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l Love You and Yours【お気に入り保存箱】

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また読み直したいものを勝手に放り込んでゆくところです。 勝手に入れますが、御容赦ください。
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#眠れない夜に

岩崎さんの居る世界

岩崎さんの居る世界

Wi-Fiの調子が悪いのか、パソコンに表示されたZoomの画面が固まってしまった。いつもなら、焦ってしまうのだけれど、その時はあまり焦らなかった。我が家のWi-Fi回線は二つあるので、違う回線に切り替えてZoomに接続し直した。なんとか上手く切り抜けた。

Zoom上に集まったメンバーで、各々が書いた文章を読み合って感想を述べ合うことをした。テーマを決めずに即興で書くのは久しぶりで、どう書けば良い

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【詩】霧氷

【詩】霧氷


枝に寄り添う霧氷が
眩しそうに輝きながら
溶けてゆく

散りゆく姿の可憐さに
そっと沸き立つ微笑みの
響き渡る暖かさ

いつしか笑顔は
するものになっていた
型にはまった笑い顔
奥底が冷えていく

綺麗なだけではない日々で
そういう時は
心が喜ぶものを探して

詩 「note」

詩 「note」

今日もぼくは
noteの重い扉を開け
いつものように
ここに来た

noteというのは
この図書館の名前で
今きみがいるところ

さあ
ここへどうぞ
ぼくの隣の席でいいかな

ぼくの今日のノートは
noteについて書くつもり

「note」

noteには
何万 何百万もの
椅子とテーブルと本棚があり
人々は毎日ここにやって来ては
作業をしたりノートを読んだりする

ここにいる人たちの大半は
ノー

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小説 「さよなら、ナポリタン」

小説 「さよなら、ナポリタン」

【1日目】

①麺とタマネギとピーマンをあれする。

②フライパンで①のあれをあれする。

③ケチャップを〈ナポリタンの色〉になるまで入れ続ける。

④「これはナポリタンだ」と感じたら成功。

⑤ナポリタンの成功を祝うため、家を飾り付けする。ナポリタンは玄関に置くのが一般的。(来客時にアレをするため)

⑥おにぎりを食べ、就寝。

【2日目】

⑦起床したらまず、玄関のナポリタンを確認する。盗難さ

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詩 「るん」

詩 「るん」

この本は退屈である
この音楽は退屈である
この映画は退屈である
この人の話は退屈である

退屈は
つまらない

しかし
つまらないと感じる
わたしの感性をわたしは
信じすぎてはいないか

わたしの感性は
わたしのなかで
いつもそんなに正しいか

わたしの直観は
わたしのなかで
いつもそんなに鋭いか

まずは
そこに立ち止まって
自分を疑う時間が必要なのだ

そして
つまらなくて
何がわるいのだ

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オドラデク大いに語る

オドラデク大いに語る

──はじめまして。インタビュアーのジャック・リンドールです。

よろしく、ジャック。

──まさか君がインタビューに応じてくれるとは思わなかったよ。

そう?気軽に呼んでほしいな。

──毎日忙しいようだけれど、何をして暮らしているの?

拡張性有機物伸縮活動の実態調査。調査結果提出時期は繁忙期だね。

──ところで君は生き物なの?

君がそう思うならそうだよ。

──なぜ星の形をしているの?

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短編「かなまう物語・上」

短編「かなまう物語・上」



 郵便ポストの後ろに忘れられた細い路地がある。路地に沿うのは民家の側面とか裏側で玄関を構えている家はないものだから、日中もひっそりとしている。だが近所の住人にとっては生活道路に変わりなく、知る人ぞ知る路地でもある。その路地の片隅に、男の家はあった。

 男の家は路地のぷつりと切れるぎりぎりの位置にあって、平屋で、古くて、瓦が日に焼けて薄ボケて、玄関前の草はぼうぼうと生えたら生えたままであるし

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猫をなくした男と、女

猫をなくした男と、女

今日あいつに似たやつを見かけた。
あっちもおれに興味があったみたいだ。

そう、男が女に話すのは、もう、何度目か。

男は猫をなくしている。
女には、なついてくれた、はじめての猫だった。

 一

女は友人に誘われて、男の実家にある男の部屋を訪れた。
三方に窓が開き、日なたと、趣味のこまごまとにあふれていた。
にゃあと男の飼い猫がやってきて、客人たちの足元を、くるり、くるりと一周ずつした。
終える

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詩 「生きるってもどかしい」

詩 「生きるってもどかしい」

眠りたいより

眠りたくないのほうが

眠れる

帰りたいより

帰りたくないのほうが

帰れる

おなかペコペコより

おなかまあまあペコのほうが

食べられる

がんばってより

がんばらないでのほうが

がんばれる

会いたいより

会いたくないのほうが

会える

ヤバそうより

ヤバくなさそうのほうが

ヤバい

エロそうより

エロくなさそうのほうが

エロい

休みたいより

休みた

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〔詩〕My Life

〔詩〕My Life

生まれ変わったら何になりたい?
なんて当たり前のように聞かないで
私はもう充分だから

やってみたかったことはある
生きてみたかった人生もある
もう1度行きたかった場所
もう1度会いたかった人
私の中の忘れ物は増えるばかり
でも
やり直したいことなんてない

満足でも諦めでもない
私は私のままでいい
今までも
これからも
ただの私のままがいい

【詩】文脈のなか

【詩】文脈のなか

夜中、誰かに呼ばれた気がして目覚める時がある
仕組まれたとおりの動きで麦茶を飲んでいると
地続きの自分がよく分かる

20万年前から町の片隅にいるホモサピエンスの文脈
その中に入れてもらえないことが
私ずっとこわかったのね

一歩の遅れが百歩の遅れで、診断名は知恵遅れ
私は今年35になるはずなのに
知的には25さいぐらいらしい

それは子どもの頃には狂いそうなほどの極彩だったけど
年を取るにつれ砂

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詩 「わけわからん」

詩 「わけわからん」

なんだコレ 
わけわからん

どの角度から眺めても 
わけわからん

でも 
なんでしょう

この胸の 
ときめきは

こころの 
ざわめきは

わけわからんものが
わけわかるようになったら
ちょっとさみしい

わけわからんものが
わけわからんかった頃の
自分が懐かしい

わけわからんを
さがして生きていくのだ
どこまでも

〔詩〕言葉を紡ぐ

〔詩〕言葉を紡ぐ

心の中をふわふわ漂う
細い細い繊維を
いっぽんずつそっと捕まえて
撚り合わせてゆく
ちぎれないように
優しくゆっくりと

できれば真っ白に
できれば滑らかに
絹糸のように紡ぎたいけれど

頑張りすぎると捩れて
ぼんやりしていると解けてしまう
真っ白からはほど遠く
不規則に混ざる色に溜息をつきながら
ゆっくり
ゆっくりと
いつまでも撚り合わせている

詩 「いま、なにしてる」

詩 「いま、なにしてる」

いま、なにしてる?とか
来週の金曜、暇?とか

まずは
きみが何をしているのかを
言ってくれたまえ

または
その日に何をしたいのか言いなさい
きみが先に言いなさい

きみはわたしが暇だと知ったら
何を言い出すつもりなんだね

それとも
きみとわたしで
何してるかな問答でも
はじめるつもりかね

しかし
まあ
声をかけてくれたことは
ありがとう

しかしだな
わたしが何をしているか
言うつもりはな

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