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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2022年2月の記事一覧

「戦う組織」の作り方 (渡邉 美樹)

「戦う組織」の作り方 (渡邉 美樹)

(注:本記事は再録で、初投稿は2009年末です)

 ワタミはこの厳しい経営環境化においても、比較的好業績を堅持している企業です。そのワタミの総帥渡邉美樹氏は、このタイミングに社長から会長に退き、後進に経営の主導権を漸進的に移行させるという決断を下しました。

 本書は、その渡邉氏による組織論・リーダー論です。
 渡邉氏の考え方の基本軸が分かりやすく語られています。が、私はもっと臨場感・現場感のあ

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ユニクロ思考術 (柳井 正 監修)

ユニクロ思考術 (柳井 正 監修)

 ユニクロ、近年、最も注目されている企業のひとつです。

 私の家でも、毎土曜日は必ず新聞の折込チラシに目を通すとても身近な企業ですし、娘も大学生時代にアルバイトをしていました。また、以前、一緒にプロジェクトを推進したコンサルティングファームの方が数ヶ月前(注:2009年当時)執行役員で転職したこともあって、個人的にも気になっている企業です。

 さて、本書ですが、ユニクロのビジネスに関わっている

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古寺をゆく1 興福寺 (「古寺をゆく」編集部)

古寺をゆく1 興福寺 (「古寺をゆく」編集部)

 今年(注:初投稿時2009年)は、東京国立博物館で開催された「国宝 阿修羅展」が人気を博しました。

 本書は、その阿修羅像が収蔵されている奈良の名刹興福寺のガイドブックです。
 創建1300年にも及ぶ興福寺。その過去と現在のエッセンスが、コンパクトな体裁の中で要領よくまとめられています。美しい写真も豊富に収録されていて、パラパラとページに目を走らせるだけでも楽しくなる本です。

 やはり、まず

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技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか ― 画期的な新製品が惨敗する理由 (妹尾 堅一郎)

技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか ― 画期的な新製品が惨敗する理由 (妹尾 堅一郎)

コンセプトワーク 妹尾堅一郎氏の著作は久しぶりです。
 十数年前、会社のセミナーで数ヶ月間薫陶を受けて以来、非常に気になっている先生です。プロジェクト・プロデュース、コンセプトワーク、ソフトシステムズ方法論等、多くのことを学ばせていただきました。

 妹尾氏は、本書にて、技術力を事業競争力に活かす方策としての「三位一体」型経営戦略というコンセプトを提示しています。

 このように「研究開発戦略」「

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弱者の兵法 野村流 必勝の人材育成論・組織論 (野村 克也)

弱者の兵法 野村流 必勝の人材育成論・組織論 (野村 克也)

 今シーズン限り(注:最初の投稿は2009年(本投稿は再録))で楽天の監督を辞任することになった野村克也氏の人材育成論・組織論です。

 もちろん、材料は「野球」。
 何人もの有名な野球選手にまつわるエピソードも数多く紹介されているので、野球に興味のある方はいろいろと楽しめるのではないでしょうか。

 その点、本書の大半が「人材育成論・組織論」についての記述で埋められているわけではありませんが、さ

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凄い時代 勝負は2011年 (堺屋 太一)

凄い時代 勝負は2011年 (堺屋 太一)

 そういえば、堺屋太一氏の著作はほとんど読んだことがありませんでした。今回の本は、まさに今(注:最初の投稿は2009年)を扱った内容です。

 堺屋氏によると、今回の世界的な大不況も、自らの従来からの主張すなわち「知価革命」の必然の流れだと言います。

 まず、その主張のもととなる「知価革命」について説明しているくだりです。

 この知価革命の先進国であるアメリカにおいて、世界的金融不況の口火が切

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ボクは好奇心のかたまり (遠藤 周作)

ボクは好奇心のかたまり (遠藤 周作)

 遠藤周作氏の著作は、実のところ小説もエッセイも読んだことがありませんでした。
 今回は、たまたま満員電車の中でも開けるようなかさばらない文庫本が切れていたので、納戸の本棚から取り出してきたのです。1979年刊の文庫本ですが、単行本は1976年刊ということなので、かなり昔の本ですね。

 中身はと言えば、確かにユーモアに富んだ楽しい内容です。評判どおり遠藤氏は、軽妙洒脱なエッセイの書き手ですね。

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だいじょうぶ (鎌田 實・水谷 修)

だいじょうぶ (鎌田 實・水谷 修)

 現代社会の貧しさや哀しさを憂える二人が交わした往復書簡と対談をまとめた本です。

 そのうちのお一人は鎌田實氏。長野県の諏訪中央病院にて、患者の心のケアも含めた地域一体医療に長年携わっています。
 もう一人は水谷修氏。「夜回り先生」として有名です。若者の非行防止や薬物汚染の拡大防止のためのパトロールやメール・電話での相談に献身的に取組んでいます。

 お二人が本書で語られている数々のエピソードは

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巨人、大鵬、卵焼き―私の履歴書 (大鵬 幸喜)

巨人、大鵬、卵焼き―私の履歴書 (大鵬 幸喜)

 祖父が相撲好きだったので、幼い頃一緒にテレビ観戦していました。
 その頃は正に「柏鵬時代」でした。当時は、確かに私も “横綱は優勝するのが当たり前、大鵬は勝つのが当たり前” だと思っていました。

 本書は、日本経済新聞の「私の履歴書」の欄で連載された戦後最強の横綱「大鵬」関の自伝です。
 世情も角界も今の時代とは隔絶の感がありますが、未だ変わらぬ大鵬氏の信念が語られています。

 大鵬氏の自負

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「課題先進国」日本―キャッチアップからフロントランナーへ (小宮山 宏)

「課題先進国」日本―キャッチアップからフロントランナーへ (小宮山 宏)

フロントランナー 小宮山宏氏の本は「地球持続の技術」に続いて2冊目です。

 先の本は、エネルギー・資源問題が主題でしたが、今回のスコープはもっと広汎なテーマを扱っています。

 本書の中で、小宮山氏は、日本がエネルギー・資源・環境・高齢化・少子化・教育等々・・・「課題山積」の国であることを指摘しつつ、それに積極的な意味づけを行います。

 そういった「課題解決先進国」に日本がなるために必要な条件

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教養としての大学受験国語 (石原 千秋)

教養としての大学受験国語 (石原 千秋)

 タイトルが気になったので手にとってみました。

 まさに、実際の入試問題を読み、回答を考えるというプロセスを辿る変わった形式の新書です。
 現代国語の入試攻略本のようでもありますが、内容は、人文・思想関係の文章を解釈しその主張を理解することを目的にしているので、現代思想の入門書のようでもあります。したがって、想定されている読者は受験生に止まりません。大学生や社会人もターゲットです。

 まず、著

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新忘れられた日本人 (佐野 眞一)

新忘れられた日本人 (佐野 眞一)

 本書は、同名のタイトルで2008年から2009年にかけて「サンデー毎日」に連載された文章を1冊にまとめたものです。

 宮本常一氏の名著「忘れられた日本人」に大いに触発されたノンフィクションライター佐野眞一氏が、現代の「忘れられた日本人」を辿ります。

 最初に登場するのは、無着成恭氏の「山びこ学校」にまつわる人々です。

 それに続いて、中内功(正しくは土へんに刀)氏・江副浩正氏といった経済人

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アガメムノーン (アイスキュロス)

アガメムノーン (アイスキュロス)

 アイスキュロス(Aischylos 前525?~前456)は、古代ギリシャの劇作家で、ソフォクレス、エウリピデスと並ぶアテネの生んだ三大悲劇詩人です。

 アイスキュロスは高校時代の世界史で必ず登場する名前ですが、今まで実際、彼の作品を手に取ったことはありませんでした。
 今回読んだ「アガメムノーン」は、彼の代表作のひとつです。

 ストーリーは、我が子を戦争の犠牲にされた王妃クリュタイメースト

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古寺巡礼 (辻井 喬)

古寺巡礼 (辻井 喬)

 辻井喬氏の著作は、以前「伝統の創造力」という本を読んだことがあります。今回は、2冊目。「辻井喬」氏の「古寺巡礼」という組み合わせに興味をもって手に取ってみました。

 辻井氏流の面白い着眼や発想があり、私にとってもいろいろと気付きがありました。

 まずは、仏教思想理解における「仏像」の意味づけについての辻井氏の考えです。

 後世の様々な意図を呑み込んで変貌した教義よりも、不変の仏像の姿に原始

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