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職業、フォトグラファー 沖縄と神戸のハーフ ギターと歌があるから やっと人らしく 生き…

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職業、フォトグラファー 沖縄と神戸のハーフ ギターと歌があるから やっと人らしく 生きていけてる気がする。

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記事一覧

「美しい」って何なんだ

日が沈むころ 白い砂で有名なビーチでぼんやりしていると 子供を三人連れた夫婦がやってきた 父親はなぜか大量のゴミを持参しており ビーチの入り口に備え付けられていた …

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1か月前
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白浜

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1か月前

線香花火

今年の夏の初め、決めた事 「線香花火をする」 大人になると意外としなくなる 夏の夜遊び 数年に一回ふと、思い立って じんわりと線香花火を眺めていたりするのだが 今年…

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1か月前
4

南方熊楠の宇宙

博物学者であり生物学者であり 民俗学者なんていう トリプルな経歴の 江戸末期生まれの人物 南方熊楠の記念館を訪れた その日は父親の命日 自分の人生が大きくシフトして…

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1か月前
6

珠美の島ー東の奥武の記憶ー

久米島本島に寄り添う二つの島の 東側に浮かぶ小さな島 今は「オーハ島」という名前らしいが それ以前の呼び名は「東(あがり)の奥武(おう)」 明治時代に二家族が入植…

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2か月前
14

とある音楽プロジェクトのお話-7話

6話から、4年経った 父の死とコロナとで それどころでは無くなっていた もうやめようと 何度も思ったのに その度に いろんな出来事が起こって やめない選択が繰り返され…

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1年前
2

珠美の島〜18年の時を経て〜12話

「はい、これ着てね、  濡れるから靴は脱いでこれ履いてね」 宗形さんから ライフジャケットと マリンシューズを借りる 潮が引くと 歩いて渡れる程の 浅瀬になるので 潮…

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2年前
1

珠美の島〜18年の時を経て〜最終話

店を早々に閉めて 4人で夕食へ 戦後、間もなく出来た 公設市場のひとつ ここ栄町市場も 来る度に人の気配は薄れて お昼間でも半分以上の シャッターは閉まったまま 匂い…

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2年前
3

珠美の島〜18年の時を経て〜19話

モノレールで安里へ戻り 栄町の食堂へ お昼時は とっくに過ぎていたので ひとり、カウンターに お客さんがいるのみ 「おかえり、  遅かったねー  ウートートできたねー…

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2年前
1

珠美の島〜18年の時を経て〜18話

第二次世界大戦時 激しい地上戦の場となった 前田高地とも呼ばれる 浦添城跡 1945年4月25日 進撃が始まり 当初は日本軍が優勢だったが 2週間足らずで アメリカ連合国軍に …

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2年前
1

珠美の島〜18年の時を経て〜17話

宿泊先の ホテルへ向かう 島の中心の イーフ地区からは 離れたホテルなので 帰りながら 夕飯時に開いていそうなお店を いくつか教えてもらった あっという間なのに 何日…

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2年前
1

珠美の島〜18年の時を経て〜16話

善田公園を出て みどり丸の慰霊碑を探す 草や木々、空以外には 何もない道を走って行くが それらしい何かは見つからない 「今あるかどうかはわからないよ」 宗形さんの…

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2年前

珠美の島〜18年の時を経て〜15話

久米島本島へ 戻るために船へ 潮流が変わるから 行きほど濡れないと思うよ、 と戸田くんが言った通り 飛んでくるしぶきに 視界が遮られる事なく 行きよりも 穏やかな海を…

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2年前

珠美の島〜18年の時を経て〜14話

「井戸は  多分この辺りのはずよ」 宗形さんが指すその先は 亜熱帯の植物に 隙間なく覆い尽くされた密林 道どころか 井戸まで全部 覆い尽くされたか、 あまりにも風景…

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2年前

珠美の島〜18年の時を経て〜13話

宗形さんの後ろを 三人並んで着いて歩く 「鬱蒼とした」 と言う言葉が ぴったり当てはまる 無人島になった期間の間に 人が住む以前の 自然の島の姿へと 戻っていったんだ…

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2年前
1

珠美の島〜18年の時を経て〜12話

「はい、これ着てね、  濡れるから靴は脱いでこれ履いてね」 宗形さんから ライフジャケットと マリンシューズを借りる 潮が引くと 歩いて渡れる程の 浅瀬になるので 潮…

Rangok
2年前
「美しい」って何なんだ

「美しい」って何なんだ

日が沈むころ
白い砂で有名なビーチでぼんやりしていると
子供を三人連れた夫婦がやってきた
父親はなぜか大量のゴミを持参しており
ビーチの入り口に備え付けられていた
既に溢れかえっているゴミ箱の横に
何の躊躇もなくドサッと置いて浜へ歩いて行った

「白ーい!」
と言って砂を触ろうとする子供めがけて
「汚いから触ったらダメ!」
と怒る母親
海辺近くまで移動していそいそと花火を出し
子供たちと夏の夜を楽

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線香花火

線香花火

今年の夏の初め、決めた事
「線香花火をする」

大人になると意外としなくなる
夏の夜遊び
数年に一回ふと、思い立って
じんわりと線香花火を眺めていたりするのだが
今年はすぼ手と長手のふたつを比較してみた

数年前は
すぼ手が一番奇麗だと思った記憶があるのだけど
今回は長手に軍配

製品の差や個体差があるにしろ
火花の散り方や
燃え落ちるまでの好みも
もしかしたら変わったのかも知れない

大人が好き

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南方熊楠の宇宙

南方熊楠の宇宙

博物学者であり生物学者であり 民俗学者なんていう
トリプルな経歴の 江戸末期生まれの人物
南方熊楠の記念館を訪れた

その日は父親の命日
自分の人生が大きくシフトしていく
スタートでもある日

自然公園の一角にあり
人がわんさか来る施設では無いので
静かに観るつもりだったが
元気すぎる小学生の団体とタイミングが被ってしまった

「…う…集中、集中」
無理くり作った瞑想状態で見学

主要な展示物は

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珠美の島ー東の奥武の記憶ー

珠美の島ー東の奥武の記憶ー

久米島本島に寄り添う二つの島の
東側に浮かぶ小さな島
今は「オーハ島」という名前らしいが
それ以前の呼び名は「東(あがり)の奥武(おう)」

明治時代に二家族が入植し
1960年代には100人を超える島民がいたそうだが
その後徐々に人は減り、2000年初頭には数人のみが暮らす
静かで小さな島に戻っていた

私のおじぃとおばぁは 久米島の人だ
おじぃが亡くなったあと
お墓だけがその「東の奥武」に

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とある音楽プロジェクトのお話-7話

とある音楽プロジェクトのお話-7話

6話から、4年経った

父の死とコロナとで
それどころでは無くなっていた

もうやめようと
何度も思ったのに
その度に
いろんな出来事が起こって
やめない選択が繰り返された

おかげて捨て身なので
楽曲に関して
容赦ない砲撃浴びせ
一回仕上がった音は
全てお蔵入りとなった

プロジェクト=
ボーカリストオーディション

オリジナル音源作ります!
バックアップはプロが全力で!な

オリジナル曲作って

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珠美の島〜18年の時を経て〜12話

「はい、これ着てね、
 濡れるから靴は脱いでこれ履いてね」

宗形さんから
ライフジャケットと
マリンシューズを借りる

潮が引くと
歩いて渡れる程の
浅瀬になるので
潮が満ちている間に船を出す
今日は14時頃までが
満潮の時刻だ

港に着き、船に乗り込む

空はどんよりしてきたが
雨は降っていない

「はい、ここ座ってね」

船の真ん中あたりに
渡されている板の上に
母、戸田くんと三人で腰掛けた

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珠美の島〜18年の時を経て〜最終話

珠美の島〜18年の時を経て〜最終話

店を早々に閉めて
4人で夕食へ

戦後、間もなく出来た
公設市場のひとつ
ここ栄町市場も
来る度に人の気配は薄れて
お昼間でも半分以上の
シャッターは閉まったまま

匂いだけ残して

ただ
反対に夕暮れ時になると
あちらこちらに出来た
居酒屋に明かりが灯りはじめ
外にあるテーブルと椅子で
それぞれの乾杯が始まる

この旅でお気に入りになった
クラフトピール
75(ナゴ)ピールを
外のカウンターで一

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珠美の島〜18年の時を経て〜19話

珠美の島〜18年の時を経て〜19話

モノレールで安里へ戻り
栄町の食堂へ

お昼時は
とっくに過ぎていたので
ひとり、カウンターに
お客さんがいるのみ

「おかえり、
 遅かったねー
 ウートートできたねー?」

母の小学校時代からの親友
きみこさんと
旦那さんであるまーぼぅが
切り盛りする食堂

いつ来ても何も変わらない
自分の家のように
帰って来たな、と
ほっとする場所

「お腹すいたねー、何する?
 ソーキそばね?」

そこは

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珠美の島〜18年の時を経て〜18話

珠美の島〜18年の時を経て〜18話

第二次世界大戦時
激しい地上戦の場となった
前田高地とも呼ばれる
浦添城跡

1945年4月25日
進撃が始まり
当初は日本軍が優勢だったが
2週間足らずで
アメリカ連合国軍に
占領された

琉球王国時代の王
英祖王と尚寧王の眠る場所

そそり立つ高台に
びっしりとお墓が建ち並ぶ

タクシーを降りたのはいいが
広すぎて場所の検討がつかない

眺めのいいところだなー
海も見渡せるし
なんて、のんきな

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珠美の島〜18年の時を経て〜17話

珠美の島〜18年の時を経て〜17話

宿泊先の
ホテルへ向かう

島の中心の
イーフ地区からは
離れたホテルなので
帰りながら
夕飯時に開いていそうなお店を
いくつか教えてもらった

あっという間なのに
何日も経ったような
矛盾した感覚に包まれる
濃密な時間

何年分もの感情の揺れが
たった数時間で
一気に凝縮したような

ホテルの玄関先で
ふたりで並んで
写真を撮ってもらった

撮るのは好きだけど
撮られるのは苦手なので
少し照れく

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珠美の島〜18年の時を経て〜16話

珠美の島〜18年の時を経て〜16話

善田公園を出て
みどり丸の慰霊碑を探す

草や木々、空以外には
何もない道を走って行くが
それらしい何かは見つからない

「今あるかどうかはわからないよ」

宗形さんの言葉がよぎる

「もういいよ、行くの、諦める」
「いいの?」
「うん」

日が沈む時間も
近づいてきていたので
これ以上やみくもに
車を走らせるのは
申し訳無いなと

「五枝の松行った事ある?」
「ううん、ない」
「じゃ、せっかくだ

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珠美の島〜18年の時を経て〜15話

珠美の島〜18年の時を経て〜15話

久米島本島へ
戻るために船へ

潮流が変わるから
行きほど濡れないと思うよ、
と戸田くんが言った通り
飛んでくるしぶきに
視界が遮られる事なく
行きよりも
穏やかな海をすべり
本島に到着

岸に着く前に船着場に見えた
戸田くんの船を近くで見たくて
宗形さんの船を降りて
桟橋を渡る

桟橋の左手
「あそこの、ほら、ベージュ色の」

船体に
英語で名前が書いてある

「船の名前は神様?」
「そうそう、

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珠美の島〜18年の時を経て〜14話

珠美の島〜18年の時を経て〜14話

「井戸は
 多分この辺りのはずよ」

宗形さんが指すその先は
亜熱帯の植物に
隙間なく覆い尽くされた密林

道どころか
井戸まで全部
覆い尽くされたか、

あまりにも風景が違いすぎて
信じられない気もしてる
ほんとにここなの、って

気もしてるんだけど

どちらにしても
もう進めそうに無いし

うん、て
自分を納得させて
諦める事にした

そばまで来てるし

来てる?

これは来てるって
言えるの

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珠美の島〜18年の時を経て〜13話

珠美の島〜18年の時を経て〜13話

宗形さんの後ろを
三人並んで着いて歩く

「鬱蒼とした」
と言う言葉が
ぴったり当てはまる

無人島になった期間の間に
人が住む以前の
自然の島の姿へと
戻っていったんだろう

「ちょっと先見てくるから
 ここで待っててよー」

と宗形さんは道を右に外れ
茂みの中へと入って行った

「あー
 あったあった」

しばらくすると
茂みの中から声がして
宗形さんが戻ってきた

お墓のある方向では無いが

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珠美の島〜18年の時を経て〜12話

珠美の島〜18年の時を経て〜12話

「はい、これ着てね、
 濡れるから靴は脱いでこれ履いてね」

宗形さんから
ライフジャケットと
マリンシューズを借りる

潮が引くと
歩いて渡れる程の
浅瀬になるので
潮が満ちている間に船を出す
今日は14時頃までが
満潮の時刻だ

港に着き、船に乗り込む

空はどんよりしてきたが
雨は降っていない

「はい、ここ座ってね」

船の真ん中あたりに
渡されている板の上に
母、戸田くんと三人で腰掛けた

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