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日曜美術館を見て

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『日曜美術館』を見た感想を綴ります。美術に興味を持ち始めたのは、ほんの最近ですが、素人ならではの新しい切り口で語れればいいかなと思っています。
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記事一覧

日曜美術館を見て(2023.9.24)

日曜美術館を見て(2023.9.24)

今回のテーマは『デイヴィッド・ホックニー』。イギリスの画家。
試行錯誤を繰り返しながら、絵の中に人が入っていける作品作りに挑戦した。逆遠近法を編み出し、作り上げた絵は確かに絵の中にいるような気分になるから不思議だ。その一因として、大きな絵だからこそ、その中に入っていけそうな気持ちになれるのだろう。
イギリスではまだ同性愛は法律で取り締られていた時代に、それを暴露するような絵を描いた。親から「隣の人

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日曜美術館を見て(2023.9.17)

日曜美術館を見て(2023.9.17)

今回のテーマは日本伝統工芸展。
若者から人間国宝までの作品が日本橋三越で鑑賞できる。

作品はどれも伝統を受け継ぎながらも、素朴さの中に新しさが加わった現代的なものも多く、テレビで紹介された人たちの技巧の細かさに驚かされる。

特に気に入ったのは、漆芸 蒔絵箱「木洩れ日の熊谷草」。黒の背景にピンクの花と青い葉が浮き上がって見える。
また、漆芸 彫漆箱「遥かに」は青のバリエーションがとてもきれいで、

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日曜美術館を見て(2023.9.3)

日曜美術館を見て(2023.9.3)

今回のテーマは霧の芸術家、中谷芙二子。

最初、ノズルで霧を作るということは、人間が自然を作ることだと考えて、正直抵抗感を感じた。
しかし、中谷芙二子の「礼儀を尽くせば自然が答えてくれる」という言葉には、自然に対する信頼感が溢れている。

霧はノズルから出た途端に自然に変わる。風の変化によって、霧も姿を変えていく。そんな様子を見て、「霧の芸術」とは自然と一緒に作る芸術なのだと実感した。

実は『霧

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日曜美術館を見て(2023.8.27)

日曜美術館を見て(2023.8.27)

今回のテーマは絵本画家の八島太郎。
絵本には子供のためだけの絵本と大人にも読んでもらいたい絵本がある。八島太郎の絵本は後者になるだろう。

戦争は亡くなった人たちだけでなく、生き残った人たちにも当然のように影響を与えた。
敗戦国日本で生まれ、戦勝国アメリカで暮らした八島太郎にとっても大きな傷を残した。

日本でプロレタリア画家として投獄され、絵を書くためにアメリカへ渡った太郎は、太平洋戦争に巻き込

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日曜美術館を見て(2023.7.23)

日曜美術館を見て(2023.7.23)

今回のテーマはガウディとサグラダファミリア。

サグラダファミリアについては、100年経ってもまだ完成せず、いつ完成するかもわからない不思議な建築物というイメージしかなかった。

今回の番組を見て、ガウディは生きている間にサグラダファミリアが完成するのを望んでいたのか。もっと言えば自分の死後に完成して欲しかったのか、という疑問が湧いてきた。

すべてのモノは完成した時点から崩壊が始まる。建物を完成

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日曜美術館を見て(2023.7.16)

日曜美術館を見て(2023.7.16)

今回のテーマは女性洋画家の三岸節子と長谷川春子。

女性洋画家が認められなかった時代に生き、さらに戦争に大きな影響を受けた二人。しかし、二人の生き方には大きな違いがあった。
節子は両親の反対を押しきって画家になった。一方、姉の勧めで絵を学び、パリへ留学した春子。
それでも、女性洋画家の地位向上を目指すという点で二人は結びつき、親友となる。

戦争が始まると春子はこれを女性画家の立場向上に利用しよう

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日曜美術館を見て(2023.7.9)

日曜美術館を見て(2023.7.9)

今回のテーマは絵本作家のかがくいひろし。『だるまさん』シリーズは本屋で表紙だけは見たことがあったが、内容は初めて知った。
言葉もわからない赤ちゃんでも楽しめる絵本として、今でも増刷されているらしい。大人の自分が見ても笑顔になれる絵本だ。

特別養護施設の教師を長年勤め、病気の子供たちと一緒にいた時間が、絵本作品に活かされたと言う。50歳から絵本作家となり、4年間で16冊の絵本を出版した。54歳のと

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日曜美術館を見て(2023.6.3)

日曜美術館を見て(2023.6.3)

今回のテーマは「アートと音楽」。坂本龍一と日比野克彦が東京現代美術館で開催された「アートと音楽」をテーマにした展示について語り合う。

アートと音楽は昔から結びついていた。映画やミュージカル、音楽のPVだって、ある意味アートと音楽を結びつけたものと言える。

坂本龍一はアートは既成概念を壊すためにあると言う。印象派しかり、キュビズムしかり、現代アートしかり、すべては既成概念を破壊することを目的とし

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日曜美術館を見て(2023.5.21)

日曜美術館を見て(2023.5.21)

今日のテーマは挟土秀平さん。左官を超えた芸術に挑戦している。

正直言って左官と芸術を結びつけて考えたことはなかった。
壁は背景であり、本来は脇役であるはずだが、絵は壁に掛けるものなのだから、壁自体が絵になってもまったく不思議はない。挾土はバンクシーの影響を受けたという。

挾土は「芸術に言葉はいらない」と言う。確かに絵が描かれた背景や、そのときの画家の心理状態などを知識として持ってから絵を見るの

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日曜美術館を見て(2023.5.14)

日曜美術館を見て(2023.5.14)

今回のテーマは超絶技法。

三人の芸術家が紹介された。
三人に共通しているのは、本物になるべく近づける精巧な細工。
物語をイメージしてから作品を作る人、植物を構成している数列を設計図に落とし込み、作品を作る人、限界と言われているその先を目指して作品を作る人。人それぞれの個性がそこには現れる。

個性により芸術作品が生まれるのか、芸術作品がその作成者の個性を作り上げるのか。ふとそんなことを考えてみた

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日曜美術館を見て(2023.4.23)

日曜美術館を見て(2023.4.23)

幕末から明治にかけて、東洋から西洋にかけて、時代は大きく変わっついったが、芸術の世界もその影響から逃れられなかった。というよりも、当時の芸術家たちは自ら進んで新しい芸術を探し始めた。

今回の日曜美術館のテーマは、『東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密』。

前に常設展示についてつぶやいたが、4月18日に東京国立近代美術館へ行ってきた。

雑誌やテレビで見たことのある絵や彫刻がたくさ

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日曜美術館を見て(2023.3.5)

日曜美術館を見て(2023.3.5)

今回のテーマはエゴン・シーレ。
正直に言って、個人的にエゴン・シーレは嫌いだった。ただ暗いというイメージしかなかった。

独自性から見れば、確かにエゴン・シーレしか書けない絵なのだが、その何に人をひきつける力があるのか、どうして私は嫌いなのかを確かめるために、先週、東京都美術館へエゴン・シーレ展を見に行った。

エゴン・シーレは自画像が多い。それだけを聞くと、ナルシストなのではないかと思ってしまう

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日曜美術館を見て(2023.2.12)

日曜美術館を見て(2023.2.12)

今回は陶芸家、板谷波山がテーマ。
工芸品だった陶芸を芸術品の域にまで到達させた人物で、幾つかの作品が紹介された。

その磁器は繊細な文様を浮き彫りで作っている。釉薬の開発にも力を入れ、独自の葆光釉を開発する。葆光とは光を包むという意味で、その作品は釉薬の名前のとおり、柔らかな色合いで、日本の春を思わせる暖か味が感じられる。

波山は、東京美術学校で高村光雲と出会い、彫刻を学ぶ。その後、石川県工業高

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日曜美術館を見て(2022.12.4)

日曜美術館を見て(2022.12.4)

日曜美術館は勅使川原三郎がテーマ。再放送で以前に見ている。「見えないものがあるから見えるものがある」、「動かないものがあるから動くものがある」。すべてが見えてしまえば、それは既に見えるとは言えない。すべてが動いてしまえば、それは既に動いているとは言えない。裏と表の関係をいかに客に提示し、感じてもらえるか。それが勅使川原三郎にとっての演劇の役目であるのだろう。ストーリーも気にせず、不思議な体の動きを

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