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#247 「日本の大企業」は絶滅する?

東京大学柳川教授の「経済全体にDXを」という記事が日経新聞に掲載されていました。その記事を読んで考えたことを、メモ


1、どんな記事?

3月16日の日経新聞朝刊29面「経済教室」欄の「経済全体にDXを」という記事です。

記事には以下の3点が「ポイント」として書かれています。

☑️ デジタルは経済の枠組みそのものを変革
☑️ 「イノベーションの民主化」が進んでいる
☑️ 誰でもアイディアを実現できる社会改革を

これだけ見ると、あちこちで見聞きしたDX論で「ふーん」というところですが、私が注目したのは、以下の記述です。

大企業に長年勤めることが、自分のやりたいことを実現させるためのほぼ必要条件だった
(中略)
できるだけ大きな組織に入り、上に行かないと、自分が形にしたいと思っていたことを実現させるどころか、見せることさえできない。それが多くの場合現実だった。

そして、その構造が大きく崩れ、大企業でなければできない領域が小さくなってきている、と続くのです。

つまり、デジタル化の恩恵をより大きく受けているのは、大企業ではない、ということです。

そして、筆者は大企業の問題点について以下のように述べています。

これ(デジタル化によるイノベーションの民主化)は伝統的な日本の大企業にとってはあまり有利とはいえない変化だ。年功序列は崩れてきているものの、遅い昇進の仕組みは、個人が大きな意思決定ができるようになるのにかなりの年数を要する。つまり、アイディアを簡単に形にすることができない。それに、失敗に対して厳しい評価システムが加わると、荒削りなアイディアにチャレンジすることが難しい。

この解決策については以下の通り述べています。

日本の大企業がこの点を打破するためには、若手であっても高齢者であっても、より多様な人が現在の地位や上下関係にこだわることなく、アイディアを口に出すことができ、それを具体的に実行できるような体制をつくりあげていくべきである。

このように、大企業にとってDXは取り入れないと競合他社との競争に劣後するもの、という単純なものではなく、その競合他社も含めて「大企業」という存在そのものの変革を迫られるもの、なのです。

それは、筆者の以下の主張に集約されています。

世界はデジタル化のスピードを一挙に速めている。日本ではDXという言葉が強調されている。その際、企業内での変革の必要性が主張される場合が多い。もちろんそれも重要だが、デジタル化によって生じている経済の構造変化は日本企業の枠組みを根幹から揺さぶるものであり、一企業の変革にとどまらず、経済全体で発想の転換が必要になってきている。


2、まとめ(所感)

いかがでしたでしょうか?

再度まとめると、

☑️ 日本ではデジタル化=DXと強調されるが、デジタル化の恩恵を受けているのは、従来大企業でないと実現できなかったことがもっと規模が小さな企業や個人でもできることである。

☑️ デジタル化によるイノベーションの民主化が進むことは、大企業にとって「大企業だからこそできること」がどんどんと少なくなることで望ましいことではない。

☑️ 大企業は、これまでの経緯から、長年勤めないとアイディアを形にできない、失敗が許されない評価体系などにより、失敗するかもしれないが新しいことにチャレンジできない組織になっており、デジタル化、という前に、その企業体質の変革が必要である。

ということでした。

考えてみれば、DXのD、デジタル化は企業、個人問わず訪れている大きな流れです。

企業は、従来の競争相手だけではなく、今まではその存在さえ認知していなかった小さなベンチャーや、革新的なアイディアを持つ個人と競争しなければならない時代になりつつあるのです。

大企業がそうした意思決定が早く、果敢にリスクをとる存在と戦うには、デジタル化云々の前に、そもそも重厚長大のガバナンスや失敗を許さない評価制度、管理職登用が遅い人事制度等を変える必要がある、ということです。

地球環境が激変したことで、恐竜が絶滅し、小さな動物が生き残った、そんな大きな転換点にいるのかもしれません。


最後までお読みいただきありがとうございました。

記事のご紹介でしたが、何か参考になるところがあれば嬉しいです。

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