碇邦生(九州大学ビジネス・スクールQBS/合同会社ATDI)

九州大学ビジネス・スクール(QBS)の教員&大学発シンクタンクATDI代表。(主なトピ…

碇邦生(九州大学ビジネス・スクールQBS/合同会社ATDI)

九州大学ビジネス・スクール(QBS)の教員&大学発シンクタンクATDI代表。(主なトピック:採用や育成等の人材マネジメント、新規事業開発など)※日経電子版キーオピニオンリーダー ※コメント返信は原則控えています。質問はTwitter(@IkariOita)へお願いします。

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記事一覧

就活のAI活用以前に、ESと面接はそもそも精度の低い選考ツール

AIでよく見せようとする学生と本質を知りたい企業 生成AIの普及は私たちの生活を大きく変えている。生成AIが普及を始めた当初、まずは学校教育での混乱が起きた。学生が課…

急速に増える外国人労働者に現場のマネジメントは変化に追いつけるのか?

人口減少で深刻化する人手不足 日本の人口減少に伴い、労働人口が減る中で不足する労働力の供給源として外国人労働者に期待が集まっている。残念なことに、日本の少子化対…

最低賃金をあげるなら抜本的な上限対策もセットでしよう

最低賃金引上げは誰のため? 長らく日本の賃金は上がらないと言われ続けてきたが、ここ数年、最低賃金の引き上げは積極的だ。2024年度の最低賃金を全国平均で50円引き上げ…

中小企業は社長のコミットで人材獲得が変わる

苦労して採用しても、すぐに退職する中小企業の採用事情 人手不足は深刻な問題だ。特に、地方の中小企業にとっては人材を採用したくても、求職者との接点を持つだけでも一…

男性の育児参加を受け入れられない、変わらない現場

男性の育児参加で「子育てしやすい体制」作り 2015年前後から「働き方改革」が全国的に普及する中で、大きな変革の1つだ男性の育児休暇取得だ。これまで、男性の育児参加…

「安い人件費の追いかけっこ戦略」にどこまで依存するのか?できるのか?

「安い人件費の追いかけっこをいつまで続ける気なんだろうな」 小見出しの言葉は、10年以上前、インドネシアの日系現地法人の調査をしているときに某大手製造業の現地法人…

世界競争力の「大艦巨砲主義」の見直し

スイスの有力ビジネススクールであるIMDが2024年の世界競争力ランキングを発表した。シンガポールが4年ぶりに首位となり、一方の日本は38位と3年連続で順位を落とした。調…

いつまで「日本人は英語が苦手」を押し通すのか?

日本人が英語を話せないのは言語として違い過ぎるから? オンライン英会話大手のレアジョブが、日本人の英語スピーキング能力に関する調査を発表した。同社が開発するAIを…

ゲームを人材育成に生かす研修設計とは

相性が良いようで悪い人材育成とゲーム 1983年7月に任天堂からファミリーコンピューターが発売されてから40年が経ち、テレビゲームに対する社会的な評価も大きく変わって…

「会社が見返りをくれるはず」はキャリアの観点からはお勧めしない

会社は誰のもの?株主のもの? 日経COMEMOのお題企画で「#会社は誰のもの」というテーマで記事が募集されている。株式会社であれば、公的には会社は株主のものだ。そこに…

海外デジタルノマドは増えるのか?

発想力を育む海外デジタルノマド 日本で働きながら、世界中の好きな都市で暮らすように旅をしたい。旅行好きな人だったら、誰もが1度は思い描く理想の働き方ではないだろ…

高度な技能を持つ外国人を歓迎している企業はどれだけあるか?

日本は高度な技能を持つ外国人定着率の高い国 昨日の日本経済新聞を読んでいたところ、面白い見出しが目に入った。 このタイトルだけを見ると、日本もまだまだ捨てたもの…

公務員離れは「雇用」ではなく「マネジメント」の問題ではないか?

止まらない学生の公務員離れ 学生をはじめとした若年層が国家公務員を志望しなかったり、早期退職する傾向が止まらないという。23年度に1万8386人だった国家公務員総合職…

本当に定年後再雇用で10年以上同じ仕事するの?

70歳まで働くのが当たり前に 少子高齢化社会が進むと同時に健康寿命が延びる中、定年制度を見直す動きが続いている。そのような中、非正規社員へと雇用形態を変更し再雇用…

いつになったら「良い学校を出て大企業に就職」から卒業できるのか?

新卒から海外就職 Z世代、特に女性の中で新卒から海外での就職をする若者が増えているという。欧米での就職は際立ったスキルがないと職を得ることが難しいが、東南アジア…

半導体で盛り上がっているが長期的なストーリーは描けているか?

半導体産業で盛り上がる九州の産学界 TSMCの進出によって、最近の九州は「台湾」「半導体」の2つが大いに盛り上がっている。筆者の勤務する大学でも半導体人材を育成する…

就活のAI活用以前に、ESと面接はそもそも精度の低い選考ツール

AIでよく見せようとする学生と本質を知りたい企業

生成AIの普及は私たちの生活を大きく変えている。生成AIが普及を始めた当初、まずは学校教育での混乱が起きた。学生が課題やレポートを作成するのに生成AIを使ってしまい、学びにならないという問題だ。既存の教育方法では、生成AIで楽をする学生に対処できなくなってしまった。
加えて、生成AIの性能が上がるのにあわせて、出来栄えを見抜くこともできなくなって

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急速に増える外国人労働者に現場のマネジメントは変化に追いつけるのか?

人口減少で深刻化する人手不足

日本の人口減少に伴い、労働人口が減る中で不足する労働力の供給源として外国人労働者に期待が集まっている。残念なことに、日本の少子化対策の効果が出ているとは言い難い状況が続いている中で、即効性のある代替策としては海外からの労働者に頼らざる得ない現状がある。

その結果、研修制度であるはずの技能実習制度が実質として労働力確保のために使われることになるなどの問題もはらみなが

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最低賃金をあげるなら抜本的な上限対策もセットでしよう

最低賃金引上げは誰のため?

長らく日本の賃金は上がらないと言われ続けてきたが、ここ数年、最低賃金の引き上げは積極的だ。2024年度の最低賃金を全国平均で50円引き上げ時給1054円にするとの目安額を政府は示している。この調子で、2030年代半ばまでに最低賃金を全国平均で1500円にすることを目指すという。
最低賃金の引き上げには、様々な狙いが複雑に絡んでいる。人件費があがることでDXによる生産性

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中小企業は社長のコミットで人材獲得が変わる

苦労して採用しても、すぐに退職する中小企業の採用事情

人手不足は深刻な問題だ。特に、地方の中小企業にとっては人材を採用したくても、求職者との接点を持つだけでも一苦労だ。そもそも、地元の労働市場に求める専門性や能力を持った求職者がいないために大都市圏から移住してもらうことも少なくない。移住を伴う転職となると、またハードルが一段上がる。
加えて、苦労した採用したとしても、職場に馴染んで成果を出し、長

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男性の育児参加を受け入れられない、変わらない現場

男性の育児参加で「子育てしやすい体制」作り

2015年前後から「働き方改革」が全国的に普及する中で、大きな変革の1つだ男性の育児休暇取得だ。これまで、男性の育児参加を増やすことで、女性に偏っていた育児の負担を和らげ、子育てしやすい体制づくりが社会的課題となっている。

男性の育児休暇取得率も、徐々にではあるが高まる傾向にある。男性の取得率は2022年度に17.1%であり、10年前の2012年の1

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「安い人件費の追いかけっこ戦略」にどこまで依存するのか?できるのか?

「安い人件費の追いかけっこ戦略」にどこまで依存するのか?できるのか?

「安い人件費の追いかけっこをいつまで続ける気なんだろうな」

小見出しの言葉は、10年以上前、インドネシアの日系現地法人の調査をしているときに某大手製造業の現地法人社長が話した言葉だ。2010年代、多くの日本企業がインドネシアに生産拠点を新設していた。タイと中国の人件費の高騰と、中韓の反日感情によるカントリーリスクから、生産拠点の脱東アジアが進んだ。そのとき、古くからの親日国家であり、2億人以上の

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世界競争力の「大艦巨砲主義」の見直し

世界競争力の「大艦巨砲主義」の見直し

スイスの有力ビジネススクールであるIMDが2024年の世界競争力ランキングを発表した。シンガポールが4年ぶりに首位となり、一方の日本は38位と3年連続で順位を落とした。調査対象国は67ヶ国で、この調子でいくと来年にはインドに追い抜かれる。内訳では、「国内経済」・「雇用」・「科学インフラ」についての評価は高かったものの「ビジネスの効率性」・「企業環境」・「国際経験」・「機敏性」の評価が著しく低かった

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いつまで「日本人は英語が苦手」を押し通すのか?

いつまで「日本人は英語が苦手」を押し通すのか?

日本人が英語を話せないのは言語として違い過ぎるから?

オンライン英会話大手のレアジョブが、日本人の英語スピーキング能力に関する調査を発表した。同社が開発するAIを使ったスピーキングテストのデータ66万人を活用し、日本のほか非英語圏の77ヶ国・地域が対象の調査だ。その結果、グローバルビジネスで使えるレベル(6段階中上から3番目の「B2」以上)の人は僅か7%にとどまったという。グローバル平均が25%

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ゲームを人材育成に生かす研修設計とは

ゲームを人材育成に生かす研修設計とは

相性が良いようで悪い人材育成とゲーム

1983年7月に任天堂からファミリーコンピューターが発売されてから40年が経ち、テレビゲームに対する社会的な評価も大きく変わってきた。一昔前は「ゲームばかりしているとダメになる」と言われたが、今やテレビゲームは世界的な一大産業に成長し、eスポーツとしてプロ選手も増えている。ゲーム実況者という、新たなエンタメもYoutubeのような動画配信サービスの登場によっ

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「会社が見返りをくれるはず」はキャリアの観点からはお勧めしない

「会社が見返りをくれるはず」はキャリアの観点からはお勧めしない

会社は誰のもの?株主のもの?

日経COMEMOのお題企画で「#会社は誰のもの」というテーマで記事が募集されている。株式会社であれば、公的には会社は株主のものだ。そこに疑う余地はない。

しかし、会社経営という視点からみると、株主の利益を最優先として意思決定することが常に正解とは限らない。近年では、ESG投資に代表されるように持続可能な社会の実現に向けた取り組みも重視されるようになり、多様なステー

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海外デジタルノマドは増えるのか?

海外デジタルノマドは増えるのか?

発想力を育む海外デジタルノマド

日本で働きながら、世界中の好きな都市で暮らすように旅をしたい。旅行好きな人だったら、誰もが1度は思い描く理想の働き方ではないだろうか。

日本経済新聞の記事では、『Z世代はデジタル遊牧民に』というタイトルで、実際に日本で働きながら、屋内外のさまざまな拠点で定住地を持たずに働く人々が紹介されている。

私が評議員を務める一般財団法人ひらめき財団の代表理事も、海外デジ

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高度な技能を持つ外国人を歓迎している企業はどれだけあるか?

高度な技能を持つ外国人を歓迎している企業はどれだけあるか?

日本は高度な技能を持つ外国人定着率の高い国

昨日の日本経済新聞を読んでいたところ、面白い見出しが目に入った。

このタイトルだけを見ると、日本もまだまだ捨てたものではないなと思わされそうだ。外国人定着率が高く、5年後に4割も残ってくれているのは優秀じゃないかと。
しかし、記事の内容をよくよく読んでみると、楽観視できないことを知る。定着率が高いのは、そもそも絶対数が少なく、尚且つ、日本で働く外国人

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公務員離れは「雇用」ではなく「マネジメント」の問題ではないか?

公務員離れは「雇用」ではなく「マネジメント」の問題ではないか?

止まらない学生の公務員離れ

学生をはじめとした若年層が国家公務員を志望しなかったり、早期退職する傾向が止まらないという。23年度に1万8386人だった国家公務員総合職の採用試験の志願者は12年度に比べて27%減少した。採用10年未満の退職者も18年度から3年連続で100人を超えたという。

日本経済新聞の記事では、このような現状を紹介したうえで、解決策として欧米のようなジョブ型の導入を勧めている

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本当に定年後再雇用で10年以上同じ仕事するの?

本当に定年後再雇用で10年以上同じ仕事するの?

70歳まで働くのが当たり前に

少子高齢化社会が進むと同時に健康寿命が延びる中、定年制度を見直す動きが続いている。そのような中、非正規社員へと雇用形態を変更し再雇用延長制度が定年後の活躍の方法として多くの企業で導入されている。
しかし、人手不足が深刻化する中、従来の制度の見直しが起きている。これまでの多くの定年後再雇用では、収入が半分程度まで下がることが多かった。また、再雇用の年数も65歳までと5

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いつになったら「良い学校を出て大企業に就職」から卒業できるのか?

いつになったら「良い学校を出て大企業に就職」から卒業できるのか?

新卒から海外就職

Z世代、特に女性の中で新卒から海外での就職をする若者が増えているという。欧米での就職は際立ったスキルがないと職を得ることが難しいが、東南アジアや南アジアでは就労ビザもおりやすい。
今は為替の問題もあるが、東南アジア諸国も経済成長が目覚ましく、日本との給与の格差もなくなってきた。企業やポジションによっては、日本よりも高給で働くことだって可能だ。
能力があれば日本企業よりも昇進スピ

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半導体で盛り上がっているが長期的なストーリーは描けているか?

半導体で盛り上がっているが長期的なストーリーは描けているか?

半導体産業で盛り上がる九州の産学界

TSMCの進出によって、最近の九州は「台湾」「半導体」の2つが大いに盛り上がっている。筆者の勤務する大学でも半導体人材を育成するコースが新設され、熊本大学では新たな学部までできた。そこに将来性を感じてか、長年の課題であった理工系の女子学生不足を払拭するかのように3割とダイバーシティも進んでいるという。
TSMCのおかげで、大学も経済界も大いに活気付いている形だ

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