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寺のかげうつくしいのも十五夜か

いちりんよちいさいながら菊日和

たかぞらよ風にさらわれ草のわた

わきあがりながれおちては山霧よ

いっせいに時間飛ばすか草絮吹く

野良猫のふりむきがおよ露の路地

せいようにとうように鐘秋のくれ

ゆうやみよ色濃くならぶ稲架の列

見た夜々もひとすじにきえ天の川

あたっては日かげる嶺々よ雁の列

あおぎみてみずからを知る天の川

初恋よ以後うつくしくあまのがわ

銀閣をうつすみなもよあきのあめ

野のとんぼはねしか見えず日の光

とおざかるいまをながめて雲は秋

うずもれてまっさおな壜あきの浜

ちんもくよこどくかりりと落花生

こめ炊いてたわらむすびに豊の秋

いえごとの灯にものがたり天の川

混ざりだすそらよじかんよ秋夕焼

ゆく道よ黄をうつくしくもみじ山

名月よ夜の野をはしるかぜのおと

馬鈴薯が丸ごといくつシチュー皿

京路地よ吹きほそってはあきの風

水たまりほのと光っていなびかり

まいとしよ真あたらしくて望の月

だまるときたしかに人よあきの酒

自転車の二人よとわにあきのくれ

おくにこそ一糸けぶってあきの滝

草じらみつくさびしさよ城のあと

口語俳句 作品集 23 〜流れ星〜

あさもかげゆうべもかげよ雁の列

曼珠沙華みずたまりにも曼珠沙華

芋の露つゆのいろしてしずかさよ

熟れた実よそこに日のさす葡萄棚

せんねんをにせんねんをよ雁の旅

いっせいにはたらきだすか台風後

大夕日はねはばたかせばったとぶ

見る影よすえひろがりの富士に月

稲刈り機つつむ大きなゆうぞらが

まつやまのおとひびかせよ秋風鈴

天の川こころそのものではないか

剥き終えてすでにしたたる梨の玉

すいこんでそらさわやかよ歩道橋

とぶ鳥よいつかの旅もあきのくれ

かさなるよあの日あの空赤とんぼ

草さきよとうめいいろのつゆの玉

梨噛んでこころ砂漠のさびしさよ

口語俳句 作品集 24 〜雁の列〜

天と地よまだまだわたるわたり鳥