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珠美の島〜18年の時を経て〜7話

降りた駅からは
徒歩5分のホテル

そんなに遠くはないはず、だけど
暗闇と降り続く雨のせいで
視界が悪く
行くべき方向を見失う

島に住んでいた頃とは
この辺りもかなり変わっていて
手掛かりが見つからない

一旦降りた駅の階段を
もう一度上がり
行くべき方向を再確認して
違う階段から
もう一度地上に降りた

ちらほらと飲食店の
あかりが灯っているが
週末なのに静かだ
大通りから
外れているからなのか
それともコロナの影響か

少し離れて
後ろを着いてくる母を
時々振り返りながら
スマホのナビに目を落とす

この道沿いの
コンビニを右に曲がれば
見えてくるはず

立ち止まって母を待つ

一緒にコンビニを曲がって
歩きながら
真っ直ぐ先を見つめていると


あった


目的地のホテルの
青い看板が小さく見えた

「先程予約しました阿波根です」

「お待ちしておりました、
足下の悪い中大変だったでしょう」

顔立ちはウチナーだが
落ち着いたイントネーションの
フロントの男性

台帳に二人分の住所と名前を書き
部屋へ荷物を置きに

既に20時半を過ぎている
もう彷徨く気力は無いので
ホテルの向かいにある
コンビニへ買い出し

ビールとお惣菜を
いくつかカゴに入れ、レジへ

雨で黒光りする道路を
小走りで渡り、ホテルへ戻る

濡れた上着を脱いで
缶ビールとお惣菜を並べる

とりあえず乾杯、休息

はあ、
寝る所見つかって良かった…

辿り着けたことに感謝


この辺りも変わったね、から
昔話になり
父と母の学生時代の
話へとシフトする

高校3年生

修学旅行で沖縄に来た父と
那覇に住んでた母が
初めて出会ったのは
国際通りだった。


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