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#日記

小説が、今の時代にできること(平野啓一郎の新作をめぐって)

小説が、今の時代にできること(平野啓一郎の新作をめぐって)

 変化に合わせて、自分のやっていることの意味の問い直し(アップデート)が迫られている時代だ。

 「本の出版がやりたいことか?」と問いかけ、「物語を世に届けること」だと気づいた。それで、僕は仕事をアップデートするために、クリエーターのエージェント業を始めた。現代アーティストやミュージシャンとは契約しないのか、とよく質問されるのだけど、物語を生み出せるということに重点を置いている。

 平野啓一郎も

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"大いなる疑問"を追っているか

"大いなる疑問"を追っているか

「禅には3つの柱がある。1つは"大いなる信仰心"、1つは"大いなる精進"、そして最後は"大いなる疑問"だ」

臨済宗寺院の副住職にインタビューした時、そんな話を聞かせてくれた。ここで言う「信仰心」とは「基準を設定する」ことに近いという。何事もまず始める時は、それの基準となる教えが必要。それを忠実に守ることに努力を重ね、ある所まで来たらそれを疑え、ということのようだ。

ライティングでも似たことが言

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世界を変えるかもしれない”問いかけ”の話

世界を変えるかもしれない”問いかけ”の話

「スタニスラフスキーという人が書いた『俳優修業』という本があってね」
と、教えてくれたのはシナリオの教室に通っていた頃、特別講師として来てくれたベテラン脚本家の方でした。

『俳優修業』はタイトルの通り、俳優を志す人や俳優としての成長を目指す人のため本なんですが、脚本を書く人間にとっても重要なことがたくさん書かれているというお話だったので、張り切って読み始めたわけです。

ところが正直、読むのがと

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怒りと嫉妬と執着はすぐに書いてはいけない

怒りと嫉妬と執着はすぐに書いてはいけない

ほとんどの情報は食材と一緒で鮮度が大事だ。つまり、なるべく早く調理・加工したほうが美味しくいただけますってことだ。でも、一部の情報や感情に関しては鮮度があると全然美味しくないものもある。その代表的なものが「怒り」と「嫉妬」と「執着」だ。

たとえば、ちらっと見かけたものについイラっとした時に、脊髄反射でその反論を書いてしまう。原文をろくに見もせずに。

たとえば、別れた恋人のことが忘れられずに数ヶ

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つい読んでしまう文章とは?文章力はインプットとアウトプットの掛け算なのかもしれない説

つい読んでしまう文章とは?文章力はインプットとアウトプットの掛け算なのかもしれない説

昨日の続きで、うまいと思う文章を書く人にある秘訣がなにかを探ってみよう。

まず、僕が思う文章がうまい人をいくつかあげておく。

前提としてこのnoteの運用上で役立つヒントが欲しいので、SNSで発信している人であり、基本的には小説家やエッセイストというよりはもう少し目指しやすく親しみやすさを感じるコピーライターさんなどに狙いを絞っている。

ほぼ日の糸井重里さん

cakes連載のBarBoss

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絵本の世界をまるごと信じちゃうお年頃

絵本の世界をまるごと信じちゃうお年頃

現実と物語の、はっきりした境目がなかったのっていつごろまでだろう。

少なくとも、我が家の娘は、まだぼんやりとした境界線をいったりきたりしているみたい。



『りんごかもしれない』『もうぬげない』でおなじみ、ユニークで素敵な絵本をつくるヨシタケシンスケさんの著書に、『あるかしら書店』という本がある。

全編イラストで描かれているけれど、使われている言葉は、絵本よりもちょっと大きい人向けです。

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村上春樹さんの「壁と卵」のスピーチから考える、「その仕事、誰のためにやっとんねん!」問題

村上春樹さんの「壁と卵」のスピーチから考える、「その仕事、誰のためにやっとんねん!」問題

その仕事、誰のためにやっとんねん!

と、自分につっこみたくなる時があります。そのさきに誰かの顔が想像できる仕事には、魂がこめられる。逆に想像できない仕事には魂がこもらない。

そんな感じ、わかりませんか?

なんだけど、日々の作業に忙殺されると、つい「誰のためにやっとんねん!」状態になってしまうんですよね。人間だもの。

「壁と卵」とはそんな時、いつも思い出して勇気付けられるのが、村上春樹さんが

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noteを続けて学んだ3つのこと

noteを続けて学んだ3つのこと

noteで発信し始めてから、もう一年になる。

ある日の夜、心のモヤモヤをどこかにぶつけたい!と強く思って、夜中に取り憑いたように書いたのが土屋鞄さんのnoteだった。

このnoteは、未だに一番お気に入りで、これからもこれ以上のものは書けない気がする。

こんなに短い言葉で、これほどまで思いを十分伝えられたことはないと思う。

まだ一年しか経っていないけれど、noteを始めて本当に良かっ

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みんなが僕に「ケアが足りない」と言う意味が、ようやくわかった。

みんなが僕に「ケアが足りない」と言う意味が、ようやくわかった。

昔から僕は、「人に対してケアが足りない。佐渡島は人に厳しい」とよく言われる。

でも、僕は僕なりに相手のことを誠実に思い、一生懸命ケアしているつもりだった。

このギャップは、一体どうして生まれるのか?

その長年の謎が、臨床心理学者の東畑さんの新刊『居るのはつらいよ』を読むことで、ようやく理解することができた。

この本は、「ケアとセラピーについての覚書」という副題がついているが、僕が他人に対し

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誰かをうらやましいと思う気持ちを昇華させたい

誰かをうらやましいと思う気持ちを昇華させたい

人間の厄介な感情コレクションのひとつは、誰かを「うらやましい」と感じる気持ちだと思う。直接この言葉を口にしなくても、なんとなく芽生えるモヤっとした気持ちだとか、SNSで見えるみんなの活躍からつい目を逸らしたくなってしまうこととか。全然よくある。別に恨んでいるわけでもなければ、その人の不幸を望んだりするようなカゲキな感情ではないのだけど、ただただ今の自分と比べてしまって「モヤッ」とするのだ。

そう

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