マガジンのカバー画像

OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

1,457
私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
運営しているクリエイター

#岩波書店

カラー版 ブッダの旅 (丸山 勇)

カラー版 ブッダの旅 (丸山 勇)

(注:本稿は、2024年に初投稿したものの再録です。)

 いつも利用している図書館の新書の棚を眺めていて目についたので手に取ってみました。

 少し前に同じ岩波新書の「玄奘三蔵」を読んだところだったので、彼の足跡と重なるインド国内の仏教遺跡を紹介した内容に関心を持ったというわけです。

 本書は、多くの写真とともに本家本元のブッダの布教・伝道活動の旅程を辿ったものですが、巻末には解説として「ゴー

もっとみる
玄奘三蔵 (前嶋 信次)

玄奘三蔵 (前嶋 信次)

(注:本稿は、2024年に初投稿したものの再録です。)

 最近聴き始めたpodcast番組で「玄奘三蔵」の解説をしていて、その人物と業績に興味を持ちました。
 「大唐西域記」にトライしようかとも思ったのですが、まずは「玄奘」その人に焦点をあてた新書レベルで様子をみようと手に取った本です。

 ともかく、“途轍もない人” ですね、玄奘という人は。
 仏法のみならず諸学を極めた卓越した知力、そしてど

もっとみる
まちがえる脳 (櫻井 芳雄)

まちがえる脳 (櫻井 芳雄)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 いつも利用している図書館の新着本リストで目についた本です。

 “脳科学” 関係の本は久しぶりです。従来の脳科学の成果に対し冷静な評価を加えた論考のようで、興味をもって手に取ってみました。

 もちろん、私はこういった分野は全くのど素人なので初めて知ることばかりでしたが、それらの中から特に私の関心を惹いたものをいくつか覚えとして書き留めて

もっとみる
高峰譲吉文集 いかにして発明国民となるべきか (鈴木 淳(編))

高峰譲吉文集 いかにして発明国民となるべきか (鈴木 淳(編))

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 いつもの図書館の新着本リストの中で見つけた本です。

 高峰譲吉氏は、嘉永7年(1854年)生まれで、明治~大正期に活躍した化学者、実業家です。タカジアスターゼ、アドレナリンを発見したことで有名ですね。

 本書は、その高峰氏が自らの半生を振り返りつつ、研究・起業等への情熱を綴った文集です。
 研究者として、実業家としてアグレッシブに活躍

もっとみる
知っておきたい地球科学 : ビッグバンから大地変動まで (鎌田 浩毅)

知っておきたい地球科学 : ビッグバンから大地変動まで (鎌田 浩毅)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 いつもの図書館の新着本リストの中で見つけた本です。

 著者の鎌田浩毅さんの本は今までに「世界がわかる理系の名著」「一生モノの勉強法」等を読んでいます。
 京都大学名誉教授というタイトルのわりにはちょっと規格外的な鎌田さんの雰囲気に惹かれて、この本にもトライしてみました。

 私は、高校時代 “文系” だったので授業で習ったのは「化学Ⅰ」

もっとみる
老年について (キケロー)

老年について (キケロー)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 久しぶりにいわゆる “古典” と言われるものを読んでみたくなりました。
 かといって、大著にトライする元気もないので、とにかく「薄めのもの」をと思い手にとったものです。

 ちょっと前に読んだ五木寛之さんの「折れない言葉」という本の中で、この本の一節が紹介されていたんですね。

 ご存じのとおり、著者のマルクス・トゥッリウス・キケロは共和

もっとみる
山びこ学校 (無着 成恭 (編))

山びこ学校 (無着 成恭 (編))

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 以前から気になっていた本です。

 戦後の教育に大きな影響を与えた著作だと評されていますし、当時の生活を知る民俗学的観点からも貴重な資料とも位置づけられているようです。
 本書に収録された詩や作文を書いたのは1950年ごろの中学生とのことですから、1935年ごろの生まれの私の父母とほぼ同年代ですね。

 自分の親や兄弟が出征し、自分たち自

もっとみる
検証 政治改革 なぜ劣化を招いたのか (川上 高志)

検証 政治改革 なぜ劣化を招いたのか (川上 高志)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 いつもの図書館の新着本リストの中で見つけた本です。

 興味を惹いたタイトルではありましたが、何より、著者の川上高志くんが大学時代の友人だったというのが手に取った最大の要因です。
 大いに期待して読んでみたのですが、予想どおり重要な論点を押さえつつ、しっかりした立論が展開されていました。

 まず、著者は、本書で検証を試みた対象である「平

もっとみる
霞が関のリアル (NHK取材班)

霞が関のリアル (NHK取材班)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いたので手に取ってみました。

 政界スキャンダルや新型コロナ禍対応等に係る国会対応で霞が関官僚の常軌を逸した労働実態が話題になっていますが、本書は、昨今の「中央官僚の実態と官僚機構の構造的課題」をレポートしたものです。

 「NHK取材班」とあるので、ちょっと期待して読んでみたのですが、正直

もっとみる
ジョブ型雇用社会とは何か : 正社員体制の矛盾と転機 (濱口 桂一郎)

ジョブ型雇用社会とは何か : 正社員体制の矛盾と転機 (濱口 桂一郎)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 いつも利用している図書館の新着書の棚で目に付いた本です。

 「ジョブ型雇用」は、新型コロナ禍対策のひとつであるリモートワークの進展に伴い、日本企業においても導入が加速されつつありますが、私としてもその概要程度は頭に入れておこうと手に取ってみました。

 著者の濱口桂一郎さんは労働法・社会政策の専門家です。
 その立場からの、昨今の関係論

もっとみる
岸惠子自伝 (岸 惠子)

岸惠子自伝 (岸 惠子)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 著者の岸恵子さん。日本を代表する女優のおひとりですが、エッセイストとしても何冊も著作を世に出しています。

 私としては、岸さんが出演された映画は「悪魔の手毬唄」「女王蜂」「たそがれ清兵衛」ぐらいしか観てはいませんが、それでも流石の存在感でした。

 本書は、ご本人による自伝。岸さんの様々な面を垣間見ることができるとても興味深いエピソード

もっとみる
ブルシット・ジョブ ― クソどうでもいい仕事の理論 (デヴィッド・グレーバー)

ブルシット・ジョブ ― クソどうでもいい仕事の理論 (デヴィッド・グレーバー)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 このところ “仕事” に関係するような本はできるだけ読まないようにしているのですが、かなり話題になっているようなので、ひととおり目だけでも通しておこうと手に取ってみた次第です。

 “ブルシット・ジョブ” というのは「くだらない、どうでもいいような仕事」のことで、著者はこう定義しています。

 ひとつの「作業」という単位でブルシットなもの

もっとみる
子どもの算数,なんでそうなる? (谷口 隆)

子どもの算数,なんでそうなる? (谷口 隆)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 いつも利用している図書館の「新着書」のリストを眺めていて、目を惹いたタイトルだったので手に取ってみました。

 著者の谷口隆さんは数学者です。
 谷口さんは、子どもを相手にした算数の学びの機会を通して、数々の興味深い気づきを得ていきました。

 その中から2つ、特に印象に残ったものを紹介しましょう。

 まずは「第3話 マルとペケ」から。

もっとみる
日本問答 (田中 優子・松岡 正剛)

日本問答 (田中 優子・松岡 正剛)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 変わったタイトルだったので目に付きました。

 松岡正剛さんも著者のひとりということで挑戦することにしました。対談の相方は社会学者(法政大学総長(注:当時))田中優子さんです。

 まさにお二人ならではのとても面白そうなテーマの対談だったのですが、私にとってはちょっと荷が重すぎました。著者と読者の持っている基本的な知的素養の量と質があまり

もっとみる