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羽をもがれた妖精は復讐を謡う-小噺②

陽もだいぶ落ちてきた頃、俺たちは設置されていたテントの中にいた。多くの人が利用出来るように椅子はなく、立ち飲み用の丸テーブルが置かれている。
夕飯代わりに、俺たちは大量に買った食べ物を広げた。
「焼きソーセージは定番だよなぁ」
「ライプクーヘンも美味しいっ」
林檎のムースがお気に召したのか、たっぷりと付けるナギ。俺は「ビールにすれば良かった」と呟く。ちなみに今飲んでいるのはメットだ。
「あ、聖歌隊が出てきた」
ナギはこんがり焼けたマッシュルームを食べながら、先ほどまで暗かった野外ステージを示した。このマーケットのイベントの一つだ。イベントスケジュールは確認していないが、ある一定間隔で演奏しているようだ。
コーラスが聞こえる。
「昼間は鉄琴で赤鼻のトナカイが流れていたよな」
「そうだなーーー今はなんの曲か知ってる?」
ナギはプンシュを飲みながら、聖歌隊に目を向けて問う。
ナギの問いに、俺は「マザーグースだろう?」と答えた。
「クリスマスの12日、だっけ」
「正解ーーーなら、ここで問題だ」
ナギの目がキラリと光る。
「12日間で一番多く贈られたものってなんだ?」
「…ちょっと待て」
俺はまず、歌詞を思い出そうとする。つまり12日間の各合計を出せって事だろう?
「えっと…まず出てくるのがヤマウズラ、キジバト、雌鶏(めんどり)ーーー俺、全部は知らないんだけど…」
「ならヒントとして12日目に貰う順番は
太鼓叩き、笛吹き、伯爵、貴婦人、乳搾り、白鳥、ガチョウ、金の、クロウタドリ、雌鶏、キジバトそしてヤマウズラだ」
ナギは「勘で答えるなよ?」と意地悪そうに笑う。
俺はメットを置くと顎に手を当てて呟いた。
「マザーグースは積み歌や数え歌だからな…歌詞が一つずつ増えていくのが特徴だろ」
1日目と2日目は知っている。ヤマウズラとキジバトだ。ヤマウズラは1羽ずつ、キジバトは2羽ずつ増えていく。つまり12日目に出てくるのが太鼓叩きの12人。
11日目に増える歌詞は『11人の笛吹き』だ。
よって太鼓叩きの合計は12人、笛吹きは22人(11人×2日)となる。その要領で計算していけばいい。
と、すると
太鼓叩きが12人
笛吹きが11人
伯爵が10人
貴婦人が9人
乳搾りが8人
白鳥が7羽
ガチョウが6羽
金の輪が5つ
クロウタドリが4羽
雌鶏が3羽
キジバトが2羽そしてヤマウズラが1羽ずつ増えていく事になる。となると…
太鼓叩きが12人×1
笛吹きが11人×2
伯爵が10人×3
貴婦人が9人×4
乳搾りが8人×5
白鳥が7羽×6
ガチョウが6羽×7
金の輪が5つ×8
クロウタドリが4羽×9
雌鶏が3羽×10
キジバトが2羽×11
ヤマウズラが1羽×12
上記を全て計算する必要はない。何故なら『かける数』と『かけられる数』の組み合わせは「1、12」「2、11」「3、10」「4、9」「5、8」そして「6、7」の6つだけだ。
つまり
「42羽のガチョウと白鳥か」
「正解」
ナギはポメスを食べる。いつも間にか、半分以上食べられていた。まさかーーー
「思ったより、計算に時間がかかったな」
と、悪戯にナギは笑ったのだった。

後書き
小説家になろうで投稿した内容です。

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