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珠美の島〜18年の時を経て〜18話

第二次世界大戦時
激しい地上戦の場となった
前田高地とも呼ばれる
浦添城跡

1945年4月25日
進撃が始まり
当初は日本軍が優勢だったが
2週間足らずで
アメリカ連合国軍に
占領された

琉球王国時代の王
英祖王と尚寧王の眠る場所

そそり立つ高台に
びっしりとお墓が建ち並ぶ

タクシーを降りたのはいいが
広すぎて場所の検討がつかない

眺めのいいところだなー
海も見渡せるし
なんて、のんきな記憶しか無く

数年しか経っていないが
既に古びれた記憶は
頼りにならず
叔父に電話が繋がるまで
30分以上あたりをうろついた

ようやく電話が繋がる

「お墓のそばまで来てるけど
 場所わかんないよー」

「あー?
 霊園の入り口の
 手前のスジグヮーさー」

「手前?大きな坂じゃなくて?」

「三本ある道の手前よー」

あ、ここか

「まっすぐ150メートル位
 行った左手にあるさね」

「150メートル過ぎたよ、
 階段あるけど」

「そそ、その階段手前、
 チンヌクヤーって書いてあるさー」

「チンヌクヤー?」

あ、あった!

ほんとだ

「久米島チンヌクヤー」

って書いてある

屋号
チンヌクヤーだったか…

記憶なんていい加減
全く憶えていなかった
昔の自分は
ずいぶん楽観的だったのか
単純に
時が記憶を抹消したのか

「わかった?
 じゃ、よろしくねー」

と言って叔父は電話を切った

掃除を済ませ
携えて来た花を供え
ゆっくりと目を閉じ
ウートート

安堵

お墓の左手に
東シナ海が広がる

あの海に押し寄せた
軍艦からの砲弾が
ここまで飛んできたんだ

今は静かな海

このままこの場所が
穏やかな場所で
あり続けてほしい

たくさんの人々の思いが
すり抜けて行った
気がした。








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