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#短編
小町の復讐をかたどる花
連載シリーズ 物語の“花”を生ける 【プロローグ】はこちらから
第8回 『小町の芍薬』(岡本かの子)2020年。私たち人間だけでなく、花や植物たちにとっても厳しい年だった。
日本では3月に自粛生活がはじまり、4月に緊急事態宣言が出て、一年のうちでもっとも花を必要とするイベントがすべて中止になった。花や植物の需要が激減し、それを生業とする人すべてが苦しんだ。生産者は丹精込めて育てた花や植物たちを
“死者”に手向ける花
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第6回 亡き王女のための刺繍(小川洋子)4月からのクラブ活動、何にするか決めた?
まだ・・・やっちゃんと一緒でいいよ。
そう、じゃあ手芸クラブか絵画クラブはどう?
うん、それでいい。
小学4年生になると、月曜日の6時間目にクラブ活動という時間が加わった。小学生なので課外活動ではなく、授業の一つなのだが、自分の趣味や興味に合わ
鬼がこの世にただひとり、生きた証を刻みつける花
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第3回 紫苑物語(石川 淳)前の週の暑さがうそみたいに冷え込んだ9月終わりの雨の日、花の稽古で花材の仕分けをしていると、直径3センチほどの小菊のような薄紫色の花を手にした。
それまであまり見たことのない花だったけれど、その姿形からこれは紫苑かもしれないと直観した。先生にたずねてみたところやはりそうだった。
須賀敦子の『トリエステ
純度の高い恋は地に落ちて、いっそう輝く
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第1回 ナイチンゲールとばらの花 (オスカー・ワイルド)子どもの頃、女優の岸田今日子さんや宮城まり子さんらが声優となって、世界の名作童話を語るというテレビアニメがあった。童話といっても昔話やおとぎばなしの回もあれば、世界の近現代の作家が人間の真善美やかなしみを描いた短編作品の回もあった。
私は基本的に昔話やおとぎばなしの回の方が好