碇邦生(九州大学ビジネス・スクールQBS/合同会社ATDI)

九州大学ビジネス・スクール(QBS)の教員&大学発シンクタンクATDI代表。(主なトピ…

碇邦生(九州大学ビジネス・スクールQBS/合同会社ATDI)

九州大学ビジネス・スクール(QBS)の教員&大学発シンクタンクATDI代表。(主なトピック:採用や育成等の人材マネジメント、新規事業開発など)※日経電子版キーオピニオンリーダー ※コメント返信は原則控えています。質問はTwitter(@IkariOita)へお願いします。

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最近の記事

「安い人件費の追いかけっこ戦略」にどこまで依存するのか?できるのか?

「安い人件費の追いかけっこをいつまで続ける気なんだろうな」 小見出しの言葉は、10年以上前、インドネシアの日系現地法人の調査をしているときに某大手製造業の現地法人社長が話した言葉だ。2010年代、多くの日本企業がインドネシアに生産拠点を新設していた。タイと中国の人件費の高騰と、中韓の反日感情によるカントリーリスクから、生産拠点の脱東アジアが進んだ。そのとき、古くからの親日国家であり、2億人以上の人口を持ち、人口ボーナスによる経済成長が始まったばかりのインドネシアは次の候補と

    • 世界競争力の「大艦巨砲主義」の見直し

      スイスの有力ビジネススクールであるIMDが2024年の世界競争力ランキングを発表した。シンガポールが4年ぶりに首位となり、一方の日本は38位と3年連続で順位を落とした。調査対象国は67ヶ国で、この調子でいくと来年にはインドに追い抜かれる。内訳では、「国内経済」・「雇用」・「科学インフラ」についての評価は高かったものの「ビジネスの効率性」・「企業環境」・「国際経験」・「機敏性」の評価が著しく低かったという。 さて、ランキングの上位をみるとシンガポールを筆頭に、スイス、デンマー

      • いつまで「日本人は英語が苦手」を押し通すのか?

        日本人が英語を話せないのは言語として違い過ぎるから? オンライン英会話大手のレアジョブが、日本人の英語スピーキング能力に関する調査を発表した。同社が開発するAIを使ったスピーキングテストのデータ66万人を活用し、日本のほか非英語圏の77ヶ国・地域が対象の調査だ。その結果、グローバルビジネスで使えるレベル(6段階中上から3番目の「B2」以上)の人は僅か7%にとどまったという。グローバル平均が25%であり、著しく低い結果だ。 といっても、日本人の英語のスコアが低いことは今に始

        • ゲームを人材育成に生かす研修設計とは

          相性が良いようで悪い人材育成とゲーム 1983年7月に任天堂からファミリーコンピューターが発売されてから40年が経ち、テレビゲームに対する社会的な評価も大きく変わってきた。一昔前は「ゲームばかりしているとダメになる」と言われたが、今やテレビゲームは世界的な一大産業に成長し、eスポーツとしてプロ選手も増えている。ゲーム実況者という、新たなエンタメもYoutubeのような動画配信サービスの登場によって生まれた。 一方で、40年前からゲーム会社が挑戦し続けながら、なかなか効果が

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          「会社が見返りをくれるはず」はキャリアの観点からはお勧めしない

          会社は誰のもの?株主のもの? 日経COMEMOのお題企画で「#会社は誰のもの」というテーマで記事が募集されている。株式会社であれば、公的には会社は株主のものだ。そこに疑う余地はない。 しかし、会社経営という視点からみると、株主の利益を最優先として意思決定することが常に正解とは限らない。近年では、ESG投資に代表されるように持続可能な社会の実現に向けた取り組みも重視されるようになり、多様なステークホルダーへの配慮が求められる場面も多くなっている。 米国では、ESG投資に関連

          「会社が見返りをくれるはず」はキャリアの観点からはお勧めしない

          海外デジタルノマドは増えるのか?

          発想力を育む海外デジタルノマド 日本で働きながら、世界中の好きな都市で暮らすように旅をしたい。旅行好きな人だったら、誰もが1度は思い描く理想の働き方ではないだろうか。 日本経済新聞の記事では、『Z世代はデジタル遊牧民に』というタイトルで、実際に日本で働きながら、屋内外のさまざまな拠点で定住地を持たずに働く人々が紹介されている。 私が評議員を務める一般財団法人ひらめき財団の代表理事も、海外デジタルノマドの1人だ。ドバイを本拠としながら、国内外でいくつもの企業を経営している

          高度な技能を持つ外国人を歓迎している企業はどれだけあるか?

          日本は高度な技能を持つ外国人定着率の高い国 昨日の日本経済新聞を読んでいたところ、面白い見出しが目に入った。 このタイトルだけを見ると、日本もまだまだ捨てたものではないなと思わされそうだ。外国人定着率が高く、5年後に4割も残ってくれているのは優秀じゃないかと。 しかし、記事の内容をよくよく読んでみると、楽観視できないことを知る。定着率が高いのは、そもそも絶対数が少なく、尚且つ、日本で働く外国人は「日本が好き」で働いているので定着しやすい背景をもつという。 加えて、欧州は特

          高度な技能を持つ外国人を歓迎している企業はどれだけあるか?

          公務員離れは「雇用」ではなく「マネジメント」の問題ではないか?

          止まらない学生の公務員離れ 学生をはじめとした若年層が国家公務員を志望しなかったり、早期退職する傾向が止まらないという。23年度に1万8386人だった国家公務員総合職の採用試験の志願者は12年度に比べて27%減少した。採用10年未満の退職者も18年度から3年連続で100人を超えたという。 日本経済新聞の記事では、このような現状を紹介したうえで、解決策として欧米のようなジョブ型の導入を勧めている。国内でうまくいっていない課題に対して、海外の成功事例から学び、取り入れることで

          公務員離れは「雇用」ではなく「マネジメント」の問題ではないか?

          本当に定年後再雇用で10年以上同じ仕事するの?

          70歳まで働くのが当たり前に 少子高齢化社会が進むと同時に健康寿命が延びる中、定年制度を見直す動きが続いている。そのような中、非正規社員へと雇用形態を変更し再雇用延長制度が定年後の活躍の方法として多くの企業で導入されている。 しかし、人手不足が深刻化する中、従来の制度の見直しが起きている。これまでの多くの定年後再雇用では、収入が半分程度まで下がることが多かった。また、再雇用の年数も65歳までと5年程度に設定されていた。これが収入をほとんど下げず、70歳まで働いてもらおうとい

          本当に定年後再雇用で10年以上同じ仕事するの?

          いつになったら「良い学校を出て大企業に就職」から卒業できるのか?

          新卒から海外就職 Z世代、特に女性の中で新卒から海外での就職をする若者が増えているという。欧米での就職は際立ったスキルがないと職を得ることが難しいが、東南アジアや南アジアでは就労ビザもおりやすい。 今は為替の問題もあるが、東南アジア諸国も経済成長が目覚ましく、日本との給与の格差もなくなってきた。企業やポジションによっては、日本よりも高給で働くことだって可能だ。 能力があれば日本企業よりも昇進スピードが早く、東南アジアのグローバル企業や欧米企業のマネジャーに就くことができれば

          いつになったら「良い学校を出て大企業に就職」から卒業できるのか?

          半導体で盛り上がっているが長期的なストーリーは描けているか?

          半導体産業で盛り上がる九州の産学界 TSMCの進出によって、最近の九州は「台湾」「半導体」の2つが大いに盛り上がっている。筆者の勤務する大学でも半導体人材を育成するコースが新設され、熊本大学では新たな学部までできた。そこに将来性を感じてか、長年の課題であった理工系の女子学生不足を払拭するかのように3割とダイバーシティも進んでいるという。 TSMCのおかげで、大学も経済界も大いに活気付いている形だ。 一方で、九州のビジネススクールで勤務している立場からすると、本当に今の半導

          半導体で盛り上がっているが長期的なストーリーは描けているか?

          成長するスタートアップで産業の新陳代謝は起きるのか?

          スタートアップが雇用を生む ここ10年余りの人材業界で最も大きな変化の1つが、スタートアップ企業への就職のハードルの低さだろう。かつては、ベンチャー企業やスタートアップ企業への就職はリスクのある選択として考えられていた。内定はもらったものの、両親や親族、家族からの反対で入社を諦めたという声も珍しいものではなかった。いまでもまだその風潮が完全に消えたわけではないが、スタートアップ企業への就職は当たり前の就職先として考えられるようになってきたように思われる。 日本経済新聞の記事

          成長するスタートアップで産業の新陳代謝は起きるのか?

          同意無い異動はいつまで続けられるのか?

          転勤への手当てを厚くして社員の負担を軽減 日本経済新聞の記事によると、明治安田生命やみずほFGをはじめとして、転居を伴う異動(いわゆる、転勤)に対して、手当を厚く支給しようという動きが広がっているという。転勤が従業員の人生設計に及ぼす影響は大きい。特に、記事にもあるように転勤によって配偶者がキャリアを諦めざるを得ない状況に陥ることは社会的な問題でもある。 一方で、少し古い人事制度を知っていると、これらの取り組みは懐かしさを感じさせるものでもある。というのも、バブル崩壊前は

          同意無い異動はいつまで続けられるのか?

          グローバル化で日本企業だからと言って日本人が中枢にいられるとは限らなくなる

          グルーバル化と経営幹部の国際化 ファーストリテイリングが2030年をめどに、外国人管理職を8割に引き上げ、執行役員の外国人比率も4割にすると発表した。ファーストリテイリングは、今や日本を代表する世界有数のファストファッションブランドだ。海外でも高い評価を得て、ファーストリテイリングのブランドである「ユニクロ」は欧米とアジアを中心に事業展開を広げている。 ここ30年間で大きく成長してきた日本企業の多くがグローバル展開に課題を持つ中、ファーストリテイリングは稀有な成功例の1つ

          グローバル化で日本企業だからと言って日本人が中枢にいられるとは限らなくなる

          「昔は苦手だった」を得意とするビジネスリーダーは多い

          「苦手な仕事」を強みにした人は多い 日経COMEMOの企画にて、「#苦手な仕事克服のコツ」というテーマで記事が募集されている。誰でも苦手だなと思う仕事はあるだろう。それが、性格や個性に繋がっている人も少なくない。 例えば、ADHDの傾向がある人はコツコツとした仕事やミスが許されない堅実な仕事が不得手だ。また、ASDの傾向がある人は人の出入りが激しい仕事や突発的なイベントが多く定型的な要素の少ない仕事を苦手とする。 このような個性や性格に根差した「苦手な仕事」は、基本的には「

          「昔は苦手だった」を得意とするビジネスリーダーは多い

          様々なタイプの起業家がスタートアップを活性化させる

          起業家のバリエーションが増えてきた 一昔前までは、起業家、特にスタートアップの起業家というとITや先端テクノロジーを駆使する20代~30代の若者というイメージが強かった。代表的な起業家は、24歳でサイバーエージェントを立ち上げた藤田晋氏や、32歳で楽天(当時はエムディーエム)を立ち上げた三木谷浩史氏だ。そして、成功した起業家はそのまま自分の会社の経営者を継続するか、バイアウトをして投資家として起業家を支援する立場に回ることが多かった。 しかし、日本経済新聞の記事にもあるよう

          様々なタイプの起業家がスタートアップを活性化させる