見出し画像

#257「ビジネス頭の体操」 今週前半のケーススタディ(3月29日〜3月31日分)

はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。

 →部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。


3月29日(月) 特別天然記念物は本当に「特別」だった!?

1952年(昭和27年)のこの日、北海道・阿寒湖のマリモが国の特別天然記念物に指定された「マリモの日」です。
同時に、富山湾のホタルイカ群遊海面、鹿児島県出水市のナベヅル、高知県のオナガドリなども国の特別天然記念物に指定された。

マリモ。

画像13

子供の頃、瓶に入ったマリモを買いましたが、後で偽物と分かってびっくりした記憶がありますが、「天然記念物なんだから当たり前」と家族に言われたことを思い出しました…

と言うわけで(?)天然記念物について調べてみました。

文化財保護法という法律に基づいたもの、という漠然とした認識はありましたが、そもそも「文化財」という対象は細かく分かれており、以下のようになっています(出典:文化庁「記念物の保護のしくみ」)。

画像1

「天然記念物」は「史跡」や「名勝」と同じ「記念物」という括りです。「有形文化財」「無形文化財」というのもこの文化財保護法によって決められているものであることが分かります。

ちなみに、同法第2条に文化財の定義が書かれています。
そのうち記念物は以下の通り書かれています。

☑️ 貝づか、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとって歴史上又は学術上価値の高いもの
☑️ 庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとって芸術上又は鑑賞上価値の高いもの
☑️ 動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む)、植物(自生地を含む)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む)で我が国にとって学術上価値の高いもの

また、同法第109条は文部科学大臣が指定する旨が定められており、「特別」天然記念物のことも書かれています。

文部科学大臣は、これらの記念物のうち重要なものを史跡、名勝又は天然記念物(「史跡名勝天然記念物」と総称)に指定し、そのうち特に重要なものを特別史跡、特別名勝又は特別天然記念物(「特別史跡名勝天然記念物」と総称)に指定します。

このような「記念物」ですが、どれくらいあるのでしょうか?
文化庁のHPによると令和2年4月1日現在の件数は以下の通りです(かっこ内は「特別」の件数)。

☑️ 史跡:1,847件(63件)
☑️ 名勝:422件(36件)
☑️ 天然記念物:1,031件(75件)
☑️ 登録記念物:117件(-)

マリモは特別天然記念物、ですから、本当に貴重なものであることが分かります。


さて、最後にこのような活動に割かれている予算規模を確認しましょう。
令和2年度文化庁予算の概要」によると、総額は1,067億円。
そのうち、文化財の保護や修理、保存などに使われる予算が最も多く、462億円が計上されています。

→文化庁の業務は年間1,000億円を超える事業規模で行われている。例えばマリモであれば「特別天然記念物」ということで観光客が増えるなどの効果が考えられるが、全体ではどのくらいの経済効果があるものだろうか?
また、その経済効果を事業者に還元するスキーム等で国の予算を使わずとも文化財の保護ができるような仕組みは考えられないだろうか?


3月30日(火) これが本当の「両ききの経営」!?

神奈川県横浜市港北区に本社を置き、歴史シミュレーションゲームソフト『信長の野望』の開発・販売を手がける株式会社コーエーテクモゲームスが2013年(平成25年)に制定した「信長の野望の日」です。
1983年(昭和58年)この日、株式会社光栄マイコンシステム(現「コーエーテクモゲームス」)が第1作目となるコンピュータシミュレーションゲーム『信長の野望』を発売したことにちなみます。

信長の野望
懐かしい〜、と思ったのですが、まだ現役なんですね。

メーカーであるコーエーテクモ社のHPを見ると、2018年3月30日付のニュースとして、「信長の野望」シリーズの累計出荷本数が世界累計で1,000万本を突破したことがアナウンスされています。
そのアナウンスから「信長の野望」についての説明を引用します。

「信長の野望」シリーズは、1983年3月30日に初代『信長の野望』を発売して以来、 織田信長などの戦国大名が、内政、人事、戦闘などを行い天下統一を目指すコンセプトはそのままに、 作品ごとに様々なテーマや要素を加え、進化し続けてまいりました。 2017年には、ナンバリングタイトル第15作目となる『信長の野望・大志』を発売し、 今年で35年目を迎えるロングセラーブランドとなります。

ちなみに、「3月30日は"信長の野望の日"」特設サイトという以下のサイトもありましたのでご興味のある方はご覧ください。


さて、「信長の野望」もすごいことがわかりましたが、メーカーであるコーエーテクモゲームスは、「世界No.1のエンタテインメント・コンテンツ・プロバイダー」を目指す、としている企業で、直近の決算を拝見して面白かったので取り上げさせて頂きます。

最新の決算である2021年3月期第3四半期(2020年10月から12月)決算説明資料を見てみましょう。

画像9

過去最高の売上高・利益を達成!!となっています。

どれくらい伸びているか、というと、昨年対比で売上高が6割増、営業利益で3倍(!?)という「爆伸び」です。

画像10


中期的に見ても売上高、営業利益とも伸ばしていることが分かります(下図:東洋経済新聞社)。特に営業利益の伸びは特筆に値します。

画像2


同社の強みはどこにあるのでしょうか?

2020年3月期決算説明に、同社の強みを解説したページがあるのですが、それによると、開発力・技術力・マネジメント力の他に挙げられている「重層的な収益構造」が紹介されています(下図)。

画像11


三国志」や「無双」といった定番化し、ファンに支えられるシリーズものを持ち、そのほかに「コラボ」や「IP許諾」を活用するという好循環を生み出す収益構造といえます。

IP許諾の成功例として、中国アリババグループが2019年9月に中国でリリースした「三国志・戦略版」があります。アプリランキングで1位を獲得するなど好調です。
こうしたIP許諾によるロイヤリティが貢献し、同社の「スマホ・ソーシャル事業」の売上高は2020年10月から12月の第3四半期では153億円と前年同期比8割を超える伸びとなっていて、同事業が属する「オンライン・モバイル分野」の伸びを牽引しています(下図:同社決算資料)。

画像12

もちろん、定番に頼りすぎるのはリスクですが、そこも新たな定番を目指してリリースを怠っておらず「仁王」という2017年に発売された新作は世界300万本を突破したそうです。

少し脱線しますが、同社の決算資料を見ていて事業とは別の特徴として、1,138億円もの投資有価証券を保有し、営業外収益として、有価証券売却益を70億円、同売却損を13億円計上していることです。つまり、有価証券(おそらく株)で57億円もの営業外収益を生み出しているのです。
調べてみると、同社の運用が上手いことについては以下のような記事があることから有名なようですね。


→任天堂が典型だが、ゲーム関連企業は業績の波が激しいが、同社はそこまで大きな波がないように見える。この要因は同社のビジネスモデルのどのような部分に原因があるのだろうか?


3月31日(水) 厳しすぎるオーケストラが置かれた状況。

東京都墨田区錦糸に本部を置く、公益社団法人・日本オーケストラ連盟が2007年(平成19年)に制定した「オーケストラの日」です。
日付は「み(3)み(3)に一番」「み(3)み(3)にいい(1)ひ」(耳に良い日)と読む語呂合わせと、春休み期間中であり親子揃ってイベントに参加しやすいことからだそうです。

オーケストラ。
コンサートなどは密になるので、公演は中止になったり、人数を制限して行われるようになりました。
そもそも収支面ではどのように成り立っているのでしょうか?

そこで、「オーケストラの日」を制定した日本オーケストラ連盟(準会員を含む37団体で構成されています)のHPを見てみると、以下の通り、厳しい状況が伺えるものになっています。

画像3

「緊急メッセージ」は以下の6つから成っています。

☑️ 中止・延期のお詫び
☑️ 演奏団体と演奏者にとっての危機
☑️ 長期戦への覚悟
☑️ 音楽芸術を守るための対応と要望
☑️ 音楽の素晴らしさ
☑️ 会員オーケストラの取組み

これを読んで、何より不勉強だったのが、オーケストラの多くが公益財団法人ないし公益社団法人であり、そういった法人には、「収支相償の原則」(収入と支出を毎年度均衡させるという原則)が要請され、利益を蓄えておくことができない、つまり内部留保ができないこと、にもかかわらず、財政基盤が失われれば解散を余儀なくされる可能性がある(具体的には2年連続で純資産が300万円未満となった場合、公益財団法人としての資格を喪失する)のだそうです。

つまり、貯金は許されないのに、今回のように収入が激減して、お金がなくなると解散しなければならない、ということなのです。思った以上に大変な状況なのです。
以下の東洋経済の記事に詳しいのでご興味があればご覧ください。


では、通常どのような収支状況なのでしょうか?
同連盟がまとめている「オーケストラ年鑑2019」に加盟オーケストラの収支が公表されていましたのでご紹介します。

☑️ 東京都交響楽団型
 地方自治体からの収入が半分を超える

画像4

☑️ 読売日本交響楽団型
 民間からの収入が半分を超える

画像5

☑️ 札幌交響楽団型
 地方自治体と民間支援ともに一定ある

画像6

☑️ NHK交響楽団型
 助成団体からの収入が大きい

画像7

☑️ 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団型
 演奏収入がほぼ全て

画像8


こうしてみると、同じオーケストラでも、その収支構造は様々で今回の影響も様々であることが想像できます。しかも「緊急メッセージ」にも「長期戦」という言葉がありましたが、そのための備えも許されず大変厳しい状況なのです。

そんな中、「オーケストラの日」を記念しての無料配信を3月31日17時より行うそうです。ご興味のある方はぜひ。

→特に公演収入が中心のオーケストラの存続は厳しいように思える。解散を免れるために団員への給与などの支払いもできないことも想定される。寄付以外にどういった収入確保の方法があるだろうか?


最後までお読みいただきありがとうございました。
一つでも頭の体操になるものがあれば嬉しいです。

昨年7月から同様の投稿をしています。かなり溜まってきました。
へぇ〜というものが必ずあると思いますのでご興味とお時間があれば過去分もご覧ください。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集