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羽をもがれた妖精は復讐を謡う 小噺;恵方巻き

 テーブルには大判の海苔に酢飯、そして干瓢や出汁巻き玉子、胡瓜などが用意されている。
他にも、ナギによるリクエストで海老やカニカマ、ツナマヨにアボカドなどがあった。
「なぁ、そんなに食べれるのか…?」
と、俺はナギの手元を見て問うた。
「いけるっ!」
とナギは海老とアボカドの上にツナマヨを載せる。クルッと巻いて、どうだっ!と得意げに俺に見せてきた。
その様子は可愛いのだが、それよりも気になるのは、それが何本目なのかと言う事である。
「一応聞くが、今から食べるのは一本だよな?」
「……」
そっと目を逸らすナギ。俺は呆れつつ、自分の分を作り始めたのだった。
 黙々と食べ終えると、ナギは先程作った恵方巻きを渋々冷蔵庫に仕舞った。流石に食べきれないと判断したらしい。
俺は食後のコーヒーを飲みつつ、先程の二人並んで同じ方角を向きながら食べると言うシュールな様子を思い出す。少し可笑しく思い、ふふっと笑ってしまった。
「今年は南南東だったが、どうやって決めているんだ?」
俺の問いに、ナギは「干支の十干を使っているよ」と答えた。
「そもそも干支は十二支と十干の組み合わせで、計60種類ある」
「60?12×10で120じゃないのか?」
俺の疑問にナギは首を横に振った。
「十干は甲(きのえ)・乙(きのと)・丙(ひのえ)・丁(ひのと)・戊(つちのえ)・己(つちのと)・庚(かのえ)・辛(かのと)・壬(みずのえ)・癸(みずのと)からなり、それぞれ西暦の1の位で
甲:4
乙:5
丙:6
丁:7
戊:8
己:9
庚:0
辛:1
壬:2
癸:3
と分けられる。そして十二支と十干の組み合わせは奇数同士、偶数同士になるんだ」
ナギの応えに俺は「あぁ、だから60か」と納得する。
例えば十二支の子(ネズミ)は『乙、丁、己、辛、癸』の5つの組み合わせしか出来ない。それが12個ある訳だから、5×12で60種類。
「そこから4つに方角を分類するんだ」
と一息つくようにナギはコーヒーを飲む。
「ちなみに、十二支は動物が当て嵌められているが、本来は植物の成長過程を示してたりするんだけど…」
チラッと俺を盗み見るナギ。俺は首を横に振った。
「今日はもういい。腹一杯だ」
正しくは脳一杯、だろうか。
俺の言葉にナギは苦笑したのだった。


小説家になろうでも連載してます。
☆同盟編、☆過去編を経て、現在☆交錯編を投稿中。
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