でも一撃で破壊する。地球上のロボットがすべて束になってもこのロボットには敵わない! どんな超大国でもこいつの前にはひれ伏すしかないのだ! おまけにこいつは私の言うことしか聞かない

            碧傑忠士

               長年、可愛がってきた愛犬が息を引き取ったのは春の終わり。  短く刻むような、苦しげに呼吸する小さな相棒を胸に抱いて、すっかり葉桜となってしまった近所の桜を眺めた。骨が浮くほど痩せ細り、軽くなってしまった身体が春風に飛ばされてしまわないよう、私は残された時間を噛み締めていた。  目も見えず、鼻も効かず、病魔に侵された身で尚、私の頬を舐める小さな命が愛おしくて仕方がなかった。涙を堪えられない私のことを案じてくれるのが、堪らなく誇らしくもあり、悲しくもあった。  いつもの散歩

            迎火散華

             満開の桜と梅の木、朝露で光を弾く紫陽花、色づいた紅葉と銀杏。生垣の手前には彼岸花が連なって狂い咲いている。  縁側から四季が入り混じる幻想的な風景を眺めていると、隣にやってきた葛葉さんがおもむろに腰を下ろした。ふわり、と白梅香の匂いが鼻をくすぐる。薄桜の着物を着こなして、大きな黒い瞳が弧を描いて微笑んだ。 「物思いに耽っていらっしゃるなんて、珍しいこともございますね」 「怖い姉弟子が出かけてる間くらい、ぼーっとしていたい」  鬼の居ぬ間になんとやら、というやつだ。修行を始め

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            「家電失格」

             恥の多い生涯を送ってきました。  自分には、家電製品の幸福な生活というものが、見当つかないのです。自分は東北の田舎の工場に生まれましたので、他の家電をはじめて見たのは、よほど大きくなってからでした。我々のような冷蔵庫の他に家電製品なるものがいるとは、想像したことさえなかったので、初めて彼らの生活する空間へやってきたときの驚きはよく覚えています。  自分は生まれつき身体が大変大きく、身を屈めなければキッチンに入ることも出来ませんから、配送を担当した方々は大変な苦労をなさった

            閑話夜会 2

             千早くんは暴飲暴食を絵に描いたような人間だが、それでも太ったりすることもないのは、偏に彼がまだ若いからだ。代謝も高く、昔スポーツをしていたということもあって、筋肉質な肉体を保てている。若さというのは失って初めて気づく資産である。  私は自身の代謝が若干落ちてきているのを自覚しているので、毎週ジムにも通っているし、仕事と護身を兼ねて総合格闘技も齧っている。もちろん、8時以降は食事は摂らないようにしているし、糖質は可能な限り摂取しない。塩分や揚げ物も過剰にならないよう注意が必要

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