Rangok

職業、フォトグラファー 沖縄と神戸のハーフ ギターと歌があるから やっと人らしく 生き…

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職業、フォトグラファー 沖縄と神戸のハーフ ギターと歌があるから やっと人らしく 生きていけてる気がする。

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とある音楽プロジェクトのお話-7話

6話から、4年経った 父の死とコロナとで それどころでは無くなっていた もうやめようと 何度も思ったのに その度に いろんな出来事が起こって やめない選択が繰り返された おかげて捨て身なので 楽曲に関して 容赦ない砲撃浴びせ 一回仕上がった音は 全てお蔵入りとなった プロジェクト= ボーカリストオーディション オリジナル音源作ります! バックアップはプロが全力で!な オリジナル曲作ってライブはしてたが メンバー以外と音を作るなんていう 機会が無かったので 好奇心

    • 珠美の島〜18年の時を経て〜12話

      「はい、これ着てね、  濡れるから靴は脱いでこれ履いてね」 宗形さんから ライフジャケットと マリンシューズを借りる 潮が引くと 歩いて渡れる程の 浅瀬になるので 潮が満ちている間に船を出す 今日は14時頃までが 満潮の時刻だ 港に着き、船に乗り込む 空はどんよりしてきたが 雨は降っていない 「はい、ここ座ってね」 船の真ん中あたりに 渡されている板の上に 母、戸田くんと三人で腰掛けた モーターのある 後ろが運転席になっている エンジンの音が 勢いよく鳴り出し

      • 珠美の島〜18年の時を経て〜最終話

        店を早々に閉めて 4人で夕食へ 戦後、間もなく出来た 公設市場のひとつ ここ栄町市場も 来る度に人の気配は薄れて お昼間でも半分以上の シャッターは閉まったまま 匂いだけ残して ただ 反対に夕暮れ時になると あちらこちらに出来た 居酒屋に明かりが灯りはじめ 外にあるテーブルと椅子で それぞれの乾杯が始まる この旅でお気に入りになった クラフトピール 75(ナゴ)ピールを 外のカウンターで一杯だけ飲み 5年ほど前に来た時と同じ居酒屋へ 白い雑居ビルの2階にあるお店 カ

        • 珠美の島〜18年の時を経て〜19話

          モノレールで安里へ戻り 栄町の食堂へ お昼時は とっくに過ぎていたので ひとり、カウンターに お客さんがいるのみ 「おかえり、  遅かったねー  ウートートできたねー?」 母の小学校時代からの親友 きみこさんと 旦那さんであるまーぼぅが 切り盛りする食堂 いつ来ても何も変わらない 自分の家のように 帰って来たな、と ほっとする場所 「お腹すいたねー、何する?  ソーキそばね?」 そこはもちろん ソーキそばで 先に瓶ビールを開け 母と乾杯 来た、おそば お盆に

        とある音楽プロジェクトのお話-7話

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          珠美の島〜18年の時を経て〜18話

          第二次世界大戦時 激しい地上戦の場となった 前田高地とも呼ばれる 浦添城跡 1945年4月25日 進撃が始まり 当初は日本軍が優勢だったが 2週間足らずで アメリカ連合国軍に 占領された 琉球王国時代の王 英祖王と尚寧王の眠る場所 そそり立つ高台に びっしりとお墓が建ち並ぶ タクシーを降りたのはいいが 広すぎて場所の検討がつかない 眺めのいいところだなー 海も見渡せるし なんて、のんきな記憶しか無く 数年しか経っていないが 既に古びれた記憶は 頼りにならず 叔父に

          珠美の島〜18年の時を経て〜18話

          珠美の島〜18年の時を経て〜17話

          宿泊先の ホテルへ向かう 島の中心の イーフ地区からは 離れたホテルなので 帰りながら 夕飯時に開いていそうなお店を いくつか教えてもらった あっという間なのに 何日も経ったような 矛盾した感覚に包まれる 濃密な時間 何年分もの感情の揺れが たった数時間で 一気に凝縮したような ホテルの玄関先で ふたりで並んで 写真を撮ってもらった 撮るのは好きだけど 撮られるのは苦手なので 少し照れくさかったけど 小さくなっていく 戸田くんの車に めいっぱい手を振って 今回の

          珠美の島〜18年の時を経て〜17話

          珠美の島〜18年の時を経て〜16話

          善田公園を出て みどり丸の慰霊碑を探す 草や木々、空以外には 何もない道を走って行くが それらしい何かは見つからない 「今あるかどうかはわからないよ」 宗形さんの言葉がよぎる 「もういいよ、行くの、諦める」 「いいの?」 「うん」 日が沈む時間も 近づいてきていたので これ以上やみくもに 車を走らせるのは 申し訳無いなと 「五枝の松行った事ある?」 「ううん、ない」 「じゃ、せっかくだし行ってみようか」 走りながら 戸田くんが久米島に住む事になった いきさつを聞

          珠美の島〜18年の時を経て〜16話

          珠美の島〜18年の時を経て〜15話

          久米島本島へ 戻るために船へ 潮流が変わるから 行きほど濡れないと思うよ、 と戸田くんが言った通り 飛んでくるしぶきに 視界が遮られる事なく 行きよりも 穏やかな海をすべり 本島に到着 岸に着く前に船着場に見えた 戸田くんの船を近くで見たくて 宗形さんの船を降りて 桟橋を渡る 桟橋の左手 「あそこの、ほら、ベージュ色の」 船体に 英語で名前が書いてある 「船の名前は神様?」 「そうそう、神様の名前」 船の真ん中に ベンチのような細長い台 ボンベを担ぎやすくする た

          珠美の島〜18年の時を経て〜15話

          珠美の島〜18年の時を経て〜14話

          「井戸は  多分この辺りのはずよ」 宗形さんが指すその先は 亜熱帯の植物に 隙間なく覆い尽くされた密林 道どころか 井戸まで全部 覆い尽くされたか、 あまりにも風景が違いすぎて 信じられない気もしてる ほんとにここなの、って 気もしてるんだけど どちらにしても もう進めそうに無いし うん、て 自分を納得させて 諦める事にした そばまで来てるし 来てる? これは来てるって 言えるのかとか 支離滅裂 携えたお花 胸に抱えたまま 途中道を逸れて、ゆるい坂を下

          珠美の島〜18年の時を経て〜14話

          珠美の島〜18年の時を経て〜13話

          宗形さんの後ろを 三人並んで着いて歩く 「鬱蒼とした」 と言う言葉が ぴったり当てはまる 無人島になった期間の間に 人が住む以前の 自然の島の姿へと 戻っていったんだろう 「ちょっと先見てくるから  ここで待っててよー」 と宗形さんは道を右に外れ 茂みの中へと入って行った 「あー  あったあった」 しばらくすると 茂みの中から声がして 宗形さんが戻ってきた お墓のある方向では無いが 誘なわれるまま行ってみる かなりのサバイバル 「えーっ  こんなところ行くの

          珠美の島〜18年の時を経て〜13話

          珠美の島〜18年の時を経て〜12話

          「はい、これ着てね、  濡れるから靴は脱いでこれ履いてね」 宗形さんから ライフジャケットと マリンシューズを借りる 潮が引くと 歩いて渡れる程の 浅瀬になるので 潮が満ちている間に船を出す 今日は14時頃までが 満潮の時刻だ 港に着き、船に乗り込む 空はどんよりしてきたが 雨は降っていない 「はい、ここ座ってね」 船の真ん中あたりに 渡されている板の上に 母、戸田くんと三人で腰掛けた モーターのある 後ろが運転席になっている エンジンの音が 勢いよく鳴り出し

          珠美の島〜18年の時を経て〜12話

          珠美の島〜18年の時を経て〜11話

          1963年8月17日 午前11時過ぎ 200人程の乗客を乗せ 船は出航した 約1時間後 チービシと呼ばれる 波の荒い難所で 高波に襲われたみどり丸は あっという間に沈没した SOSを出す間もなく 中学生だった母は 船に乗るため 泊港まで行ったが 「もういっぱいだから」 と乗船を断られ 諦めて家に帰ったらしい 母いわく 定員を越した多くの人々を 船底にまで乗せていたそう なのでその時は 自分は乗せてもらえなかった事に 不満を持っていたと 事故の一報が伝わったのは 約4時

          珠美の島〜18年の時を経て〜11話

          珠美の島〜18年の時を経て〜10話

          「12時半過ぎに迎えに行くからね」 と、戸田くん 早めにお昼を済まし 約束の時間に フロント前で待つ 携えてきた 愛用カメラにストラップを 付けていると 後ろから声を掛けられた 「久しぶり!おまたせ!」 「戸田くん!  ほんま、まんまやねー!」 昔のままの戸田くんが オレンジ色のつなぎを着て 笑顔で立っていた 中学校卒業以来 会ってなかったけど そのままの 昔のままの 空気をまとった彼を見て なんだかほっこり 遅れて来た母と共に 戸田くんの車に乗り込む 「先に

          珠美の島〜18年の時を経て〜10話

          珠美の島〜18年の時を経て〜9話

          9時50分発 久米島行きの飛行機に乗るため 9時前に空港に到着した ホテルを出た時は 強く降っていた雨も 徐々に緩い雨に変わっていった 昨日と同じ 搭乗口で待っていると あのお母さんと女の子も やって来た 同じ飛行機予約してたんだ またしても予定時刻変更 10時20分出発になったが 荒れた天気では無かったので 昨日程不安感は無かった ようやく 乗る便の搭乗案内が流れる ゲートを抜け 飛行機まではバスで移動 あ、 やっぱりプロペラ機だ お母さん、嫌がるだろな… 母と

          珠美の島〜18年の時を経て〜9話

          珠美の島〜18年の時を経て〜8話

          国際通りを歩いていた父達に 先に声をかけたのは 母の友達からだった そのあと近くのお店で お茶を飲みながら 楽しい時間を過ごしたそうだ 翌日父達は 母の通う高校までやってきた 校門でうろうろしている 彼らを見かけた校長先生が 学校の中に彼らを招き入れたらしく 母達数名は 突然校長室に呼ばれたので びくびくしながら その場に行ってみると 昨日のヤマトンチュが そこに並んで立っていて 「来れるなら 船出を見送りに来て欲しい」と 告げられた 帰り際 脱帽して礼をする彼ら

          珠美の島〜18年の時を経て〜8話

          珠美の島〜18年の時を経て〜7話

          降りた駅からは 徒歩5分のホテル そんなに遠くはないはず、だけど 暗闇と降り続く雨のせいで 視界が悪く 行くべき方向を見失う 島に住んでいた頃とは この辺りもかなり変わっていて 手掛かりが見つからない 一旦降りた駅の階段を もう一度上がり 行くべき方向を再確認して 違う階段から もう一度地上に降りた ちらほらと飲食店の あかりが灯っているが 週末なのに静かだ 大通りから 外れているからなのか それともコロナの影響か 少し離れて 後ろを着いてくる母を 時々振り返りなが

          珠美の島〜18年の時を経て〜7話