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Beyond The Reading

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本を読む先にあるものって、なんだろう。
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2023年4月の記事一覧

VALE TUDO を読んだ。

VALE TUDO を読んだ。

VALE TUDOは、生き方だった。

先日読んだドキュメンタリー撮影問答の対談者のなかで「ブラジリアン柔術黒帯の肉体派写真家」という見出しのもとに、明らかに他の対談者とは異なるオーラを放つ丸刈りのイカツイ男性。それが著者の井賀さんだった。

ブラジリアン柔術黒帯で写真家...?武道や格闘技に強く興味を持つ自分、慌てて本書を購入。貪るように読み進めた。文章はもちろん、挿入されているブラジルのお写真

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ドキュメンタリー撮影問答、を読んだ

ドキュメンタリー撮影問答、を読んだ

ドキュメンタリの構造や概念を言語化。

ひょんなことから得意先様のインナーブランディング施策として、社員さんへのインタビュー映像のご相談をいただき、情報収集もかねて色々と調べていくなかで幸運にも巡り会えた1冊。

自分と映像の最初の出合いは、小学校低学年の頃。地元横浜の神奈川テレヴィで深夜に放送されていたMTVを父親が録画してくれていて、小学校から帰ると家で録りだめてあったMVをひたすら観ていた。

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HSPブームの功罪を問う、を読んだ

HSPブームの功罪を問う、を読んだ

ラベリングの功罪ここにあり

大昔、空の上で突如ゴロゴロと鳴り響く轟音に人々は大いに恐怖した。誰かが「これは龍の怒声である」と言い出し、雷が鳴ると「龍が怒っている」と人々はじっと身を潜めたという。

人は、得体の知れない名の知れないものに最も不安を抱き恐怖する。ネーミングやラベリングは現代にはじまったことではなく、安心したいと願う生存本能の発露なのかもしれない。

大切なのは、ときには深く考えるこ

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テストパイロット、を読んだ。

テストパイロット、を読んだ。

トップガン・マーヴェリックの片鱗がここに!

アメリカ海軍で正式採用される前の戦闘機をテスト飛行するパイロット。民間企業でのテストは済ませてあるものの、より実戦に近い過酷な環境下や操作にも耐えうるか...身を挺して検証する死と隣り合わせの非常に危険な職業。

戦場でもデジタルテクノロジーの導入が著しく、あらゆる機械の操作が自動化されている。そのいっぽうで飛行機乗りたちは、握った操縦桿から微かに伝わ

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水たまりで息をする、を読んだ。

水たまりで息をする、を読んだ。

久々に小説を読んだ。

instagramで知人が読んだという投稿を見て衝動買い。突然お風呂に入らなくなった夫に、戸惑いつつも受け入れようとする妻。変化してゆく二人の日常を綴ったもの。もちろん結末はネタバレになるので言及しない。

夫婦とは愛し合う関係ではあるものの、所詮は血のつながっていない他人。どちらかの肉体や精神に異常をきたしたとき、どうなるのか。離婚という選択肢もあるし、添い遂げることもで

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日本の路地を旅する、を読んだ。

日本の路地を旅する、を読んだ。

路地とは被差別部落のことである。

差別とはなにかを考えてみる。自分の身の回り、日常生活を見渡してみると、あらゆる事由から誰かが誰かを差別的に扱っていることに気づく。総じて言えることは、そこには相手を貶めることで自分の地位が上がった「ような気がしている」という盲信や幻想があり、中毒性さえ見え隠れする。

自らの心の古傷を剥がすかのように、日本各地の路地を訪れる筆者。文化人類学的なフィールドワークの

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テキヤの掟、を読んだ。

テキヤの掟、を読んだ。

夏祭り、神社の境内、金魚すくい。

お祭りの風物詩の露店。あの店に立つ人たちをテキヤという。ほとんどの人が誤解をしており恥ずかしくも自分のその部類だったが、テキヤとヤクザはイコールではない。たしかに反社勢力に属する一部のテキヤもいるようだが、そもそも祀る神様が違うということが、説明不要な決定的理由だろう。

古き良き日本の互助精神がそこにあった。テキヤと聞いて思い出すのは、フーテンの寅さんだろう。

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AIが職場にやってきた、を読んだ。

AIが職場にやってきた、を読んだ。

\匿名性から脱却せよ/

優先してロボット(AI)に代替される仕事は匿名性の高いもの。それは誰が従事しても同じという均一性ではなく、誰だかわからないという状態のもの。いかなる仕事においても、「●●太郎」など、個人を特定できる情報が顧客に常に明示されていれば、機械に置き換えられる可能性は低くなる。

AIに代替される...ときとして「奪われる」などという乱暴な表現が散見されるが、いたずらに怖がること

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孤独のレッスン、を読んだ。

孤独のレッスン、を読んだ。

そもそも、孤独とはどのような状態であるのか。

このような本が出版されるということは、孤独とは何であるかの純粋な問いかけだけではなく、問題解決型の企画として採用された経緯を想像できる。今の世の人々は孤独を由々しき問題として認識しているのだろうか。

昔から共同作業や集団行動が得意ではなかった自分にとって、世の中で定義されている孤独という状況は、日々の生活に当たり前のように存在していた。

集団から

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物欲なき世界、を読んだ。

物欲なき世界、を読んだ。

資本主義の原動力は欲望と消費。この二つが著しく低減しつつある今、資本主義という経済構造が終焉を迎える日がくるのか。明らかな物質的飽和を経て、何かしらの気づきを得た人々が向かう先にあるものはなにか。

Instagramで投稿した過去の書評を貼り付けておきたい。

1回目の感想

なんとなく自分が見ようとしていた景色のぼんやりとした輪郭が、本著で少しクリアになった気がする。人々の興味関心が物質的な豊

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写真前夜、を読んだ。

写真前夜、を読んだ。

「あの写真ができるまでの、斬新なアイデアと綿密な準備のすべて」と帯に書いてある通りに、アウトプットまでのプロセスが詳述されており、読み物としてもたいへん面白く勉強になる。広告業界や撮影業務に従事されない人にもオススメしたい。

チラチラと撮影前の準備資料が紹介されているが、その精度の高さに本当に驚いた。自分も仕事で映像やスチールの撮影を行うけれど、本当のプロのお仕事を垣間見、同時に恥ずかしく思いつ

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