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思考実験-哲学・社会問題-

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知的好奇心を持つ方に向けたマガジン。哲学、科学、芸術など多岐にわたる分野の概念や理論を、独自の視点で解剖し再構築します。
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記事一覧

孤独な人々:無知な全知者の物語

孤独な人々:無知な全知者の物語

私はこの世で最も孤独な人を知っている。

東京のとある駅。猛暑の中、超満員電車の車内は耐え難い蒸し暑さに包まれていた。乗客たちは不快感を隠せない表情で立っている。その中でも際立って不機嫌そうなのは、頬のニキビを掻きむしりながら独り言をぶつぶつ呟いている太った男だった。

その男の前に立っていたスーツ姿の若い男は、太った男の独り言に辟易していた。そして、この状況から逃れるため次の駅で降りようと心に決

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死ぬのが怖い人へ:宇宙視点から見る死生観

死ぬのが怖い人へ:宇宙視点から見る死生観

「死ぬのが怖い」

誰もが一度は考えたことがあるのではないでしょうか。私の場合、その契機は中学生の多感な時期にありました。母から「あなたは心臓が弱いから人より早く死ぬ」と突然に告げられ、それ以来、私は死の恐怖に苛まれるようになりました。

しかし、この恐怖がきっかけで東洋思想、哲学、宗教、心理学など幅広い分野への探究心が芽生え、結果として、死生観や人生観と向き合う時間が長くなり、自分自身や人生の意

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宇宙人と論理の狭間で:オフィスの哲学バトルから学んだこと

宇宙人と論理の狭間で:オフィスの哲学バトルから学んだこと

ある日、職場の同僚が宇宙人の存在を信じていると話し始めました。彼女は、偶然の出来事は自分の思いが宇宙に伝わった結果だと考えていました。

私は議論好きなので、「それって論理的じゃないんじゃない?」的な感じで突っかかっていきました。すると彼女は「じゃあ、その論理の基礎って何?」と返してきました。

彼女の考えは「この世界が本当にあるかどうかわからないんだから、想像こそが真実なんじゃない?」というもの

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人間と動物の境界線:倫理観の批判的検討

人間と動物の境界線:倫理観の批判的検討

はじめに毎年、世界中で数十億の動物が食肉産業によって殺されている。その数は人類の総人口をはるかに上回る。もし人間がこのような扱いを受けたら、それは間違いなく史上最大の大量虐殺として非難されるだろう。しかし、なぜ我々はこの現実を平然と受け入れているのか。

動物実験と人権の境界線人間の医学実験のために、毎年何百万もの動物が苦しみ、死んでいく。彼らは痛みを感じ、恐怖に怯える。しかし、我々はその犠牲を「

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ゾンビとバンビ:分断された世界の寓話

ゾンビとバンビ:分断された世界の寓話

プロローグ:新たな人類の誕生かつて一つだった人類は、今や『ゾンビ』と『バンビ』に二分されていた。この区分は単なる生物学的な違いではなく、社会の根幹を揺るがす深い亀裂となっていた。

ゾンビは、一般的なフィクションで描かれるような知性を失った歩く屍ではない。彼らは依然として人間であり、感情や思考力を持ち合わせていた。しかし、その本質は確かに変容していた。動きは鈍く、痛覚は鈍麻し、本能(特に食欲と性欲

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気功は詐欺か奇跡か?:科学と伝統の狭間で真偽を追う

気功は詐欺か奇跡か?:科学と伝統の狭間で真偽を追う

気功師は本当に「気」を操っているのでしょうか?それとも、科学的に証明できない概念を利用した詐欺なのでしょうか?今回はこのテーマで「気」という概念と科学の限界について考察していきたいと思います。

1. 「気」とは何か?気の概念を理解するには、まずその定義と起源を知る必要があります。

1. 定義:気とは、東アジアの思想や伝統医学で重視される生命エネルギーや宇宙の根源的なエネルギーを指す概念です。

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宇宙人のスイートルーム:見えない檻の中の幸福論

宇宙人のスイートルーム:見えない檻の中の幸福論

他人の気持ちは理解することができないということを心得ていなければ無用に苦しむ、という孔子の言葉がある。

人間の気持ちを理解できないのだから、もちろん他の動物の気持ちも理解することはできないだろう。

例えば、どんなに可愛がっているハムスターでも、ケージからの脱走を図るものだ。ハムスターを飼っている人間はそれを見てショックを受けるかもしれないが、はたしてハムスターは人間に飼われることを嫌って脱走し

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真理の本質:哲学、科学、宗教的視点からの探究とその結論【3部構成】

真理の本質:哲学、科学、宗教的視点からの探究とその結論【3部構成】

第一部:様々な真理の定義と特性「真理」とは、知識や信念が現実や事実にどれだけ一致しているかを示す概念です。真理は、私たちが世界を理解し、行動するための基盤を提供しますが、その性質や定義は時代や文脈、思想によって異なります。

哲学的視点1. 対応説

定義:真理は現実と一致する信念や命題である

★メリット
- 直感的でわかりやすい
- 科学的な観察や実験と親和性が高い

★デメリット
- 抽象的

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定義集:日常概念の哲学的再解釈

定義集:日常概念の哲学的再解釈

定義の定義漠然とした観念に具体的な輪郭を与える認知的作業。しかし、この過程は不可避的に主観性と文化的バイアスを含む。世界を理解可能にする試みであると同時に、その理解を制限する枠組みの構築。知識の体系化と伝達を可能にする一方で、現実の複雑性を単純化する諸刃の剣。

あ愛

儚さの認識が引き起こす、永遠性への切実な憧憬。

愛国心

特定の土地と文化への愛着が生み出す、個人と集団のアイデンティティの拠

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