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記事集・H

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私は蓮實重彥(蓮實重彦ではなく)の文章にうながされて書くことがよくあります。そうやって書いた連載記事や緩やかにつながる記事を集めました。
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#読書感想文

言葉をうつす言葉、文字をうつす文字(「鏡」を読む・02)

言葉をうつす言葉、文字をうつす文字(「鏡」を読む・02)


◆言葉をうつす言葉、文字をうつす文字*文字がうつすものは文字

 上は、「「鏡」を読む」という連載の第一回に書いた文章ですが、今回はそれを変奏してみます。

 言葉は言葉をうつす
 言葉は世界をうつさない
 言葉は世界ではない、世界は言葉ではない
 言葉と世界は別物

 文字は文字をうつす
 文字は世界をうつさない
 文字は世界ではない、世界は文字ではない
 文字と世界は別物

 鏡は鏡をうつす

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「鏡」という「文字」、鏡という「もの」(「鏡」を読む・01)

「鏡」という「文字」、鏡という「もの」(「鏡」を読む・01)

「「鏡」を読む」という連載を始めます。江戸川乱歩の『鏡地獄』の読書感想文です。体調というか病状が思わしくないので、この連載は不定期に投稿していくつもりでいます。

◆「鏡」という「文字」、鏡という「もの」
 江戸川乱歩の『鏡地獄』の最大の奇想は、鏡ではなく「鏡」という「文字」を真っ向からテーマにしたことだと私は思います。この短編のテーマは、鏡という「もの」ではなく、「鏡」という「文字」だと言いたい

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うつす、ずれる

うつす、ずれる

 今回は「何も言わないでおく」の続きです。見出しのある各文章は連想でつないであります。緩やかなつながりはありますが、断章としてお読みください。

 断片集の形で書いているのは体力を考慮してのことです。一貫したものを書くのは骨が折れるので、無理しないように書きました。今後の記事のメモになればいいなあと考えています。

書く、描く
「書く」のはヒトだけ、ヒト以外の生き物や、ヒトの作った道具や器械や機械

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何も言わないでおく

何も言わないでおく

 今回は「簡単に引用できる短い言葉やフレーズほど輝いて見える」という話をします。内容的には、「有名は無数、無名は有数」という記事の続編です。

 前回の「名づける」の補足記事でもあります。

*「「神」という言葉を使わないで、神を書いてみないか?」

 学生時代の話ですが、純文学をやるんだと意気込んでいる同じ学科の人から、純文学の定義を聞かされたことがありました。

 ずいぶん硬直した考えの持ち主

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名づける

名づける

 前回に引きつづき、今回も、蓮實重彥の『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』の読書感想文です。

 引用にさいしては、蓮實重彥著『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』(河出文庫)を使用していますが、この著作は講談社文芸文庫でも読めます。

*あとで名づける、とりあえず名づける

 蓮實重彥の『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』を読んでいると、「名づける」、「命名する」、「名」という言葉が目につきます。目につく箇所

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「ここには何もない」という「しるし」

「ここには何もない」という「しるし」

space・空間・空白、sense・方向・意味、order・順序・序列
*「空白・区切り・余白」の捏造

 蓮實重彥『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』所収の「Ⅰ肖像画家の黒い欲望――ミシェル・フーコー『言葉と物』を読む」を読んでいて頭に浮ぶのは、英語の「space」と、その語義である「空間」と「空白」です。

 簡単に言うと、

・「空間」とは現実の立体に「ある」もの、または「感じられる」もの
で、

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読みやすさについて

読みやすさについて

 今回は、「読みにくさについて」に引き続き、執筆中の記事の一部を独立させて、先に投稿することにします。これは体調が良くないための措置で、全体を一気に書こうとして無理をしないようにとの配慮からです。

 現在執筆している記事のタイトル(仮題)は「sense・意味・方向、order・順序・序列、space・空間・空白」です。前回の「読みにくさについて」では「sense・意味・方向、order・秩序・序

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人間椅子、「人間椅子」、『人間椅子』

人間椅子、「人間椅子」、『人間椅子』

 今回は「立体人間と平面人間」の続きです。それぞれが別の方向をむいた言いたいこと(断片)がたくさんあり、まとまりのない文章になっています。申し訳ありません。

 お急ぎの方は最後にある「まとめ」だけをお読みください。

人間椅子から「人間椅子」へ
 江戸川乱歩の『人間椅子』の文章は朗読に適していると思います。音読してすらすらと頭に入ってくる文体で書かれているのです。特に難しい漢語が使われているわけ

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タブロー、テーブル、タブラ(『檸檬』を読む・02)

タブロー、テーブル、タブラ(『檸檬』を読む・02)

 引きつづき、梶井基次郎の作品を読んでいきます。今回も『檸檬』です。

・「共鳴、共振、呼応(薄っぺらいもの・06)」:対象作品『愛撫』
・「出す、出さない、ほのめかす(『檸檬』を読む・01)」:対象作品『檸檬』

 引用にさいして使用するのは『梶井基次郎全集 全一巻』(ちくま文庫)ですが、青空文庫でも読めます。

◆表象に対する紡錘形の立体のささやかな抵抗*タブロー、テーブル、タブラ

 丸善の

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立体、平面、空白(薄っぺらいもの・05)

立体、平面、空白(薄っぺらいもの・05)

 今回は、蓮實重彥著『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』のうち、「Ⅰ肖像画家の黒い欲望――ミシェル・フーコー『言葉と物』を読む」をめぐっての読書感想文です。

 この「フーコー論」は、「薄っぺらいもの」というシリーズを始めるきっかけになった文章の一つでもあります。初めて読んだのはずいぶん前のことですが、以来私にとって気になる文章であり続けています。

引用文の余白に書く

*「顔と視線との離脱現象」

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「かける」と「かける」(かける、かかる・03)

「かける」と「かける」(かける、かかる・03)


かけるとかける
 かけるとかける。
「かける」と「かける」。

 上のフレーズは「AするとAする」と読めば、「Aすると(その結果)Aする(ことになる)」とも、「「Aすること」と「Aすること」」とも読めます。

 いずれにせよ、前者と後者は別物でなければなりません。

     *

 かける、掛ける、懸ける、架ける、賭ける、欠ける、駆ける、翔る、駈ける、掻ける、書ける、描ける、画ける

「かける

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鏡、時計、文字

鏡、時計、文字

「わける、はかる、わかる」への投稿後の加筆が、かなり大幅なものとなってしまったので、加筆した二つの文章を独立させ、新たな記事にしました。ふらふらして申し訳ありません。

「同一視する「自由」、同一視する「不自由」」は蓮實重彥の文章にうながされて書いたものであり、「「鏡・時計・文字」という迷路」は古井由吉の『杳子』の冒頭における杳子と「彼」の出会いの場面について書いたものです。

 私は古井由吉の作

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振りまわされる(線状について・05)

振りまわされる(線状について・05)

 この記事では、ミシェル・フーコーとノーム・チョムスキー、およびジャック・ラカンの動画と、古井由吉と蓮實重彦の作品と著作からの引用文を題材にして、生きていないものの身振りに「振れる」行為について考えてみます。

Ⅰ 人の身振りに振られる
 最近、ぼーっとしながら見ている動画あります。ぼーっと見ていると、なんとなく楽しいのです。

ミシェル・フーコー、ノーム・チョムスキー

 以前はミシェル・フーコ

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『杳子』で迷う

『杳子』で迷う


謎解き
 小説を読むさいに、何らかの見立てを設ける場合があります。見立てなんて言うと、もっともらしく響きますが、図式的な先入観をもって読書に臨むことでしょう。

 ようするに決めつけて読むわけです。

 たとえば、謎解きです。ジャンルがミステリーの小説であれば、謎解きがテーマなはずですから、「正しく」謎を設定して、「正しく」解いていけば、「正しい」解にたどり着けるでしょう。

     *

 

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