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珠美の島〜18年の時を経て〜9話

9時50分発
久米島行きの飛行機に乗るため
9時前に空港に到着した

ホテルを出た時は
強く降っていた雨も
徐々に緩い雨に変わっていった

昨日と同じ
搭乗口で待っていると
あのお母さんと女の子も
やって来た
同じ飛行機予約してたんだ

またしても予定時刻変更
10時20分出発になったが
荒れた天気では無かったので
昨日程不安感は無かった

ようやく
乗る便の搭乗案内が流れる
ゲートを抜け
飛行機まではバスで移動

あ、
やっぱりプロペラ機だ
お母さん、嫌がるだろな…

母とは
同じバスに乗れなかったので
先に機体に乗り込む

隣の席には
ウチナーな男の人
仕事で島に渡るような
感じだった

出発の3分程前
ちゃんと乗って来た

1本あとのバスで到着した母は
反対側の後部座席へ

(後で聞いたら案の定
機体が見えた瞬間
引き返そうと思ったらしい
バスが戻るはず無いので
仕方なく乗ったそうだ…)

飛行予定時間は約25分
天気も回復していたので
途中、渡名喜島も見えた

18年前
東の奥武のおばぁが
言ってた言葉を思い出す

「戦争で渡名喜に渡ってさ 
 そのまま帰ってこないで 
 あの島で、死んだよ」

おばぁの弟が戦死した島

美しい島々だけど
まだ癒えないキズも
そこかしこに散らばったまま

久米島、到着
ああ、やっと着いた
昨日飛んで来れなかったから
余計に感慨深い

薄陽が差してきた
雲の合間に水色の空が見える

先に降りて母を待つ

タラップを
次々に乗客が降りてくる
皆まっすぐにターミナルへ
吸い込まれていく

が、
母は一向に降りてこない

おかしいな、
見逃したかな

とうとう
降りてくる人が居なくなった

あれ?
どこ行った?
乗ってたよね?

と思ったら、降りて来た

しかもあの小さな女の子と
手を繋いでこっちに向かってくる

???
どういうこと?
女の子、泣いてるし、?

ターミナルの入り口で
女の子と女の子のお母さんにバイバイ

「席が隣やったんよ、
で、飛行機怖いからずっと話してて」
と、母

あ、そっか
そういうことか

女の子とそのお母さん
今は那覇に住んでいるが
久米島に移住する準備で
往復している事
旦那さんはオーストラリア人で
仕事は翻訳家だという事

母からは
昔の久米島の景色
アカバナーの垣根で
覆い尽くされた
美しい家並みだったという事

色々話をしたそう
その間に女の子が母に
懐いてしまって
別れるのが悲しくて
泣いていたらしい

その瞬間に全力で
感情を表現する子ども達に脱帽
社会的常識や社交辞令に
毒され過ぎた自分が痛い、反省

ターミナルを出て
宿泊するホテルの送迎バスまで
迎えに来ていた運転手さんの
後ろを着いて歩く

陽の光で
緑の雫がきらきら
土や木々から
雨の蒸発する匂い


昔は那覇も
こんなだったのにな
なんかこの
独特なまとわりつく空気は
薄らいでしまったよな

空港から10分程でホテル到着

部屋に荷物を置いて
島に住む戸田くんに連絡をした。



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