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Bookレビュー「夏目漱石/夢十夜(第一夜)」

Bookレビュー「夏目漱石/夢十夜(第一夜)」

以前読んだことがあって、再読した。
夏目漱石の他の作品はあまり惹かれないのだが、これはなぜか惹かれる。
話が短いから?
・・・それは否めない。私にとっては重要な要素だw。
でもそれだけではなくて、詩的で幻想的な感じに酔いしれるからだ。
どうしてそう思うのか、私なりに解剖してみたい。

第一夜の冒頭から「死」

この夢十夜の最初の第一夜。その冒頭から「死」の文字が現れる。
なんともセンセーショナル。

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Bookレビュー「佐藤雅彦/新しい分かり方」

Bookレビュー「佐藤雅彦/新しい分かり方」

ズバリ、良書。
佐藤雅彦さんといえば、過去、CMのポリンキー、ドンタコス、バザールでゴザール等々の制作に携わっており、当時小学生だった私にも馴染みがあるものばかり。

モノの見方、考え方、新しい視点を得たい人にうってつけの本。

人は大人になっていくにつれ、知識、経験が積み重なる。
それを常識というのかもしれない。
でも、それらはときどき自由な思考の邪魔をする。
思考の奴隷とも言えるのかもしれない

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小津安二郎「僕はトウフ屋だからトウフしか作らない」

小津安二郎「僕はトウフ屋だからトウフしか作らない」

日本を代表する映画監督といえば、小津安二郎。
だが、今までこの方の作品を観たことがない。
そこでたまたま手に取ったこの本。

ここの部分を読んで、映画を観てみようと思った。
この感性に惹かれるからだ。
鋭い感性に加え、戦争で死の淵に立った経験がある、こういう方が生み出す作品をぜひ観てみたい。

Bookレビュー「夏目漱石/こころ」

Bookレビュー「夏目漱石/こころ」

やっと読んだ。
読了するまでに時間がかかったという意味でもあり、この歳になってやっとこの名著を読んだ、という意味でもある。
日本だけでもウン百万人が読んでいる(かもしれない)この本を今になって読んだ。
話のあらすじ自体は、既に接種していたので知っていたが、全編通して読んだのは今回が初めて。

「教養」という半ば暗黙の義務感。
それが本書を手に取った動機。ずっと知らんぷりしてやり残してしまった夏休み

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Bookレビュー「深澤直人/デザインの輪郭」

Bookレビュー「深澤直人/デザインの輪郭」

こういう本に出会いたかった。
こういう人に出会いたかった。
こういう見方に出会いたかった。

社会人になって数年目のころ、プロダクトデザインに興味を持ち、それ系の雑誌やムックを読んだり見たりしていた時期があった。
そのときもそうだし、この本を読んでも思うのは
「美的センスを持っている人や芸術系の人はすごい」
ということだ。

何がすごいかって、

・視点が面白くて、斬新なこと
・多くの人が気づかな

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Bookレビュー「市川沙央/ハンチバック」 

Bookレビュー「市川沙央/ハンチバック」 

図書館でこの本を予約しようとしたところ、10数人待ち。
この待機列に某ランドを想像してしまい、どれくらいかかるか分かったもんじゃない。

ということで、芥川賞を受賞したときの文藝春秋(2023年9月号)なら狙い目かな?と思ったら読み通り。ラッキー、難なく借りられた。
たぶんハードカバーの本には掲載していないであろう、芥川賞受賞の著者の言葉が顔写真とともに載っていた。
締めくくりはこうだ。

私はこ

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カズオ・イシグロ関連 おすすめ動画

カズオ・イシグロ関連 おすすめ動画

先日、挫折本レビューでカズオ・イシグロの「遠い山並みの光」を取り上げたのだが、カズオ・イシグロ及びその著作を貶したいわけではないので、YouTube上で彼の作品を推している(または紹介している)動画をピックアップして紹介したい。

余談だが、米津さんの最新アルバムは「LOST CORNER」という名称であり、これがカズオイシグロの著作「私を離さないで」に出てくる同語と関係しているのではないかという

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挫折本レビュー「カズオ・イシグロ/遠い山なみの光」

挫折本レビュー「カズオ・イシグロ/遠い山なみの光」

世の中には、挫折したときにこそ読む本というべきものがあるだろう。
もしかしたら、タイトルを読んでそのような思いでこの記事を訪れた方もいるかもしれない。
そういう方には期待外れになってしまうが、そうではない。

ここでは読むのを挫折した本=挫折本という定義にしたい。
本当は読了してからレビューを書くべきだと思うが、途中でお別れしてしまった本もそれはそれで「出会い」には変わりないので、足跡を残しておき

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つげさんの魅力とか、教育とかいろいろ思うこと。

つげさんの魅力とか、教育とかいろいろ思うこと。

先日「無能の人」のレビューを投稿したところ、思いの外、反応が多く、それだけ世の中の人が関心を持っているということなんだろうと思う。

調べていたら、つげさんの漫画を原作とした映画が今年公開されるらしい。知らなかった。(こちら↓)

昔から注目されている方だと思うが、その割には、本の感想やつげさんについて語られているものが少ないような気がしている。
ファンの人がシャイなのかな?

本当はファンの人に

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Bookレビュー「マンガでわかる「日本絵画」の見方」

Bookレビュー「マンガでわかる「日本絵画」の見方」

いつからだろうか、絵が下手というコンプレックスも持ってきたし、そのせいか美術の世界はあまり関心を持てなかったのだが、だんだんと歳をとるにつれて美術に興味が湧いてきた。
美術は「描く」だけでなく、「見て感じる」「美術評論を読む」など、いろんな楽しみ方があることを知ったから。
私なりの楽しみかたで美術に触れられればそれでいい、と気楽に考えるようになった。

この本は代表的な日本絵画が取り上げられていて

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Bookレビュー「超絶技巧 美術館」

Bookレビュー「超絶技巧 美術館」

超絶技巧 美術館/山下裕二 監修/株式会社 美術出版社

P24−25
井上雅彦 バカボンド 水墨画
キリッとした目の感じ、佇まい、髪の毛が風になびく感じ。
迫力。
書道を習っていた身からすると、この墨に懐かしさとともに「字」ではなく「絵」が描かれているという不思議さがある。
ただ、筆使いとかはやっぱり共通している気がした。
特に髪の毛の表現は、筆を持ったときの力の入れ方、抜き方、運び方などが感覚

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Bookレビュー「つげ義春/無能の人」・・・”無能の人”って誰のこと?

Bookレビュー「つげ義春/無能の人」・・・”無能の人”って誰のこと?

「無能の人」という衝撃的なタイトルが目に焼き付いている。
約30年前、小学校の中学年頃だったと思う。

石を売るお父さん。途方に暮れる家族。

何とも言えない読後感だった。
1回(しかも1話分だけ)しか読んでいないのに、強烈なタイトルと内容だったので忘れることはなかった。

先日、本屋で「つげ義春」と書かれた雑誌「東京人」を見かけて、大人になった今、久しぶりに読んでみようと思った。
んで、最後まで

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Bookレビュー「もっと知りたい伊藤若冲」

Bookレビュー「もっと知りたい伊藤若冲」

(※美術ド素人の私が備忘録的に感想を書くものです。)

もっと知りたい伊藤若冲 改訂版/東京美術

P45 群鶏図

やっぱりすごい。
先日手に取った本よりも大きく載っているのでより迫力がある。
やっぱり眼力(メジカラ)が一級品。
そして、黒がとても高貴で妖艶な黒に見える。
つま先や脚部分の皮膚の質感もリアル。
模様の一つ一つもすごい。適切な言葉が浮かばない。
鶏って、芸術品なんじゃないか。
本物

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