マガジンのカバー画像

📖lipika books📖 脳を刺激されるやわらか文学

5
あらゆる世界が存在するlipikaの頭の中。lipikaに書けないものはない。小説・児童文学・エッセイ・歴史もの等々。
運営しているクリエイター

記事一覧

現実逃避文学【 ふしぎ生物 へいちゅう と はすかる 移動編 】

現実逃避文学【 ふしぎ生物 へいちゅう と はすかる 移動編 】

へいちゅうとはすかると最寄駅までの道

ふぉんが最寄駅まで歩く時は、へいちゅうとはすかるは肩を組んで後ろからついてきてくれるのだった。

二匹とも腕の長さが足りないから、肩を組むと肘を曲げられなくなってしまって、お互いの肩にぴとっと腕を預けている状態になるのだが、それがなんとも可愛らしいのであった。

振り返って二匹がちゃんとついてきているか確認すると、だるまさんが転んだみたいに、二匹は動きを止め

もっとみる
【世界のどこかに必ずいそうな女シリーズ】髪を乾かされたい女

【世界のどこかに必ずいそうな女シリーズ】髪を乾かされたい女

突然恋しくなった。小さい頃、母や父に髪を乾かしてもらったこと。
自分で乾かすのとは違って、親の手の温もりを感じながら髪を乾かしてもらうのは、とても心地が良かったのだ。ずうっと乾かないでいてほしいと思うくらいに。
親が髪を乾かしてあげられる時期は長くないから、より一層いたわるように乾かしてくれていたことが、子供ながらに分かっていたのかもしれない。
もう子供の頃には戻れないのに、どうしても、誰かに髪を

もっとみる
現実逃避文学【ネリネリとメリメリの冬 後編】

現実逃避文学【ネリネリとメリメリの冬 後編】

「コースにしてよかったね。いろんな度数をちょっとずつ楽しめそうじゃん。」
「コースってさ、私たちが食べ終わったのを確認してサーブされるじゃん。」
「で・も〜?見られてるのが気にならない!」
「そうなの、それ!」
「あの人たち無関心を装いながらちゃんと私たちのペースを見てるっていうのがプロだよねー。」
「今私たちが喋ってることも全部聞いてるのかな。」
ネリネリはウェイターの方を一瞥すると、首を傾げた

もっとみる
【芋話 #1】いもけんぴのいもけん

【芋話 #1】いもけんぴのいもけん

 今日は本当に最高のライブだった。テンポがずれることもなかったし、終盤息切れしてしまうこともなかった。

家に帰ったらこの気分が終わってしまいそうな気がして、最寄駅の2つ前で降りた。

降りたことのない駅だった。ちょうどよかった。もし普段使ってる駅だったら、日常に引き戻されてしまうところだった。

鏡を見なくても自分の頬が紅潮していることがわかる。仲間たちの2次会の誘いを断ったのは、この幸せな気分

もっとみる
現実逃避文学【ネリネリとメリメリの冬 前編】

現実逃避文学【ネリネリとメリメリの冬 前編】

 ネリネリと会うのは久しぶりだから、早めに着こうと思ったのに、尻尾の毛がキマらなくて、結局2分ほど遅れて frere Jacques dans grotteに到着した。ネリネリはたまに、難しい名前のお店を見つけてきてくれて、誘ってくれる。わたしは調べるのが面倒に思ってしまうから、ネリネリはすごいと思う。ネリネリもと同じくらいについたから、ちょうどよかった。2カ月会わなかったら、ネリネリは髪を切って

もっとみる