碇邦生(九州大学ビジネス・スクールQBS/合同会社ATDI)

九州大学ビジネス・スクール(QBS)の教員&大学発シンクタンクATDI代表。(主なトピ…

碇邦生(九州大学ビジネス・スクールQBS/合同会社ATDI)

九州大学ビジネス・スクール(QBS)の教員&大学発シンクタンクATDI代表。(主なトピック:採用や育成等の人材マネジメント、新規事業開発など)※日経電子版キーオピニオンリーダー ※コメント返信は原則控えています。質問はTwitter(@IkariOita)へお願いします。

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    COMEMOをはじめとしてnote上に執筆したHR関連記事のまとめです。

最近の記事

地方都市は外国人受け入れの基本方針をどう設計すべきか?

人手不足と外国人受け入れ 労働人口の減少からくる人手不足は深刻だ。特に、地方部における中小企業や農水産現場の人手不足はまったなしの状態に陥っている。「人手不足倒産」という、仕事はあるが、従業員不足から業務遂行が困難になる事例も珍しいものではなくなってきた。 人口減少からくる人手不足は採用活動をいくら頑張っても解消しない。そもそもない袖は振れないためだ。そこで、業務の担い手として外国人の受け入れをしていきたいという自治体は増えている。日経新聞の記事にもあるように、人手不足によ

    • 世界にトビ立て、日本の焼き鳥文化

      「鳥貴族」が世界進出 庶民の味方で格安で美味しい焼き鳥が楽しめる居酒屋フランチャイズ「鳥貴族」が本格的にグローバル事業に乗り出す。まずは米国で直営店を出し、同時に台湾と香港に出店し、アジアでの展開を広げていく方針だという。 日本の飲食フランチャイズの世界展開も珍しいものではなくなってきた。古くは世界に「牛丼(Beef Bowl)」文化を創った吉野家を筆頭に、ラーメンの一風堂、焼き肉の牛角、うどんの丸亀製麺など、多くの飲食ビジネスが世界進出し、成功を収めている。もちろん、成功

      • 商用車の改造EVは日本らしいEVシフトのあり方かもしれない

        中古車を改造して宅配EVに EVシフトの話題はとてもセンシティブだ。ニュースに上がるたびに、賛否両論が沸き上がる。特にビジネス系雑誌では、EVシフトで困難に直面したという海外のニュースを見つけると「それみたことか!」と鬼の首を取ったような記事を掲載する。しかし、嫌だろうがなんだろうが、EVシフトは来てしまう現実だ。 まず言っておくと、私個人の趣味としては内燃機関が大好きだ。好き好んで10km/L程度しか走らない、1.6リッターNAハイオク車なんてものをカスタムしながら乗るく

        • 「食」と「農」は日本の次世代基幹産業候補

          アメリカで日本のイチゴ 日本発の農業スタートアップ企業オイシイファームが200億円を調達し、日本のイチゴを米国で栽培し、販売するビジネスで注目を集めている。イチゴ農家というとハウス栽培のビニールハウスの中で土に苗が植えてあるイメージが強いだろう。しかし、農業テクノロジーの発展は目覚ましく、米国内で日本産のような甘いイチゴを完全無農薬の工場で生産することを可能としている。ロボットとAIを活用し、作付けから収穫までの作業の自動化も可能だ。 日本国内でも、一時期、大企業が農業ビジ

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        記事

          地銀であっても「学生が応募してこない」、地方企業の採用の厳しさ

          地銀の初任給引き上げ 世界的な物価上昇に伴い、数年前から日本企業でも賃上げに積極姿勢を見せる企業が増えてきた。賃上げの動機は大きく2つあげられる。 1つは、物価高で従業員の生活が厳しくなるため、生活支援とモチベーション低下を防ぐための賃上げだ。もう1つは、人材獲得競争が激しくなる中で、条件を良いものとしなくては応募者が集まらない問題だ。 後者の理由からくる賃上げは、特に新卒採用でみられることが多い。初任給の引き上げは、採用競争が激しくなる中で、競合と同水準以上にしなくては応

          地銀であっても「学生が応募してこない」、地方企業の採用の厳しさ

          「出向起業」で鳶が鷹を生め!

          会社ではできないけど挑戦したい思いをどうするか? 勤め人であっても、本気で物事に取り組んでいると、「組織の事情で挑戦できないが、どうしてもやりたい」何かと出会うことがある。それは会社員もそうだし、大学教員もそうだ。私の場合は、学生の起業に対して授業の枠にとらわれない支援がしたく、同時に企業に対しても直接的なかかわり方を通して自分の研究成果の実践がしたくなり、教員をしながら会社も作った。組織には組織の事情があり、それを超えるのは簡単ではない。しかし、自分で組織をゼロから立ち上

          稼げてないのに賃上げする?給与の原資を考えよう

          春闘の賃上げに最低賃金底上げでも実感は? 国際的な物価の上昇と世界的な賃上げの流れから、長年、平均所得が停滞しているといわれてきた日本にも変化が起きそうだと期待されたのが2023年だ。日経新聞の記事にあるように、2023年の春季労使交渉による賃上げは30年ぶりの高さとなった。 しかし、実感として賃上げで生活が楽になったという感覚を持つ人は限られている。まず、物価の上昇に対して賃上げが追いついていない。また、役職定年や定年後再雇用で、50代以上の収入が激減する現実もある。最低

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          新卒一括採用は悪くない、「変わらない」のが悪い

          意外と歴史の古い一括採用 近年、長らく伝統とされてきた新卒一括採用を見直そうという動きが本格化している。それまでも見直そうという動きはあったものの、ファーストリテイリングの通年採用のように、一部の企業が取り組むだけと限定的だった。しかし、経団連が2018年に「就活ルール」を2021年卒以降を設けないと発表して以来、新卒採用の自由度が高まった。 現在は政府が「就活ルール」の順守を呼びかけているが、明らかに変化が起きている。特に大きなものが、インターシップからの採用だ。欧米のよ

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          JTCは本当に悪いのか?産業をけん引する新企業が出ないことが問題では?

          JTCという皮肉を込めた呼び名 SNSを中心に、JTC(Japanese Traditional Compant)という言葉をいたるところで見かける。日経新聞の引用記事にあるように、伝統的な日本的働き方や仕事の進め方、慣習が残り、変化を好まない風土を持つ企業を指す。現代的ではなく、旧態依然とした組織であることから、ネガティブな意味で使われる。 企業経営において、外部環境の変化に応じて自らも変わり、適応することは重要だ。外部環境の変化についていけないと、競争力を失い、経営状

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          女性リーダーを育てよう!増やそう!

          女性活躍推進の劣等生から脱せよ 女性活躍に関する国際調査の結果が発表されるたび、暗澹たる気持ちにさせられる。ほとんどの調査で日本は最下位近くを低空飛行し、それよりも低いのは宗教上の理由でランクがあがりにくい厳格なイスラム国家ばかりだ。日本は宗教上の理由でハンディがある国と同レベルで女性が活躍できない国なのだろうか。 多くの人々が持つ体感としてはそんなことはないだろう。それらの国と比べると、女性の教育水準も高く、消費をけん引し、就業率も高い。厳しいイスラム教では、女性は教育も

          外国人労働者受け入れは現場のマネジメント改革とセットで運用しよう

          人手不足解消と外国人労働者の受け入れ 人口減少による絶対的な労働力の不足が起きている日本社会において、外国人労働者の受け入れ増が喫緊の課題だ。欧州とは異なり、外国人労働者の受け入れに対する慎重な議論をすべきだという姿勢を数十年にわたってとってきたが、そろそろ限界が近づいている。このままいくと、近い将来、生活基盤を整えるために必要なエッセンシャルワーカーが不足する。これは失業者の就業や他の業種からの融通では賄い切れない人口の問題だ。 とはいったものの、現状でも外国人労働者の

          外国人労働者受け入れは現場のマネジメント改革とセットで運用しよう

          整備したけど使われない「年収の壁」対策

          「年収の壁」対策をしたものの 日本の非正規社員の年収が上がらない要因の1つとなっていたものに「年収の壁」がある。この壁には段階があり、年収が100万円を超えると「住民税」の対象となり、103万円を超えると「住民税」「所得税」の対象となる。合わせて、「配偶者控除」から「配偶者特別控除」と変わってしまう。年収130万円を超えると「住民税」「所得税」のほか、「社会保険料」もかかってしまう。この壁を超えるごとに、働いているのに手取り年収が下がることになるため、専業主婦を中心として就

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          テレワーク or 対面ではなく、デジタルを活用した働き方のアップデートを目指そう

          やっぱり対面が良いで戻る人びと 日本生産性本部の調査によると、テレワークの活用は半減し、実施率は15.5%にまで下がっているという。コロナ禍で世界中で一気に広がったテレワークだが、パンデミックの収束と共にテレワークの動きも止まってしまった。このこと自体は、ある程度は見通せたことだろう。急激に広がったものだから、その揺り戻しとして対面への回帰があることは見通せたことだ。 しかし、このまま「テレワークよりも対面が良いよね」と言って、コロナ前に戻ってよいかというとそういうわけで

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          起業手続きの見直しは評価すべきだが、成功事例から学べているのか

          起業が少ない日本 産業の新陳代謝を促し、不確実性の高いビジネス環境で高い競争優位を維持するために、スタートアップをはじめとした起業の機会を増やすことは大切だ。しかし、日本の現状は諸外国と比べて明るいとは言い難い。経産省(2019年)によると、日本の総合起業活動指数(TEA、成人人口100人の中で起業活動をしている人が何人いるか)は、5.4であり、調査対象50か国の中で48位だった。日本より低いのは、パキスタンとイタリアのみである。日本が含まれる、イノベーションを経済活性化の

          起業手続きの見直しは評価すべきだが、成功事例から学べているのか

          解釈が難しい最低賃金1600~1900円

          最低賃金引上げは時代の流れ 「賃金の上がらない30年」と言われる中で、段階的に引き上げられてきたのが最低賃金だ。2000年の最低賃金額(全国平均)は659円で、2023年の全国加重平均額は1,004円となっている。約1.5倍の上昇だ。今の40代が学生時代に時給1,000円を超えるバイトを見つけると「割りが良い」と思ったものだが、今や最低水準である。 一方、世界の最低賃金の上昇は日本の状況を上回るペースだ。欧州各国の最低賃金(購買力平価)はおよそ11米ドル半ば(約1,600円

          採用改革では対処できない人手不足倒産

          採用できない建設業 建設業での人手不足が深刻だ。大阪万博や日本各地で起きている半導体工場の新設など、大きな建築需要がある一方で、仕事に従事する建設員の確保ができていない。それどころか、人手不足が原因となって倒産する企業が相次いでいる。今年は人手不足倒産が最多であり、建設業がそのうちで37%を占めている。 人手不足倒産が最多、1~10月206件 建設業37%:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO76128560U3A11