嗣人

兼業小説家。産業編集センターより『夜行堂奇譚シリーズ』『天神さまの花いちもんめ』竹書房…

嗣人

兼業小説家。産業編集センターより『夜行堂奇譚シリーズ』『天神さまの花いちもんめ』竹書房様より『四ツ山鬼談』好評発売中です。メンバーシップは裏話的なのや色々読めます。 前半は無料作品ばかりなんで、そちらからどうぞ。※朗読をしたい方は必ず事前に許可を取ってください。

メンバーシップに加入する

梅雨の紫陽花から名前を取りました。 夜行堂を含めた作品群を更新していきたいと思います。 毎月更新:夜行堂亜譚or実話怪談or小噺 不定期更新:夜行堂奇譚シリーズ・万年猫シリーズ・化物曼荼羅・夜行堂小噺 毎月抽選で限定グッズプレゼント(栞など)あり。希望者のみ・指定の郵便局留で送付します。

  • 猪鹿蝶プラン

    ¥500 / 月

マガジン

  • 夜行堂奇譚 無料

    無料の作品をまとめてみました。 I've summarized a piece of free.

  • 神様シリーズ

    神様シリーズをまとめてます。 勿論、無料です。

  • 和紗と鯤

    カノさんhttps://twitter.com/qanopus?s=21のイラストから着想を得て、名前を吹き込んで貰い、シリーズ化しました。 カノさんフォローお願いします🤲

最近の記事

小噺「氷菓」

 灼熱の陽射しに辟易しながら、私と千早君は日陰を求めて歩いていた。  とある品を夜行堂に届け終えた帰り道、屋敷町から県道を東へ暫く進んでいくと、鬱蒼と生い茂った雑木林が見えてくる。千早君に言われるがまま着いて行っているが、頑なに行き先を言おうしないので彼が何処へ向かっているのか皆目見当がつかない。まさか、あの雑木林の中で涼んでいくなんてことはないだろうが、この暑さだ。千早君の判断能力が落ちていても不思議ではない。  命を燃やし尽くさんと絶叫をあげる、けたたましい蝉の鳴き声が容

¥500
    • 小噺「散策」

       窓の外から聞こえてくる、けたまましい音で目を覚ました。  強引に金属を切断する甲高い音が、タワーマンションの上層階まで響いている。文句の一つでも言ってやろうかと顔をあげると、枕元の携帯電話は午前十時を表示していた。世間的にはとっくに一日が始まっている。 「土日まで工事をしているなんて、よっぽど切羽詰まってんなぁ」  隣に新しく銀行が出来るとかで、半年ほど前から工事をしているが一向に完成する様子がない。俺はそういうことにあまり詳しくはないが、少し時間がかかり過ぎているよ

      ¥500
      • 初めての公式サイン会について

        こんにちは。嗣人です。 六月も下旬に差し掛かり、全国的に梅雨が始まりましたね。 私は昔から雨が好きでして、特に執筆にはもってこいです。雨音のBGMは心が落ち着きますし、執筆も捗ります。 皆さんは雨、好きですか? さて、本日から情報解禁となりましたので、タイトルについて触れていきたいと思います。 サイン会です。 しかも東京。 出版社主催で、おまけに紀伊國屋書店新宿本店様にて行えるという、この僥倖。夢のひとつが叶ったと言っても過言ではありません。 まぁ、実際問題としてど

        • 道真様が福岡県下のグルメをあちこち食べにいく、天神飯シリーズ書いてみようかな。 写真も交えたりして、noteで公開していくっていうのは面白いかも? どうでせう?

        小噺「氷菓」

        ¥500
        • 小噺「散策」

          ¥500
        • 初めての公式サイン会について

        • 道真様が福岡県下のグルメをあちこち食べにいく、天神飯シリーズ書いてみようかな。 写真も交えたりして、noteで公開していくっていうのは面白いかも? どうでせう?

        マガジン

        • 夜行堂奇譚 無料
          42本
        • 神様シリーズ
          11本
        • 和紗と鯤
          2本

        メンバーシップ

        • 雑記⑤ ラーメンよりもうどん

          この投稿を見るには メンバーになる必要があります
        • 雑記④ おすすめの映画を教えてください。

          この投稿を見るには メンバーになる必要があります
        • 雑記③ 夜行堂の元ネタとか、裏話的なアレコレ

          この投稿を見るには メンバーになる必要があります
        • 雑記② 千早と大野木について

          この投稿を見るには メンバーになる必要があります
        • 雑記⑤ ラーメンよりもうどん

          この投稿を見るには メンバーになる必要があります
        • 雑記④ おすすめの映画を教えてください。

          この投稿を見るには メンバーになる必要があります
        • 雑記③ 夜行堂の元ネタとか、裏話的なアレコレ

          この投稿を見るには メンバーになる必要があります
        • 雑記② 千早と大野木について

          この投稿を見るには メンバーになる必要があります

        メンバー特典記事

          小噺「氷菓」

           灼熱の陽射しに辟易しながら、私と千早君は日陰を求めて歩いていた。  とある品を夜行堂に届け終えた帰り道、屋敷町から県道を東へ暫く進んでいくと、鬱蒼と生い茂った雑木林が見えてくる。千早君に言われるがまま着いて行っているが、頑なに行き先を言おうしないので彼が何処へ向かっているのか皆目見当がつかない。まさか、あの雑木林の中で涼んでいくなんてことはないだろうが、この暑さだ。千早君の判断能力が落ちていても不思議ではない。  命を燃やし尽くさんと絶叫をあげる、けたたましい蝉の鳴き声が容

          小噺「氷菓」

          小噺「散策」

           窓の外から聞こえてくる、けたまましい音で目を覚ました。  強引に金属を切断する甲高い音が、タワーマンションの上層階まで響いている。文句の一つでも言ってやろうかと顔をあげると、枕元の携帯電話は午前十時を表示していた。世間的にはとっくに一日が始まっている。 「土日まで工事をしているなんて、よっぽど切羽詰まってんなぁ」  隣に新しく銀行が出来るとかで、半年ほど前から工事をしているが一向に完成する様子がない。俺はそういうことにあまり詳しくはないが、少し時間がかかり過ぎているよ

          小噺「散策」

          小噺《鶯桜》

           屋敷の中でも一番大きな座敷で帯刀老の講義に耳を傾けていた。座学は帯刀老から、実学は柊さんから習うというのが常で、午前と午後で修行の内容が違う。 「一言に神といっても、この国における神は海外における定義とは全く別のものであることを忘れてはいけない。唯一絶対の創造神はおらず、天土に在る万物に神が宿る、というのがこの国における神性というものだ」  机を挟んだ向こう側に正座して、丁寧にゆっくりと話をする帯刀老は鳶色の着物を着ていた。この屋敷では基本的にみんな着物を着ている。葛葉さん

          小噺《鶯桜》

          雨転砂松

           梅雨の時期になると、自宅から程近い公園にそれは見事な紫陽花が咲き誇る。淡空色、青紫色、淡紅色のパレットのように歩道を行く人の目を愉しませた。  小学校の裏手を迂回するように伸びた隘路は車が通行することは出来ない分、近隣の住民の散歩によく用いられていた。隣接する細長い公園の向こうには防風林として植えられた黒松の林があり、その向こうにある海からの砂を受け止めている。小さな海水浴場は夏になると地元の子どもや親子連れで賑わうのだが、この時期はまだひっそりとしていて人の気配がしない

          雨転砂松

          小噺《好々餃子》

           私の生まれ育った家庭では餃子は家で食べるものではなく、中華料理店で家族と食す一品に過ぎなかった。数ある中華料理の内の一皿に過ぎず、空芯菜などの皿と同様にメインの料理に彩りを加える惣菜といった立ち位置だった。  しかし、それは我が家の常識であり、他家の非常識であったらしい。 「餃子はメイン料理だろ? 餃子を食う時には餃子が主役! 米と餃子だけでいいの。今夜は家で餃子にしようぜ」 休日の昼間に二人でなんとなしにテレビを眺めていると、地方のB級グルメ特集が始まり、宇都宮地方

          小噺《好々餃子》

          2024年1月 メンバーシップサイン本抽選結果

           新年あけましておめでとうございます。  そう安易にお祝いの言葉を口にするのも難しい出来事が本日起こってしまいました。  石川県の能登半島を震源地とした地震が元日の夕方に発生、多くの被災者の方が今もなお大変な困難の中にあります。  そんな最中に不謹慎という声もあるかも知れませんが、私は私のすべきことを成そうと思います。

          2024年1月 メンバーシップサイン本抽選結果

        記事

          小噺《鶯桜》

           屋敷の中でも一番大きな座敷で帯刀老の講義に耳を傾けていた。座学は帯刀老から、実学は柊さんから習うというのが常で、午前と午後で修行の内容が違う。 「一言に神といっても、この国における神は海外における定義とは全く別のものであることを忘れてはいけない。唯一絶対の創造神はおらず、天土に在る万物に神が宿る、というのがこの国における神性というものだ」  机を挟んだ向こう側に正座して、丁寧にゆっくりと話をする帯刀老は鳶色の着物を着ていた。この屋敷では基本的にみんな着物を着ている。葛葉さん

          ¥500

          小噺《鶯桜》

          ¥500

          応報縛荷(おうほうばっか)

           きっかけは些細な口論だった。  とある映画作品の挿入曲についての賛否を話していたのだが、私は結末を是とし、友人である彼はそれを頑として認めなかった。  互いに酒が入っていたのも良くなかった。  小さかった些細なすれ違いが加熱していき、あっという間に燃え上がってしまった。互いに引くことが出来ず、譲れないまま口論となり、最終的には掴み合いとなった。店で飲んでいれば止めてくれる第三者がいてくれたかも知れないが、不幸なことに私の家で二人きりで呑んでいた。  私たちは罵り合い

          応報縛荷(おうほうばっか)

          菅公巡夜《言霊堂福岡朗読会 書き下ろし作品》

           太宰府近隣の神々が楽しみにしていた花見も無事に終わり、今年も幹事としての役割を全うしたことに安堵の溜息をついたのも束の間、ウカノミタマ様より呼び出しがかかった。 家で休息を取りたいと思っていたのだが、あの方からの呼び出しとなれば無碍には出来ぬ。いや、誰の呼び出しでも無碍にしたことなどはないが。放っておくと後が怖い。  指定されたのは西鉄太宰府駅から参道へ入って、すぐ右側に見える茶房『維新の庵』である。こちらの庭をウカノミタマ様は大変気に入っており、月に一度は必ず梅ヶ枝餅

          菅公巡夜《言霊堂福岡朗読会 書き下ろし作品》

          雨転砂松

           梅雨の時期になると、自宅から程近い公園にそれは見事な紫陽花が咲き誇る。淡空色、青紫色、淡紅色のパレットのように歩道を行く人の目を愉しませた。  小学校の裏手を迂回するように伸びた隘路は車が通行することは出来ない分、近隣の住民の散歩によく用いられていた。隣接する細長い公園の向こうには防風林として植えられた黒松の林があり、その向こうにある海からの砂を受け止めている。小さな海水浴場は夏になると地元の子どもや親子連れで賑わうのだが、この時期はまだひっそりとしていて人の気配がしない

          ¥500

          雨転砂松

          ¥500

          今月は夜行堂奇譚の無料新作を上げます! 必ず!きっと!おそらく!たぶん!

          今月は夜行堂奇譚の無料新作を上げます! 必ず!きっと!おそらく!たぶん!

          プロフィールというほどもないもの。

           改めまして。  嗣人と申します。  プロフィールのようなものを作っておこうかと思いまして、作り始めた次第であります。  生まれも育ちも熊本県は荒尾市。玉名の工業高校を卒業して温泉県の大学に通いまして、西洋史専攻の癖に民俗学研究室に入り浸っておりました。  就職の為に福岡に出てきて、以降、現在に至るまで福岡県民として生きておりますが、熊本県民の誇りは忘れたことはありません。故郷の荒尾市に行くのは年に一度程度ですが、懐かしの書店さんやパン屋さんへ顔を出しております。  小説家

          プロフィールというほどもないもの。

          小噺《好々餃子》

           私の生まれ育った家庭では餃子は家で食べるものではなく、中華料理店で家族と食す一品に過ぎなかった。数ある中華料理の内の一皿に過ぎず、空芯菜などの皿と同様にメインの料理に彩りを加える惣菜といった立ち位置だった。  しかし、それは我が家の常識であり、他家の非常識であったらしい。 「餃子はメイン料理だろ? 餃子を食う時には餃子が主役! 米と餃子だけでいいの。今夜は家で餃子にしようぜ」 休日の昼間に二人でなんとなしにテレビを眺めていると、地方のB級グルメ特集が始まり、宇都宮地方

          ¥500

          小噺《好々餃子》

          ¥500

          2024年1月 メンバーシップサイン本抽選結果

           新年あけましておめでとうございます。  そう安易にお祝いの言葉を口にするのも難しい出来事が本日起こってしまいました。  石川県の能登半島を震源地とした地震が元日の夕方に発生、多くの被災者の方が今もなお大変な困難の中にあります。  そんな最中に不謹慎という声もあるかも知れませんが、私は私のすべきことを成そうと思います。

          ¥500

          2024年1月 メンバーシップサイン本抽選結果

          ¥500

          「実話怪談」踏みつけるもの

           大分県某所。  時代は昭和三十年頃。  仮に、佐山さんとしておく。         ◆  彼がまだ地元で学生をしていた頃、今は使われなくなった県道に面した想念寺という寺院の裏手に、とかく評判の悪い家があった。  石見家という。  老いた両親と中年の息子が暮らしていたが、とにかく素行が酷かった。父親の方は金に困ると隣近所へ借金を頼みにやってきて、小銭でもなんでも幾らか渡すまで帰ろうとしない。母親の方もやれ醤油が足りない、味噌が切れた、と言ってはにこやかに家にやって

          「実話怪談」踏みつけるもの

          「子声手家」

           早朝一番にやってきた依頼人は県営マンションに暮らす二十代の若い夫婦で、須川さんと言った。 「最初は、物置にして使っていない部屋から物音がしたんです」  酷く怯えた様子で話す奥様はお腹が大きく、聞けば妊娠七か月だという。家を建てるまでは引っ越したくないので、物音をどうにかして欲しいということだった。 「妻の妊娠が判明する、少し前から起こり始めたんです。いつの間にか家のあちこちから気配を感じるようになって。子どもの笑い声が聞こえたりするんです。まるで小さな子どもが家の中に棲みつ

          ¥500

          「子声手家」

          ¥500

          実話怪談「ブルーシート」

           Kさんから聞いた話をしようと思う。  大学時代からの友人である彼は、大学進学の際に鹿児島から大分へと移り住み、アパートで一人暮らしを始めた。卒業し、勤め人となってからも引っ越すことはなく、十年近く同じ部屋に住んでいた。特に理由もなかったから、という彼は一事が万事こんな調子で、あまり変化を好むタイプの人間ではない。  そんな彼が、つい最近とうとう引っ越した。聞けば家に幽霊がやってくるからだ、という。

          ¥500

          実話怪談「ブルーシート」

          ¥500

          夜行堂亜譚 残香

           私がまだ小学生だった頃の話だ。  当時、私の家は学校から徒歩で30分ほどの場所にアパートを借りて暮らしていた。  そこには歳の近い子供がたくさんいて、みんなでよく近くの空き地で鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたりして遊んだ。夏の季節なら、それこそ陽が暮れるまで遊んでいたのをよく覚えている。  男の子も女の子もいたけれど、女の子同士で遊ぶのはやはり楽しかった。それぞれが自分の大切な人形を家から持ってきて、空き地に広げた敷物の上でお人形遊びをするのが、何よりも一番好きだっ

          ¥500

          夜行堂亜譚 残香

          ¥500