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世界の異文化街道を行く (窪田 寛)

 著者の窪田寛氏は、製薬会社在職中に長年にわたる海外勤務を経験されました。その後、退職されてからも海外で活動されたのですが、その体験談をエッセイとしてまとめ出版されたのが本書です。

 内容は、言葉とコミュニケーション・世界の食文化・世界の商人・海外の日本大使館での思い出といったものから、東西ドイツや南北朝鮮民族の統一問題や世界の人口問題といった話題にも及びます。

 たとえば、「世界の食文化」の章での「世界で一番美味しい料理」についての著者のコメントです。

(p77より引用) 世界でもっともおいしい料理は中国料理といわれるのは、中国5千年の歴史もさることながら、人間の原点である自然のままに食べ、あまりマナーについてうるさくなく、家族が円テーブルを囲んで皆で、話をしながら楽しく過ごす食習慣を保ち続けている中国料理であるからと私は考えている。

 もちろん、海外のビジネス事情についての興味深い記述も多く見られます。ただ、それらは著者が海外勤務をしていた30年~40年ほど前の状況が語られているので、当時の記憶という点ではもちろん有意義なのでですが、今も参考になるかと言うと、その内容の説得力には今ひとつの感がありました。

(p208より引用) 三十年以上の時が経ち、現在の日系企業がインドネシアにおいてどのようなマネジメントを行っているのか、知る由もないが、・・・日本企業は、まだまだ、欧米の企業のようなマネジメントシステムは完成されていないであろうし、依然として、アジア的なマネジメントが展開されているのではなかろうか。

 こういった記述は、根拠のない著者の推測でしかなく、仮にエッセイと言えども無責任な印象が残ってしまいます。
 読んでいても少々残念な気持ちがしますね。1冊の本の中に、あれもこれもと多様な話題を詰め込んだために、どうもひとつひとつのテーマについての書き込みが浅くなってしまったようです。



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