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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2021年12月の記事一覧

資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言 (中谷 巌)

資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言 (中谷 巌)

 最近(2009年春)、話題になっている本です。

 著者の中谷巌氏は、「経済戦略会議」での主張をはじめとしていわゆる「構造改革」路線を積極推進した中心人物でした。
 その中谷氏が、本書で、「新自由主義」に基づく自らの考えを改め、マーケット至上主義・グローバル資本主義の問題点の指摘、さらにそれらが生起させた弊害に対する改善提言を行なったのです。
 氏自ら、本書を「懺悔の書」と称しています。

 新

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大人の見識 (阿川 弘之)

大人の見識 (阿川 弘之)

 阿川弘之氏の著作は初めてかと思っていたのですが、小さいころ読んだ記憶にある「きかんしゃやえもん」の作者とのことなので、50年以上の年月を隔てた再会となります。

 まず、本書の冒頭で阿川氏は、日本人の国民性を言い表すことばとして「軽躁」という単語を挙げています。

 「軽躁」とは、「落ち着きがなく、軽々しく騒ぐこと。考えが足りないこと。また、そのさま」といった意味です。

 本書で、日本と対称的

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幕末史 (半藤 一利)

幕末史 (半藤 一利)

 あとがきによると、本書は、慶應丸の内シティキャンパスの特別講義の内容をまとめたものとのことです。話しかけるような語り口で、半藤氏流の幕末から明治初期の歴史が語られます。

 まず始めは「黒船来航」。
 嘉永6年(1853)のペリー来航は、当時の鎖国体制を激しく揺るがすものでしたが、その対応に向けての議論過程が、意外な連関を辿って幕府の終焉にも影響を与えました。

 さらに、この意見募集にはおまけ

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星界の報告 他一編 (ガリレオ・ガリレイ)

星界の報告 他一編 (ガリレオ・ガリレイ)

 ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei 1564~1642)は、ご存知のとおりルネサンス期のイタリアの物理学者・天文学者です。

 彼は、倍率32倍の手作りの望遠鏡で、木星の4衛星・月の山谷・天の川の正体等、多くの重大な天文学的発見をしました。

 本書は、それらを発表した著書と太陽の黒点に関する書簡の全訳です。

 ガリレオの考察は、観測による事実の開陳に止まりませんでした。一歩踏

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諸子百家―儒家・墨家・道家・法家・兵家 (湯浅 邦弘)

諸子百家―儒家・墨家・道家・法家・兵家 (湯浅 邦弘)

儒家 古代中国、春秋戦国時代(前770~前221年)に活躍した多くの思想家たちを諸子百家といいます。
 この諸子百家を「漢書」の芸文志では九流十家に分類しています。九流とは、(1)儒家、(2)道家、(3)陰陽家、(4)法家、(5)名家、(6)墨家、(7)縦横家、(8)雑家、(9)農家の9つです。

 本書では、九流の中から、儒家(孔子・孟子)、墨家(墨子)、道家(老子・荘子)、法家(韓非子)を選び

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雑種植物の研究 (メンデル)

雑種植物の研究 (メンデル)

 メンデル(Gregor Johann Mendel 1822~84)は、「遺伝の法則」の発見者として有名ですが、本来の顔は修道士です。研究の場も修道院が中心でした。

 本書は、その遺伝の法則を発表した論文の全訳です。
 さて、この論文ですが、発表された当時はほとんど注目されなかったそうです。本書の巻末の解説で、訳者の岩槻氏はこう説明しています。

 メンデルも論文の序言において、本研究の意義と

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世界の知で創る―日産のグローバル共創戦略 (野中 郁次郎・徳岡 晃一郎)

世界の知で創る―日産のグローバル共創戦略 (野中 郁次郎・徳岡 晃一郎)

共創 生みの苦しみ 日産といえば、カルロス・ゴーンの「リバイバルプラン」によるV字回復が有名ですが、それ以前から、将来を見据えたグローバル開発体制確立への壮大なチャレンジを行っていました。

 本書は、その現地開発プロジェクト立ち上げの足取りを追いながら、その成功要因を「知の共創」という観点から解き明かそうとしたものです。

 第一章の舞台は、アメリカのNRD(日産リサーチ・アンド・ディベロップメ

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宇宙人としての生き方 ―アストロバイオロジーへの招待― (松井 孝典)

宇宙人としての生き方 ―アストロバイオロジーへの招待― (松井 孝典)

 ビッグバン以来150億年、150億光年という時空のスケールで宇宙・地球・生命の歴史を再整理し、そのモデルから今までの文明論を見直すという試みの本です。

 宇宙に「視座」を移すと、人間を含め地球上の事象を「俯瞰的」「相対的」に見ることになります。

 こういった見方は、全体として認識するための「総合化」を目指した新たな方法論を必要とします。これは、デカルトやベーコン以来の「二元論」や「要素還元主

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夜の物理学 (竹内 薫)

夜の物理学 (竹内 薫)

 著者の竹内薫氏の本は、「99.9%は仮説」「世界が変わる現代物理学」「仮説力」・・・と気がつくともう何冊も読んでいます。今年(注:2009年時点)になってからは「天才の時間」ですね。

 今回は「宇宙論」「物理学」の話題を材料にしたエッセイです。
 エッセイといっても、最近の学問的議論のエッセンスも紹介してくれています。
 たとえば、最近の宇宙論に関してです。

 本書の面白いところは、ひとつに

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世界の異文化街道を行く (窪田 寛)

世界の異文化街道を行く (窪田 寛)

 著者の窪田寛氏は、製薬会社在職中に長年にわたる海外勤務を経験されました。その後、退職されてからも海外で活動されたのですが、その体験談をエッセイとしてまとめ出版されたのが本書です。

 内容は、言葉とコミュニケーション・世界の食文化・世界の商人・海外の日本大使館での思い出といったものから、東西ドイツや南北朝鮮民族の統一問題や世界の人口問題といった話題にも及びます。

 たとえば、「世界の食文化」の

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下世話の作法 (ビートたけし)

下世話の作法 (ビートたけし)

 「ビートたけし」という芸人でもあり、「北野武」という映画監督でもあるたけしさんのエッセイです。

 芸能関係の方の本はあまり読みません。エッセイというジャンルでは、高倉健氏による「旅の途中で」以来でしょうか。

 本書で、たけしさんは、「品」とか「粋」とかについて、自身の経験を踏まえた考え方を開陳していきます。
 たけしさんの考える「品」は、いたずらに「夢を追わない」「身の丈にあった」ところにあ

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反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (湯浅 誠)

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (湯浅 誠)

 ここ数年、社会的格差拡大が言われて久しく、そういった世相を反映して「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」といった新語も登場しています。
 更に昨年来(注:2009年時点)の不況の影響で、内定取消や非正規労働者の解雇・雇い止め等雇用情勢の悪化も著しく、さらに問題を拡大・深化させています。
 こういった状況は、「貧困」の深刻化をもたらします。

 著者は、この「貧困」という大きな社会問題に対してNP

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一日一言―人類の知恵 (桑原 武夫)

一日一言―人類の知恵 (桑原 武夫)

科学の精神 編者の桑原武夫氏(1904~88)は福井県生れ、フランス文学者でありまた評論家でもありました。「はしがき」によると、本書に採録されている数々の言葉は、桑原氏の長年の読書の蓄えだそうです。

 多くの箴言の中から、「科学」に関するものをご紹介します。

 まずは、明治初期日本に招かれたドイツ人医師ベルツの「日記」より、和魂洋才への疑義の言葉です。

 この態度は、自然科学に限ったものでは

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強いIT戦略 攻めの経営に向けたIT活用の新機軸 (アクセンチュア テクノロジーコンサルティング)

強いIT戦略 攻めの経営に向けたIT活用の新機軸 (アクセンチュア テクノロジーコンサルティング)

 本書は、ITコンサルティングを得意としているアクセンチュアのメンバによる「IT投資の青図」を提示しようと試みた本です。著者のお一人から頂いたので読んでみました。

 今日のITを議論するための視点を “5つのI”
 「Innovation(イノベーション)」
 「Information(インフォメーション)」
 「Integration(インテグレーション)」
 「Infrastructure(

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