マガジンのカバー画像

l Love You and Yours【お気に入り保存箱】

128
また読み直したいものを勝手に放り込んでゆくところです。 勝手に入れますが、御容赦ください。
運営しているクリエイター

2023年3月の記事一覧

眠れる椅子

眠れる椅子

もうこの脚では
人間たちの苦悩も
憂鬱も支えられないからと
粗大ゴミとして
収集場所で寝転んだ日
椅子は初めて
空の青さを知った

これで安らかに眠れる
本当に美しいものを
目の当たりにして
心に何の澱みもなく
終わりを迎えられる

椅子の脚が
ほんの少しだけ震えているのを
隣に立て掛けられた
ハンディ掃除機は見ていたが
そっとしておいてやる事にした
存分に働いたんだ
椅子にだって夢見る権利はある

もっとみる
震災12年目。NHK記者を辞めて1人で自由なメディアを立ち上げた

震災12年目。NHK記者を辞めて1人で自由なメディアを立ち上げた

2022年人生が変わった

「災害で1人も死なない世界を作りたい」と声高らかに語ったのは、5年前。
僕はNHKに入局してすぐ、同期や上司、先輩と誰某構わず豪語して回った。
殆ど鼻で笑われたが、本当にできると信じていたのだ。
結論を言うと、実は今も信じている。
でもその夢はNHKでは達成できないと悟った。

以前も記事で書いたが、僕はNHKの職員に惚れて内定を受け入れた。
「ああこんなに正義感の強い

もっとみる
【掌編】ウィル・オ・ウィスプ

【掌編】ウィル・オ・ウィスプ

己の呼吸と重たい衣擦れの音だけが、空間に響いている。もうどうれくらい此処にいるのだろう。周囲は、相も変わらず闇に支配されている。冷え切った床と壁は、あらゆる生命の営みを拒絶しているかのようだ。

私は罪を犯したとされた。家族や恋人、私にとって大切な人々の誰一人として減刑を嘆願しないのは、私の罪が王の怒りに触れるものだったからであろう。

しかし、である。私はただ一言、こう詠っただけだ。

――光こ

もっとみる

【詩】夢の跡

色とりどりの喧噪が
数多沸き立つ空間で

たった一つ
心に届いたあなたの声に
そっと寄り添う夢を見た

届く言葉の
人恋しい切なさに
そっと甘える夢を見た

差し出す手の
温もりの誠さに
そっと安らぐ夢を見た

夢と知って夢を見た

覚めると知って夢を見た

今どうしていますか

ひとすじにひかる大河の雪解けよ

ひとすじにひかる大河の雪解けよ

季語:ゆきどけ( 仲春 ) 現代俳句

雪解けは、春がきて雪が解けること

雪解けの時期、
河などの水量も一気に増えはじめるそうです

◇関連記事◇

【詩】る、る、る

【詩】る、る、る

彼の唯一の関心は素数である。
る、る、る、と私が歌ったところで全く意味はない(それでも絞りだした悲鳴が歌なのだけれど)

私はあの日あの日あの日幕張付近で京成線の踏切を渋滞する車の後部座席から眺めており――遮断機がひどく疎ましかった――風景から色彩がどんどん失われていくのを、ただ茫然と見送っていた愚かなカモメであった。だから?

もう笑うべきなのだ。ろくに弾けなかったギターの、錆びた一弦だけを使え

もっとみる
【超短編小説】ナイルでは

【超短編小説】ナイルでは

 古代エジプトの女王クレオパトラは蛇に噛まれて死んだあと、輪廻転生の複雑きわまりないプロセスをくぐり抜けて、現代のニューヨークで暮らすアルバニア人女性イレーンとなった。イレーンはグリニッジ・ビレッジで油絵を勉強しているごく平凡な画学生だったが、ちょうど20歳になった誕生日の翌週、オリーブオイルの瓶を踏みつけてアパートの階段から転げ落ち、そのはずみに前世の記憶をすっかり取り戻した。幸い、ひじを軽くす

もっとみる

(シオラン)
求めなければならないのは、後世の、ましてや現世の尊敬ではなく、自分自身への尊敬だ。大切なのはこれだ。自分に恥じるところがない、すべてはこれにかかっている。こういう境地になれないからこそ、私はいつも、いたるところで、ぐらついているのだ。

詩:反骨々格

外骨格、と言って、
おれ、マジ、はんこつしんしかないから、
と、若い男たちが地べたをずらずら、
している。
酒に飲まれて?
ぴくぴくと横たわっている者もいる。
すえた空気をマスクごしに吸い込む、
人だかりの駅です。

こころ、に隆起したポリープに、
ときどきは星あかりなどと言う、
あなたたちが好きだよ。
ここは楽しいキャンプ場です。
ごちゃり、わたしの心が酔狂しています。
前世紀のレスラーが、

もっとみる
先祖を偲ぶ

先祖を偲ぶ

もうすぐ春分の日
 お墓は遠くていけませんが、毎日の朝夕の読経は先祖との短い会話です。

どんなに忙しくても散歩から帰ってくると軽い朝食の後、15分はお経の時間です。何も特別なことではなく一日の出発前の「行ってきます!」

主人と「千の風になって」の歌詞が重なります。私が勝手にそう思っているだけかもしれませんがとても心にしみ込んできます。

主人にいつも見守られている気がするのは何か一つのことをク

もっとみる
おきよ

おきよ

事務机の引き出しを開けると
そこには丘陵みたいなものがあり
頂きの白っぽい通信塔から
ヒトの鼻の嗅球に
オカラみたいなものを放射する

丘陵みたいなものに立つと
向こうに海みたいなものが見えて
輪っかのある惑星みたいなものが
半分くらい沈みかけていて
惑星みたいなものに立つ建物には
おきよという事務員がいる

望遠鏡で覗いてみると
おきよは黒い腕ぬきを外し
経理の仕事を放っぽり投げて
向井のチ

もっとみる
詩『怒りと悲しみ 寂しさと』

詩『怒りと悲しみ 寂しさと』

感情が 降り積もる
心の中に 沈んでいく
怒りと悲しみ それに寂しさ

何かが 心をかきまぜる
波が立ち 荒れていく
沈んでいた苦しさが込み上げて
涙となって流れていく

何度も涙したのに
まだ流しきれてないのか
そんな自分もいやになる

でも

怒りは 
許せないからなのか?
悲しみは
何かを失ったからなのか?
寂しさは
誰もいないからなのか?

それだけなのだろうか?

自分を 人を 思う気持

もっとみる

結局なにがしたいんだ? raw現像から考えたこと

写真のraw(生のデータ)からの現像だと、いろいろ表現できると言うんだけどさ、、、結局何がしたいんだ?
と、自分に問いかけることになっちゃうんだよね。
現像とは関係なさそうな「自分…なんで生きてるの?」まで飛んでみちゃうみたいな。

昔みたいにフィルムの特性と現像ラボにおまかせの写真じゃなくて、今でもデジタルカメラまかせで出来上がった写真じゃなくて、自分で微調整しながら一枚の写真に仕上げることがで

もっとみる