マガジンのカバー画像

したたかに生き愛を生むガイドブック

28
茶々から学ぶ、したたかな生き方
運営しているクリエイター

#女

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十三話 すべて自分が望み、引き寄せた現実

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十三話 すべて自分が望み、引き寄せた現実

すべて自分が望み、引き寄せた現実

慶長19年8月、秀頼は秀吉の17回忌に京都の方広寺で大仏の開眼供養の準備をしていた。
5年の月日をかけ、大仏殿を再建した。
そして4月に出来上がった梵鐘に「国家安康」と記した。それを知った家康が吠えた。「これは家康の名前を分割したもので、豊臣は徳川家康の死を願っている」そう言いがかりをつけた。
家康は秀頼が成長するにつれ、彼に人望が集まるのを怖れていた。
何らか

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十二話 自分を束縛しているのは、自分

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十二話 自分を束縛しているのは、自分

自分を束縛しているのは、自分

妹の江の長女で、家康の孫娘でもある千姫。豊臣に嫁に入った千姫は秀頼にひかれ、私にあいさつに来た。

「お母様、どうぞよろしくお願いいたします」と頭を下げた七歳の千姫の愛らしさにみなは、ほぉ、とため息をもらした。私は秀頼の母として威厳を保ち

「千姫、これから豊臣のために尽くして下さい」と言った。千姫は神妙な顔でこっくりうなずいた。私と千姫のやりとりを、秀頼が少し心配

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十一話 子どもはいつも親の期待に添って生きようとする

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十一話 子どもはいつも親の期待に添って生きようとする

子どもは、いつも親の期待に添って生きようとする

関ヶ原の戦いで勝利した徳川家康は、我が物顔で大阪城に入ってきた。
私達の君臨する城に堂々と入城する家康に腹が立ったが、秀頼のために怒りを押し隠し、丁重に接待した。
他の大名達の前で
「このたびの戦の勝利は、家康殿のおかげです」
と花を持たせた。

そして家康に杯を持たせ、酒を注いだ。
「ささ、家康殿、どうぞ、その杯を秀頼にお渡し下さい。」
家康は一

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十話 愛しすぎると人は・・・

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十話 愛しすぎると人は・・・

愛しすぎると人は・・・

秀吉という後ろ盾を失った私は、秀吉の遺言に従い秀頼と共に大阪城に移った。私は息子の生母、豊臣の母として誇り高い女王のように胸を張って入城した。秀吉亡き後のこの城こそ、私の城だ、という感覚があった。ようやく私は自分の根城を見つけた。だが女王はもう一人いた。一見穏やかな顔で私達を出迎えた寧々だ。秀吉は私に、自分の亡き後は寧々と手を取り合い秀頼を補佐するよう命じていた。あの女と

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十九話 自分の存在価値を認める

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十九話 自分の存在価値を認める

自分の存在価値を認める

三歳の秀頼と私は伏見城に移り、秀吉と暮らし始めた。この年、秀吉は自分が亡くなった後でも豊臣政権が盤石であるよう、秀頼に継承するためのバックアップ体制を整えた。
秀吉はいつも幼い秀頼を抱きかかえ、家来達との会議や彼らに命令を下した。秀吉なりの帝王学を、秀頼に肌身で学ばせていた。
秀頼は自然と上に立つものの器に育っていった。私はそれが何よりもうれしく、誇らしかった。

慶長3

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十八話 運は強気なものに味方する

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十八話 運は強気なものに味方する

運は強気なものに味方する

日に日に、秀吉の拾への溺愛ぶりが増していった。鶴丸の時と同じように、いやそれ以上に秀吉は拾いを可愛がっている。

私も拾が、可愛くて愛おしくたまらない。
毎日我が子を抱いて自分の乳を与えるなど、鶴丸の時にはなかった。
乳を飲ます内、これが我が子、という愛着がますます深くなる。
乳はいくらでも湧いて出た。

私が拾に乳を飲ませている姿を、秀吉は目を細めうれしそうに見ていた

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十七話 これからも私についてきて

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十七話 これからも私についてきて

これからも私についてきて

私は生まれたばかりの赤子を抱きしめた。お湯で洗われピカピカになった、ふわふわしたあたたかい塊。この子は私の愛で命だ。それをもう一度手に入れた喜びと安堵で、泣きそうになった。その日から私は秀吉に言われた通り、乳母ではなく自分の乳を口に含ませた。赤子は、顔を真っ赤にし無心にゴクゴクと乳を吸う。その様子が、愛おしくてたまらない。そばで乳母の大蔵卿局も目を細め、うれしそうに見て

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十六話 欲しいものを欲しいと望み手を伸ばすからこそ、与えられる

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十六話 欲しいものを欲しいと望み手を伸ばすからこそ、与えられる

欲しいものを欲しいと望み手を伸ばすからこそ、与えられる

この時期、元号が天正から文禄に改元された。

もともと元号が変わるのは、天皇が譲位したり、災いを改めるためだった。だがこのたびの改元は、そうではない。
秀吉から秀次に関白の世襲をしたためだ。それはこれから天皇に変わり、武家が天下を支配する、と世間に知らしめるためだった。
まだ妊娠していない私はその現実に唇を噛み、辛い思いでただ眺めるしかなか

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十五話 子種をよこせ!

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十五話 子種をよこせ!

子種をよこせ!

鶴丸を失った秀吉は、姉の息子秀次を養子に迎えることを私に告げた。私は「必ずまた子を産みますから、それは止めて下さい!」と嘆願したが、秀吉は耳を貸さなかった。早く妊娠して、豊臣の後継者の座を取り戻さなければ、と私は焦った。だが肝心の秀吉は鶴丸を失ったショックで男としての自信も失い、私の元に通うことも少なくなった。このままではいけない、と私は策を練った。

 翌日、私は秀吉と秀次、豊

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十四話 I am a woman 女の戦

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十四話 I am a woman 女の戦

I am a woman 女の戦

鶴丸が私の元からいなくなった・・・・・・
この世を去った・・・・・・
私は呆然としたまま、まだ実感がない。

朝、目が覚めると無意識に鶴丸の姿を探す。
いつものくせで
「鶴丸は、今朝はどうした?」
と大蔵卿局に尋ねる。

彼女は、目を赤くし
「鶴丸君は、旅立たれました・・・」と、たもとで涙をふく。
彼女の言葉と姿を見て、私は永遠に鶴丸を失った事を思い出す。思い出

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十三話 お金は何のために使う?

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十三話 お金は何のために使う?

お金は何のために使う?

鶴丸は、高い熱を出して寝込んだ。

鶴丸は真っ赤な顔で、ハァハァとせわしなく息をする。私は鶴丸の熱い小さな手を握りしめ、代われるものなら、わが身と変わりたい、と無理なことを思った。それくらい鶴丸は苦しそうだった。こんな場合、母親に何ができるのか?私は鶴丸の手を握り、名前を呼び、天に祈るしかなかった。

大蔵卿局が私の代わりに、鶴丸の乳母や大阪城に残っていた者たちに「毒は・

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十二話 私が一番愛されている

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十二話 私が一番愛されている

私が一番愛されている

聚楽第で過ごした幸せな時間は、シャボン玉のように儚かった。この年、私は何者かの念に押されるよう、慌ただしく住いを移ることになった。

秀吉が天下統一する上で、まだ手に入れてなかったのは関東と東北だった。
秀吉は関東の北条氏や諸大名達に従うよう促したが、北条氏政・氏直親子は従わなかった。
彼らと戦うため秀吉は春、小田原征伐に出陣した。
その際、私と鶴丸は大阪城に帰るように言わ

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十一話 give and takeそれも愛の一つの形

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十一話 give and takeそれも愛の一つの形

give and takeそれも愛の一つの形

天正17年9月13日、私は鶴丸と共に大阪城に入城した。

秀吉は鶴丸が生まれた時から、彼を自分の後継者に決めた。
そのため山城淀城から大阪城まで、豊臣の権勢を誇るように絢爛豪華な大行列が従った。
大阪城に着いた私は、抱いていた鶴丸を乳母に預け、華やかな輿から降り大阪城に足を踏み入れた。
秀吉は上機嫌で、私達を迎えに来た。鶴丸を見るなり顔中をくしゃくし

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第九話 本当に欲しいものを、どれだけ自分に与えられる?

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第九話 本当に欲しいものを、どれだけ自分に与えられる?

本当に欲しいものを、どれだけ自分に与えられる?

それから私は病気を理由に、しばらく秀吉と距離を置いた。子宮が受け取った子種がしっかり根付くよう、毎日布団の上に横たわった。
治長はなに事もなかった顔で、私に仕えている。彼は私の部屋の外で番人のように私を守り、控えている。襖一枚隔てた場所に治長がいる。呼べばいつでもそばに来る。それを考えると子宮がキュン、とうずく。あの夜の深い大きな波に飲まれたエクス

もっとみる